人類が生き延びてこれたのは採集、狩猟、牧畜、農業そして繁殖・・を持続可能効率的なものにする能力を持っていたからだ。これは多くの人が思い至る説明で目新しくは思わなかったが、その源泉が掟、慣習、宗教・・など人をまとめる思想思考を持つことできたからだという指摘にはなるほどそうだと目から鱗が落ちた。ハラリ以前にも、こうした分析はあったように思うが、私はこれほど明確に説得力を持って示された本を読んだことはない。
家族から村そして国と人間はまとまり組織を作りしばしば争い移動し定着し生き延びてきたのだが、いつも神様や不可侵絶対の精神的原理が存在してきた。誰かが思いついた考えあるいは誰かに取り憑いた教えがいつの間にか人々の脳に浸透し、それによってまとまり組織として動くことが出来た。それは時に理不尽ではあったが、不思議なことに生存に有利に働いたことも多かったらしい。近代現代と科学が出現、欲望や自由が徐々に解放され、原理や掟は時に破られ変化している。
こうした人間の抱く思想行動原理は哲学学問の対象となり研究されているが、一般人には理解は難しく現実への影響力は限定的だし、素人目には誰もがインターネットセリュラーフォーンを使う21世紀の展開に追いついていないように見える。ハラリの書はそこへの大きな橋を架けたと思う。ハラリにはトランプ現象やその先駆けの安部式戦略にも言及して欲しい。
私は平凡な市井の臨床医で、老い先も長くないと思うが、どうしても今の世界の動きになんだこれは一体どうなるだろうと気になってしまう。