カームラサンの奥之院興廃記

好きな音楽のこと、惹かれる短歌のことなどを、気の向くままに綴っていきます。

今日は。

2016-10-05 18:41:51 | Weblog

今日は一日しごと休みを頂いて、午前は横浜の神奈川近代文学館〈安岡章太郎展〉、午後は隅田川畔の平日歌会。歌会という時間、場は、仲間の発する空気のよい批評、気のよい作品に出会えるとこちらもどんどん元気を頂ける、不思議なパワーチャンスでありパワースポット。みなさま、お疲れさまでした。
内容が濃くて素晴らしかった安岡章太郎展。

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メモから。

2016-10-05 09:03:59 | Weblog
 町へのただ一つの入り口の検問所脇の側溝に夏のある夕方、薄汚れた犬が死んでいたことがあった。その事実は、大きめのぶかぶかな毛糸靴下を履いて就寝しようとしていたメゲネル検問所長のもとにすぐに伝えられ、裁判所へも速やかに報告されたが、酒精で脂ぎった不夜城のごときお歴々の集う町の裁判所は案の定その犬が町に入ろうとしていたのか町から出ようとしていたのかを朝までおいてはおかれぬ大問題とし、検問所長に事実を直ちに判事の前で詳細に説明せよと出頭命令を下したので、犬の第一発見者たる検問所三等係官オルサブローはその夜のうちに寝室兼書斎代わりの家の物置から検問所に呼び出され、検問所事務棟の木製扉脇の壁に自転車を立て掛けた。検問所事務棟は其々の窓の大きく取られた石造りの三階建てで、一階の当直室の灯りと、三階の所長室の灯りが、煌々と外に洩れていた。
 制服のオルサブローは幾分俯きながら木製扉の前に立ち、「こんばんは。当直お疲れさまです。オルサブローです。」と軽く三回ほどノックをした。すると、しずかに扉が開いて、検問官の制服に身を包んだ少女が顔を出した。「オルサブローさん、たいへんなことになって。とにかく中へお入りくださいな。」その夜の深夜当直は三等係官アスフィータだった。当直室のなかは、ハーブティーのよい香りがしていた。オルサブローは、アスフィータに軽く微笑みながら「アスフィータさん、君にも心配をかけて済まない。それで、所長はもう部屋に来られてるのですか?」と尋ねた。「はい、つい先程部屋に入られました。所長ったら、〈町の裁判所の能天気な奴らと来たらまったく〉とぶつぶつこぼしてました。」アスフィータが所長の口真似をすると、オルサブローは思わず吹き出し、アスフィータもくすりと笑った。
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