駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

馬車馬の呟き

2019年10月26日 | 人生

        


 馬車馬のように働いてきた。なんだかがむしゃらに働いてきたように思われるかもしれないが、要するにニンジンを見ないようにして診療に専念してきた。私は自分の給与額税込みは知っているが、資産額は知らない。月数万の小遣いで何の不平も感じず暮らしてきた。十万を超えるものが欲しい時は妻に頼んで買って貰っている。勿論、カードを持っているが国内で使うことは少ない。妻と二人で動くことが多いので、支払いは彼女がしてくれる。

 医療費の保険の仕組みは知っているが保険点数は知らない。いつもできるだけ効率の良い診療を心掛け、患者さんの支払いが少なくて済むように心掛けてきた。なんだか立派そうに響くが実は資産額を知ったり保険点数を知ると儲けようという誘惑に負けるのを知っているので、わざと憶えないようにしてきたのだ。正直、いちいち覚えるのも面倒だし、これとこれを組み合わせると何点で得だ(医療保険は一点が10円)などという知り合いも居るが、私の趣味ではない。

 世の中には知らない方が良いこともあるのではと思う。尤も手綱を取る人が居たからできた話かもしれない。思い出せば、鞭がしなる音を一二度聞いた気もする。

コメント
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