モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

油絵的通信簿:その弐

2010-08-09 03:28:00 | スタッフ講師
どうも幸介です!!先週の僕のブログから始まりました小学生クラスの油画の個人講評、小学生クラスは全部で73人在籍しておりますが、はたして全員の油画を講評するまで講師陣の体力が持つのか!?そんな事が最近気になっております。絵と向き合うのって結構体力使うんですよね。第三者が読むように配慮した文章を書くのも同じように体力使います。アトリエってけっこう力仕事かも?と思っております。では本日も張り切ってまいりましょう!!!

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まず左の作品は萌恵(もえ)の作品。エネルギッシュな花が黄色い背景に映えています。画像では分かりづらいんですが、上部の鳥の色、その周辺のグラデーション、花瓶のレリーフの凹凸に至るまでの色彩のバランスがとても良いです。ど真ん中に位置する花瓶の構図や花びらの色合いが花の生命力をよりいっそう高めていますね!完成した時、本人も僕も興奮して「すごい絵が描けたね!!」と確認しあってしまいました。情熱の人、ゴッホをも思い出させる作品ですね。なんていうか「ひとつの課題」としてではなく、もはや「絵」として素晴らしい完成度です。そんな絵を描いた萌恵ですが、彼女の作業スピードは決して早くありません。しかしいつだって、時間のかかりそうで妥協の無い作品を作ります。この前の仮面の課題でも、ひときわ大きな麦わら帽子を作っていました。作る物が凝っているので、いつも授業では出だしにつまづきがちですが、よくよく考えるとそれは「ただつまづいている」のではなくて「試行錯誤」して前進しようとするが故のつまづきなんだなぁと今回の油絵の完成を見て感じました。一刻も早く持って帰ってお家の人に見せてあげてほしいです。この絵を見て親御さんが「うちの子天才!」と思ったとしても、親バカではないです。

そして右の作品は敬信(けいしん)の作品。どうですかこの絵!!決して大人には描けまい!!!ドクロが真ん中に位置し、左右対称に青いグラスと黒い燭台が…!!言葉でわざわざ説明するのもナンセンスに感じますが、色とモチーフがドクロを中心にどっしりとシンメトリーに構えています。オシャレな構図ですね。正直この構図、僕の作品にアイデアをお借りしたいくらいです。物の描写も、月曜クラス最年少(!!)とは思えない出来映え。彼は瞬発力重視の制作スタイルで、最年少なのに毎回作品の完成が月曜クラスで一番早くて、かつクオリティも高いんです。しかし油絵はすぐには乾きませんので、瞬発力で描くのは不可能です。いつもの瞬発力で「早く描きたい」のを抑えて抑えてモチーフをひとつずつ描いたので、どのモチーフもしっかり力強く描写されています。また、低学年の子の場合は影の認識についての説明が難しく、影には安易に黒などを使ってしまいがちです。しかし彼はドクロの陰影を青い色で部分的に入れています。この微妙な陰影でドクロが単調にならずに、全体をまとめつつ主役としても存在できているんですね!!描いてある物が相乗効果で美しく存在している、不思議な絵です。彼は飲み込みが早いもんだから、僕もついついアレもコレもと新しい事を教えたくなってしまって、授業の後半にはぐったり、なんてこともあったりします。まぁそんなメリハリが彼の良いところなのかもしれませんね。

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そして上記左の絵は一平(いっぺい)の作品。この自転車のモチーフは以前にブログで紹介したとおり、僕のセットしたモチーフですが、この自転車は「一平には何か機能的なモチーフが良いんじゃ無いかなぁ」と思って設置しました。思惑通り描いてくれましたね。しかしどうですかこの出来映え!自転車の車輪やパイプの構造・陰影、その周辺に乱雑に散らばった小物のモチーフの描写も良い味出しています。そして何より良かったのが背景と地面の明るく鮮やかな色彩!!偶然か計画か、無彩色のモチーフの多い場所で描いた絵なので、明るいバックによってそのモチーフの描き込みが引き立っていますね。この色彩感覚は武器ですので、今後も大事にして欲しいです。彼は一見社交的だけれども独断の意思もあって、そして毎回のびのびと制作しています。その性格が絵に出ているのか、彼の描く絵は毎回構図がダイナミックで、かならず画面からモチーフがはみ出てしまいます。今回のこのモチーフも、自転車の全体をここまで入れたのは彼だけですね!墨汁で蟹を描いたときも水彩で動物を描いたときも、だいたい大きく描き始めるので画面に収まりきらないんです。ですがそれが結果的にとても良い。画用紙を渡されるとついついその中に収まるように物を描いてしまいがちですが、彼はそういった変な常識にとらわれる事無く、例えば森の中の風景を絵に描くときなんかまず画面を横断するように数本の太い枝を描き入れたりするんです。これを最初に見たときはビックリしまして、今まで木をそんな風に描き始める人を見た事が無かったので「これはすげぇな。しかも使える!!」と授業後にメモったのを覚えています。今後も彼の与えてくれるインスピレーションに期待です!!

そして本日最後は上記画像の右の咲空(さく)の作品。鷹、トランクの面の陰影、リンゴの立体感、トランクの上の食器&フルーツなどなど、もはや親のような気持ちで見入ってしまいます。彼女は幼児クラスの時からアトリエに通っていますので本当に小さい時から僕も知っていますが、まだまだ幼いと思っていたのにいつのまにかこんな油絵が描けるようになっているだなんて…リンゴの光加減の説明なんかも、説明一回ですぐ理解していました。斜め上から見たトランクの立体感の説明をしたときもそうでした。察するのがとても早いんです。毎週のように授業で会っているせいか、具体的に「成長したなぁ」と意識したことはあまり無いんですが、ふとした時に「あぁ、ここまで出来るようになっていたんだな」としみじみ思ったりします。子供は大人のいない場所で成長するんでしょうか。だいたい子供の成長を感じるのは「成長した瞬間」ではなく「成長した後」だったりしますよね。……話がそれましたが、今回の作品も今までなら「背景はこの色がいいんじゃないかなぁ」とこちらから提案していたものが、今回は「背景の色、モチーフが目立つように色を選びたいんだけど何色がいいんだろう」と、話して考えて決めて制作しました。この背景色、画像では水色一色に見えてしまっているかもしれませんが、実際は淡い水色と鮮やかなセルリアンブルーの2色を使っています。セルリアンブルーがグネグネっとランダムに背景に入っているので、いい具合に空気をかき回してくれています。なので鷹やアンテーィークのトランクなどのちょっと古めかしいモチーフを描いているのに、どこか爽やかで青葉のような印象の絵になっているんですね。そのミスマッチさも素敵です。


……以上、本日紹介させていただきました4人ですが、いずれの作品も大人には決して描けないであろう、今の彼らが今にしか描けない作品となっております。この構図や線の揺らぎの魅力、きっと小学生には分からないだろうな~。個人的にこの4枚は僕が欲しいくらい良い出来ですね。僕は小学生の時に油絵を描かなかったので、彼らが羨ましいです!!

ちなみに僕の担当の月曜木曜クラスの合計は36名!!前回の5人と今回の4人で、残すところあと27人となりました……多いけど頑張ってまいります。

田中幸介

コメント
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