駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

目移りする性格も時には有効

2019年10月14日 | 小考

         


 興味の幅が広くよく多趣味ですねえと言われる。それと今の仕事は深く結びついていると思う。一応専門だった領域はあるが、もうそれとは三十数年前に離れ、今はあらゆる病気を診るのを仕事にしている。広いけれども浅い知識経験しかない領域が多いから、手に負えない疾患は培ってきた人脈で市内の専門医、希には東京の専門医まで紹介している。今は家庭医とか自宅の看取りとか厚労省の指導と時代の趨勢で喧しいが、それは三十年前の開業当初からやっている。もう二百人以上の患者さんを自宅で看取ってきた。親子三代診ているご家族も多い。青春から墓場まで面倒を見させていただいている。

 そうした街中の医者が天職に感じられるのは父や祖父の影響もあろうが、どうも専門を究める仕事が向いていない性質からだろうと感じている。専門を離れるとき勿体ないと言ってくれる先輩も少しは居たのだが、自分には研究の世界が狭く感じられ、あれもこれもという移り気が押さえられないだろうと思い切った。趣味の世界はもちろんだが、仕事も心臓を少し脳神経を少し、糖尿病を少しとあれこれ目先の変わる勉強が向いているのだ。そうした一かじり二かじりのあれもこれもの勉強が、最前線の街中の医療には有効なので、私のように興味があれこれ移ろう人間には市井の医者が向いていると思う。

コメント (2)
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