慢性疾患の患者さんの投薬日数は週単位あるいは十日単位で出している。二十八日、三十五日、四十二日あるいは三十日、四十日、五十日、六十日で六十日以上は特別な例外を除いて出さないことにしている。十四日投与は不安定な高齢者に例外的に行っている。
勿論、投与日数は主に医学的な判断から決めているが、社会的というか患者さんの生活環境にも配慮している。自己管理のできる人、コントロールが良好な患者さんに長期投与をしている。
これは長く、少なくとも五年以上、同じ患者さんを数多く見ていないと身に付かない感覚だが、慢性疾患の動きは五年十年十五年といった長期で変わってゆくもので数週間数ヶ月の観察ではうまくいっているのか要注意なのかわからない。そして慢性疾患の患者さんに新たな病気が発生することが希ならずあり、診察感覚が長いと見落としたり発見が遅れることがある。細心の注意を払っていても五六年に一人、発見が遅れるて忸怩たる思いをするので診察間隔を延ばすことには慎重にならざるを得ない。
日本の電車は定時に発着するので有名だが、きちんと定期的に通院してくれる患者さんは八割程度で、残りは数日遅れひどい人は一週間十日遅れでやってこられる。お忙しいのかと投薬期間を延ばしても、結局同じで要するにルーズというか自己管理がきちんとできないのだ。御注意申し上げても、ある程度改善するが、なかなか定時に来院まではゆかない。そうかといって通院をやめるわけでもないので、時々ちょっと注意しながら診てゆくことになる。