井口 岩絵具・銀箔・金箔/パネルに和紙
最近静電気に悩まされています、ナツメです。今回は学生クラスの井口さんの作品をご紹介します!
月に照らされる蝶と彼岸花の日本画で月には銀箔を、蝶の鱗粉にも金箔を散らして表現しています。まず目に飛び込んでくるのは眩しい満月ですが、明暗の使い方に技巧が凝らされています。月をとびきり明るく、周りはかなり暗く…と画面の明度を大きく2つに分けた上で、暗い側にモチーフを配置してその中で微妙な差を描写しています。また、手前にある蝶と花のみを描き込むことで疎密の関係も取り入れているため暗い中でも見せ場がはっきりしていますね!
日本画はこれが初めてとのことですが、蝶の翅や背景の暗がりなどの濃淡の使い方が繊細で素晴らしいです。強い太陽光とは違って蝶と花に当たっている光は仄暗く、真夜中のひっそりとした空気感と岩絵具特有の滲みや絵の具の重なりとの相性が抜群です。彼岸花も全身は見えず照らされていない部分はぼんやりと闇に溶けていて、全体的に光を意識しているのがわかります。そして右下に書かれたサインですが、日本画で筆記体!?と思われた方も多いのではないでしょうか?もし漢字で書かれていたらもう少し厳かな印象になっていたと思いますが、英語で描くことにより更に上品な雰囲気が伝わりますね。ところで蝶は西洋絵画では魂の象徴として描かれ、仏教でも輪廻転生などのシンボルとされています。偶然かもしれませんが、そんな蝶が夜の闇の中で彼岸花に寄り添っている…という見ていてどこか不思議な気分にもさせられる一枚です。