旅の前半を仏教徒、後半は回教徒だという二人の現地ガイドが案内した。いずれも男性で、二人とも日本への留学の経験があるという。紹介もなく交代もないインド系のバスの運転手は大型ペットボトルでこまめに水分補給をしながら黙々とハンドルを握っていた。初日にはマレー鉄道をクアラルンプールから北へ向かう区間を1時間半だけ体験乗車した。それ以外はすべてバスでの移動である。
「東洋の真珠」と呼ばれるペナン島は、東西貿易の十字路であるマラッカ海峡に位置する地の利を生かして古くから交易船の寄港地として栄えた。2008年にマラッカ海峡の歴史的都市群としてマラッカとともにペナン島の市街地ジョージタウンが世界遺産に登録された。ペナン島はクアラルンプールから北西に350㎞離れている。長さ13.5㎞のペナンブリッジを渡り、一泊した翌朝に2014年に完成したばかりの24㎞の第2大橋を戻った。
マレーシアはポルトガル、オランダ、イギリスという西洋列強に支配された歴史を持つ。錫の採掘のために多数の中国人労働者が、ゴムのプランテーションには最も従順な労働者と言われる南インドのタミル人が連れてこられたという。真珠湾攻撃は1941年12月8日である。そのほぼ同時刻に山下将軍の率いる日本軍がマレーシアの東海岸のコタバルに上陸した。いわゆるシンガポール作戦だ。三年にわたる日本軍の占領の後の1957年に独立を果たす。
ASEAN(東南アジア諸国連合)の中では製造業の割合が高く、農業は低い。各地に工業団地があり、数多くの日本企業が進出している。宇部興産に勤務する私の甥はマレーシアに長期の出張中だと聞いていた。彼はジョホール州の工業団地で合成ゴムの合弁会社の立ち上げに従事しているのではないかとパソコンを見て推測するに至った。今度会ったら本人に確認してみよう。ゴムの木から採取した樹液をラテックスという。思いがけずマレーシア製天然ラテックスの枕を一つ購入した。