チェロ協奏曲第1楽章の終結部がしばしばよく鳴っている。一日しごとやすみをいただいた今日は、思い立ってメモしてみようとノートを開いてペンを持った。それは、逃げ回るアヒルだった。まだまだちがう感じがする。
5月の岩波文庫新刊より。
○緑221-3 夜と陽炎 -耳の物語2-
本体740円+税
開高 健
ベトナムで体感した迫撃砲の轟音,死体が発する叫びと囁き,アマゾンで鳴り響くベートーヴェン――.記憶の中の〈音〉をたよりに生涯を再構築し,精緻玲瓏の文体で綴る自伝的長篇『耳の物語』二部作の後篇.芥川賞を受賞して作家となり,ベトナム戦争を生き抜き晩年にいたるまで,滔々と流れる茫洋たる過去を耳の記憶で溯る.(解説=湯川豊)
○青185-5 コスモスとアンチコスモス -東洋哲学のために-
本体1260円+税
井筒俊彦
東洋思想の諸伝統,それぞれの哲学間を縦断して共通する根源的思惟の元型を探り,新たに解釈し直すことで,東洋哲学の可能性が立ち上がる.イスラーム,禅仏教,老荘思想,華厳経を時間論,存在論,意識論として読み解く.『意識と本質』『意味の深みへ』に続く最後の論集.末尾に司馬遼太郎との生前最後の対談を併載(解説=河合俊雄).