駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

看護師不足に付け焼刃

2010年03月30日 | 医療
 就職率が低迷している中、看護師は売り手市場で求人が求職者を大きく上回り、病院医院を問わず、看護師不足が深刻である。
 にもかかわらず行政は看護専門学校を厳しい施設基準で見直し、教員が不足している、教室が狭い、体育施設がないなどの理由でいくつかの看護専門学校が閉鎖廃校に追い込まれた。看護師の地位向上、準看護師制度の見直し、看護大学の増設などがその背景にある。高い理想に異論はないが、現実の看護師不足をどうするのかと思ったら、東南アジアから連れてくればよいという信じ難い隠し玉が用意されていた。
 日本語のできない人が、言葉が最も重要な医療現場でどうやって働くのかと訝かっていたら案の定、外国人看護師の看護師国家試験合格率は1%だった。百人に一人では話にならない。誰がこんな馬鹿なことを考えたか、責任を取って頂きたい。
 実はこの外国人看護師、受け入れる側は大変な人的経済的負担を強いられる。当地域ではわずか一病院が二名受け入れているのみだ。当初まるでパンダが来たように地方紙に報じられたが、見世物ではなく戦力が期待されているわけで、院長のうめき声が聞こえてくるようでは困る。
 夢に釣られて来日した外国人看護師達も待遇が予期していたものと違うと、帰国する人が続出していると聞く。
 どうしてこんな奇妙な思い付きが生まれてきたのか。東南アジアから看護師を受け入れ教育するのなら、教育を目的にすべきで、補充に使うためなどという姑息な発想は厳しく品位が問われなければならない。この顛末が有耶無耶になるようでは、政権交代の意味がなくなる。長妻大臣は爪弾きにされているそうだが、弾き返して欲しい。
 アメリカでフィリピン出身の看護師やインド出身の医師が活躍(主に白人医師看護師の居つかない地域で)していることから連想したのかもしれないが、彼ら彼女らは英語の素養があり、言葉の壁がほとんどないのだ。
 資料を読まずに書いたが、問題点の的は外していないと思う。優れた提案を抑圧しようとするわけではない。こうした奇妙な方策が生まれ実行されてしまう背景に役所の無責任体質があることを厳しく指摘しておこうと書いた。それを是正することは一朝一夕にはできないことは承知している。継続は力なりといつもいつまでも指摘し続けたい。
コメント (2)
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