駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

時は流れず堆積

2010年03月04日 | 町医者診言
 「砂山の砂を指で掘ってたら真っ赤に錆びたジャックナイフが出て来たよ」と裕ちゃんは唱った。
 よく見ると自分が中学生の時、魚釣りに持って歩いていたナイフではないか。突然、一瞬にして時は40年を遡り、松林と幼友達が蘇り、辺りの光景が変わって見えるだろう。
 彼方に見えていた入道雲がいつの間にか空を覆い、急に暗くなったかと思うと雷が轟く、稲妻に浮き上がる松林の中、釣り竿を手にTやFと一緒に一目散に家を目指したことが昨日のように脳裏に浮かぶ。
 時は流れないというウイスキーのCMがあった。時は堆積するのだ。懐かしい香りや思いがけぬ手触りに、過ぎた過去の地層は一瞬に現れる。それはしばしば昨日の出来事よりも鮮やかだ。
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材料も調理によって

2010年03月04日 | 政治経済
 友達に鯛一匹あるいは鳥一匹を頂いたとする。さてこれで、今夜の主菜を作ろうとした時、誰でも何処でも同じように旨い料理ができるだろうか。料理人の腕や厨房のしつらえによって、できあがる料理の味は異なってくるだろう。
 これはあまり良い喩えではないかも知れないが、似たようなことが医療薬品に起きている。今度の医療保険改訂で厚労省はジェネリック薬品(後発薬品)使用を強力に後押しする施策を打ち出した。その理由は医療費抑制、つまり安価なジェネリック薬品を使わせることによって医療費を削減したいためだ。このジェネリック薬品は特許の切れた医療薬剤を後発の強弱大小の薬品メーカー(約300社)が入り乱れて製造している薬で、値段は先発薬剤の25-70%と極端に安い(先発薬品が高すぎるという声あり)。薬効成分が規定通り含まれているという化学的な保証と血中濃度が先発薬品と同等という保証はあるが、実際に患者に投与する治療検定は行われていない。薬剤の賦形成分、被覆成分などはまちまちで、先発一流メーカー品と同じではない。そのためか中にはどうも一流メーカー品に比して効きが悪いのではないかと思われる薬もあるらしい。これは我々臨床医の間で囁かれている印象で科学的な検証があるわけではないが、薬の使い心地を知っている最前線の臨床医の印象だからあながち嘘ではないだろう。厚労省の高級官僚が弱小メーカーのジェネリック降圧剤や血糖降下剤を服用しているとは考えにくい。もし服用しているとしても比較的高価な強大メーカーのジェネリック薬品だと思われる。安定供給もままならぬ弱小メーカーはいづれ自然淘汰されるのでいいと厚労省は考えているのかも知れないが、情報公開と説明責任に於いて不十分な所があるという感じがする。
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