駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

眠れぬ夜

2021年01月26日 | 診療
                            

   カールヒルティに「眠れぬ夜のために」という著書がある。読んだことはないが眺めたことはある。
 眠れぬ夜が何時からあったか、果たして人類が誕生した頃にも眠れぬ夜はあったのだろうか。
 高齢者の不眠症には悩まされる。いろいろ新しい睡眠薬も登場し睡眠薬の使い方も系統的で定式化されてきたが、生身の人間が相手だと中々難しい。癖になりにくいという新しい睡眠薬は、ちっとも効かないと拒否されることも多い。若い人や新しい患者さんの場合は、難しそうだとわかると精神科を紹介するようにしている。
 しかし、高血圧などでかかりつけの高齢の患者さんだと、眠れないくらいでは簡単に専門医を受診してくれず、睡眠薬を減らすのに手こずることもある。呉れるまで帰らないなどと駄々をこねる爺さん婆さんが時々居る。就寝時間を遅めにして昼寝やうたた寝をしないようにといくつか注意をしても、誰もがわかってくれるわけではなく、忙しい外来だと根負けすることもある。
 冷たく駄目ですで済ませられたらと思うこともある。それでもこの十五年で睡眠薬の処方量は半減できたと思う。高齢者には眠れないと訴えても実は眠れている人も多いので、外堀から徐々に埋めて睡眠薬を少しずつ減らしてきた。デパスを飲んでいる人は殆ど居なくなった。それでも、睡眠薬を所望する患者さんは後を絶たず、対応に苦労することがある。
 それにしてもなぜ人は眠れなくなるのか。
コメント
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