駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

寒さが教えてくれるもの

2021年01月25日 | 人物、男
           

 昨日は冷え込むと言われたがさほどではなかった。一月も終盤、冬が峠を越しつつある。まだ大雪や寒波はあるだろうが、真底の寒さはもうないような気がする。
 寒いのは好きではないが、寒いと身体だけでなく心も引き締まる気がする。温暖の地に暮らして四十年、何か微かに失ったものがあるかもしれない。
 机の片隅に患者さんにいただいた小さな象牙の彫り物がおいて置いてある。肝の据わった方で、質の悪い病に動ずることもなく病室に伺った時いくつか昔話を聞かせていただいた。昔のビルマで従軍され、ビルマがなんとものどかで平和なところだったと述懐されていた。
 奇跡的に回復され、ビルマを再訪された。半世紀後も変わらぬ世界があったと話され記念にと小さな象牙の置物をいただいた。私が病院を辞してから再発で入院されお見舞いに伺った時、もう一度などと口走ると諭すように僅かに微笑まれた。
コメント
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