駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

医療費を削減するには

2009年09月02日 | 医療
 どうすれば税金の無駄遣いを減らせるか。沢山方法があると思うが、実態が分かっている医療のことで指摘したい。医療側のことに先日少し触れたが(cf)、患者側にも問題がある。
 二ヶ月に一度、夜間急病センターに出動するのだが、不急の患者さんが数多く受診する。数時間前から咽頭に違和感がある、熱を測ったら36.8Cあった、インフルエンザではないか調べてくれと元気な顔をして訴える。その後ろには39Cの発熱や嘔吐で苦しんでいる患者さんが何人も並んでいる。
 36.8Cで熱ぽいのかと聞けば、私は平熱が低い、いつも35.5Cしかないと主張される。インフルエンザの症状と異なるので検査の必要はないと言うと安心の為と言う。数時間前からでは万一インフルエンザでも反応が出ないことが多いので必要ないと説明しても、家族が心配しているからと粘る。だいたい心配性の家族は一家揃って心配性なので埒があかない。大抵の医者は押し問答は苦手だし、早く次の患者さんを診てあげたいから、それじゃあと陰性が予想される検査をやる羽目になる。
 インフルエンザの検査に限らず、高価な脳のMRI検査なども、ちょっと頭が重いくらいで、隣のばあさんがやったから私もなどという人が結構いる。嫌な言い方だが保険が利くので、一万円を超す検査が千円台、千円を超す検査が百円台で出来る。保険無しの自費の額でも希望するのだろうかと思うことがある。
 医師が不要と考えても患者の希望で検査をしてしまいがちなのは、どのような理由でも検査をすれば其処に収益が発生するという仕組みがあることと、医学的に妥当な判断でも、生物が相手の医学に完璧はなく、数百回に一回くらいは検査を省くことが診断の遅れに繋がることがあり、それを咎めようとする患者さんが増えているからだ。
 人間ドックと同じ感覚で実施される検査については異常が無かった場合、医療側には実費だけ(収益なし)とし患者の負担は増やすという規定にすれば、随分と(恐らく10%近く)医療費が節約できる。ここで節約できた費用を他の必要な所、例えば勤務医や介護職の処遇改善に回せば、現在の予算でも相当部分がまかなえるだろう。
 判定の難しさや完璧を求める国民性から、実現は難しいかもしれないが、こうした形の過剰があることを指摘しておきたい。
コメント
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