小平市図書館の「本の福袋」の年末企画は6回目を迎えるという。前々回に中学年向けの「地図を見ながら日本を旅しよう」と題した袋の中に「伊能忠敬」があって読んだ。それを契機に「ナンバ歩き」を覚えて、今でも長距離を歩く時は実践している。偶然出会った本を読むことで、思いがけなく視野が広がり生活が新たな展開を迎えることもある。
昨年末に「江戸知りになる」と題して3冊入っている福袋を借りてきた。いつも通り英字新聞にくるまれている。家で開けるまでどんな本が入っているのかわからない仕掛けだ。福袋は今回が二度目だ。①とんぼの本「江戸の献立」、②歴史と文学の会編「江戸東京魔界紀行」、③門井慶喜著「家康、江戸を建てる」の3冊だった。①は江戸料理を再現した写真集②は多くの人による寄稿集③は江戸の町ができてゆく物語。
①だしは江戸は鰹節一本。上方は北前船が運ぶ昆布が主体。東のののし餅より、西の丸餅の方がうまい。料理は包丁を入れるたびにまずくなる。四角に切った餅は四方から味が抜けてゆく。江戸っ子そっくり(笑)。上方はうどん。江戸は蕎麦。上方のおにぎりは俵型、東京は三角。②将門首塚が大手町のオフィス街の中心にある。神田明神の祭神が平将門で、平安中期の関東の豪族。東国の独立を標榜し朝敵となる。江戸っ子も将門に崇敬の念を抱いていた。
③1971年生まれの著者による、徳川家康が登場する物語。まるで見てきたような著者の騙りはおもしろい。全五話には、それぞれに適材適所の仕事人が登場する。秀吉に関東移封を命ぜられ慣れ親しんだ東海五か国をあとにして関八州の領主となる。まず関東平野北部から流入してくる利根川をはじめ数本の大河を東へ捻じ曲げる(流れを変える)。良質な貨幣の鋳造(金貨を延べる)。七井の池・井之頭の湧水を発見(飲み水を引く・神田上水)。江戸城の石はそのほとんどが伊豆から切り出されたもの(石垣を積む)。青梅の石灰岩で白壁の簡素な天守閣(天守を起こす)。