真ん前にある電柱で工事があるという予告があった。当日の午後に大型の工事車両が2台と小型運搬車1台が到着して停車した。関係者から我が家に挨拶があった。道路はやっと自転車が1台通り抜けるスペースだけが確保されていた。
2台の電気工事用高所作業車が電柱をはさんで両側からアームを伸ばして作業が始まった。電線と庭木をたくみに避け、前進や後退や回転を繰り返しながらアームがのびてゆく。こんな熟練の技を飽きずに眺めるのは昔から男の子ときまっていた。
まず電柱の下のほうに大型のポリバケツほどのものが固定された。こんな圧迫感があるものを取り付ける工事だったのかと内心ざわついた。続けて見たこともない太いケーブルが6本ほど電柱にぶらさげられ、もうどうにでもしてくれという気持ちになった。
しばらくして気づいたのだが、これら作業は停電を発生させないための電流のバイパスを作っていたのだ。その後、電柱の高いところで本来の接続作業が行われた。ポリバケツも太いケーブルも撤去され、ほぼもとの景色に戻った。作業車が去ると、インフラが破壊され続けているウクライナのことを思い浮かべていた。