この頃は4時半になるとテレビのスイッチを入れる。大相撲中継をを見るためだ。そしてひいき力士の「明正」の相撲に注目する。先場所は大きく負け越して番付を4枚目から10枚目に下げた。まわしの色が故郷の奄美の海の色と同じコバルトブルーだ。どちらかと言えば技能派だろう。遠藤ほどの華やかさはないが、遠藤のような力士を目指して欲しい。そしてそのうちの三役入りを願う
6日目の土俵で、これから先に見ることがないと思われる場面に遭遇した。いや見てを行けないものを見てしまったというべきか。行司受難の日だった。その日私が中断していたテレビのスイッチを再び入れると朝乃山と豪栄道の一番だった。そこで見たのが三役格の行司木村玉治郎が土俵下に転落し、控えの立行司式守伊之助が慌てて立ち上がろうとしていた。なんとか軍配だけはあげることができた玉治郎はつぎの結び前の玉鷲と栃ノ心の取り組み中に土俵下で額の血を自ら拭きとっていた。
私はリアルタイムで見たわけではないが、転落前の一番、遠藤と貴景勝をさばいたのも玉治郎だった。貴景勝の右足と玉治郎の左足が接触したように見えて、決まり手にない「つきひざ」で貴景勝は初黒星を喫した。ふりかえると転落はその影響もあったのではないか。事はそれで終わりではなかった。転落した一番に続く玉鷲と栃ノ心をさばいた伊之助は、物言いがつき行司軍配差し違えとなってしまった。
翌日の毎日新聞の見出しは「貴景勝崩れて土、行司の足につまずく」とあるが。転落や立行司の軍配差し違えには触れていなかった。武士の情けというところだう。一方でスポーツ紙はさすがに詳しい。玉治郎の「足は乗ってもいないし、触れてもいない」という談話を紹介し、取り組み中にバランスを崩して土俵下に吹っ飛んだとする写真が添えられている。打ちだし後に協会理事長に口頭で進退を伺いを申し出た伊之助の「頑張ってくださいと激励された」という話も報道している。