「アベノミクスの功罪」と題する朝日のインタビュー記事(11・25)を読んだ。答えるのは外交・安全保障も含め「近年これだけ仕事をした政権はない」と安倍政権を評価する保守論客の佐伯啓志氏である。何度も読み返してみたが、腑に落ちる箇所がなかなか見い出せなくて困った。
「アベノミクスの批判はいくらでもできますし、私自身もかなり批判的です。だが他にどんな政策がありえたか。すくなくともかなり世の中のムードは変えました」「安倍さんが登場したとき、デフレ克服と経済再生は最大の論点でした。安倍さんはなんとか動かせると思ったのでしょう」
「大事なのは経済の背後に我々の社会生活があり、おカネに変えられない何かがあるということです。それを維持するのが保守。問題は〈カネを超えた価値〉を認めるかどうか」「近代主義的な価値観の表面的なところだけを受け入れ、家も地域社会も宗教の支えもなくなってしまった。保守はそれを立て直すべきでした」
「ただ本当の問題は日本社会が何をやってもうまくいかないところまで来てしまったところにあります。その認識を前提に、やれることをやろうという以外にない。我々の本当の幸せはなにか、文化や地方生活はどうあるべきか、そういう問題設定をすればよかった。しかし野党もメディアも安倍政治の批判ばかりやっていた」