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駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

もの忘れを自覚

2020年08月06日 | 小考

          

 

 医院を開業した当初は八割の患者さんが年上だった。三十一年経つと同年配が増える。患者さんの年齢は六十歳から九十歳でたぶん八割以上になると思う。

 昨日、もう二十年近くご夫婦で通っておられるKさんの奥さんの方がこの頃物忘れをするようになったと嘆かれた。年は私より二歳上で同年配だ。

 「昨夜トイレに起きた時、裕次郎の副社長誰だっけと思ったの、思い出せなくて二時間眠れなかった」と言われる。はて裕次郎の副社長って何だろうと思ったら「渡哲也」だと言う。実はあまり詳しくないのだが、ああそうでしたか「私も人の名前が思い出せなくて困ることはしょっちゅうですよ」と答えたことだ。人の名前というのは何を隠そう患者さんのことで顔と病気は出てきても名前が出てこないことが増えた。

 えーっと誰だっけという時は受付の女性に聞くことにしている。アラフォーの彼女たちは年齢性体つき病気を話すと「ああ、Aさんですか」と名前が出てくる。大したものだ。私も三十代のころは全てといってよいくらい診た患者の名前を憶えていたのだが、十年前から徐々にあれ名前が出てこないということが始まった。

 もちろん個人差はあるのだが、いくら平均寿命が延びたといっても、まあ七十五歳くらいが責任ある仕事を退く潮時のような気がする。確かに判断力はまだまだ大丈夫と思うが、責任の大きいトップは難しいと思う。尤も、芸術関係の仕事はできるうちはいつまででも可能と思う。

 もう院長ではなく診療だけなので、今しばらくは働けそうだ。それに最後まで診てくれと言う患者さんも何人かおられるので、そう簡単には引退できない。周りを見ても、全て引退すると早く老けるようだ。まあしかし、どうなるかは神のおぼしめし次第だ。

コメント
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