こんな小咄がある。「先生、私物忘れが激しくて困っています。それは大変ですね。いつからですか? なんの話ですか・・・」
かなり前には、ラジオの「真打ち競演」「上方演芸会」それと「ラジオ文芸館」をよく聞いていた。これらの番組の放送時間が変更されて、久しく聞くことがなく過ごしてきた。とりわけ週末の夜のNHKラジオは若者向きに模様替えしていて私には雑音でしかない。ふと思いついてその気になって上記の番組が、現在はいつ放送されているのか調べてみた。
かつて寝床で聞いていた落語は土曜の朝10時5分、漫才は同じ土曜の夜7時20分に変更になっていた。またラジオ文芸館は、なんと月曜の朝1時の真夜中の放送だ。いつのまにやら聞かなくなったのも無理もない話だ。しかしまだ放送が続いているだけでも良かった。それに聞き逃した番組はパソコンで好きな時に聞けるサービスもあるという。
昨年末のNHK紅白歌合戦にAIの美空ひばりが登場し、生前に歌われたこともない新曲を披露したことは最近になって知った。感動する人や技術の発展を喜ぶ人たちがいる一方で、死者への冒涜だ批判の声も多く出たという。しかし例えば古典の名著も、死者の言葉である。読む行為でいつでも甦らすことができる。人はなじんだ技術を科学技術だと感じず、時を経て「あたりまえ」に思ってしまう。