駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

再生産は決して

2010年03月10日 | 小考
 数年前に女性を生む機械と口走って顰蹙を買い、頓挫した大臣が居た。機械と言ったのが失言で、産む性とでも言えばさほど問題にならなかっただろう。しかし本当はこうした言葉の間違いよりも、女性が生めば解決するような認識の方が問題なのだ。少子化に対して生んで貰わなければならないのは確かであるが、それは女性だけの役割ではなく、子供を産み育てるのは社会の役割なのを強調すべきであった。
 さて、その社会なのであるが、実はもっと細かく分析して捉える必要がある。確かに生むのは女性固有の能力かも知れないが、社会の中にはそれと同等否それ以上に端倪すべからざる能力がある。それは再生産力つまり後継者を育てる能力だ。これは人間が形成する組織が自然発生的に内在している能力で、どういうものか、これは女性群よりも男性群に強く備わっている能力のように思う。自分が属する組織を強く長く永続させるようにレクルートした人材を育て上げてゆく力、おそらくこれは後天的に学んで身に付けた能力というより、遺伝子の中に組み込まれている行動原理のような気がするのだが、自らの種を守ろうとする性向が長い人類の歴史の中でいつの間にかより狭い組織に向けて働きだしているように思う。こうした動きが自分の思考の中に組み込まれていることに現代人は気付かねばならない。そうすれば視野狭窄による暴走を矯めることができる。自分を客観視し自らがある世界を俯瞰する能力はリーダーに不可欠だ。パスカルの言葉が思い出される。夜郎自大に肥大した歪な自己が本当は弱い葦に過ぎないことに気付いて、人間の尊厳の在処を意識し生かせば明日を切り開くこともできるだろう。
 飛び交う浅薄な罵詈雑言、いい加減にして欲しい。駅前の町医者はそんなことが云えるほどあんたは偉くないと思う。口汚い言葉は非難する相手でなく自分に突き刺さることに気付かねば、リーダーを目指す前に既にその資格を失っている。
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