萩は豊饒の秋のシンボルであり、万葉集で一番多く詠まれた植物で、和歌において萩は鹿と取り合わせることが好まれたという。その紅の花をつけた枝垂れた萩が風に揺れる様は風情がある。ところが庭の萩は早咲きのようで梅雨の頃から咲き始める。炎天下に萩の花だから多少の戸惑いがある。冬のうちにばっさり枝を剪定すると古株からは芽が盛んに吹き出る。(クズとタイサンボク)
萩の花が咲き始めると黄色の蝶が飛んでくる。モンシロチョウよりはひとまわり小さく、いつもせわしなく飛び回る。これがキタキチョウである。生き字引である鈴木さんによると、萩はキタキチョウの食草であり、吸蜜植物でもあるため常に姿を見ることができるという。他の蝶は庭に飛来してもすぐに姿を消すが、キタキチョウは萩のまわりをいつまでも飛び回っている。(異なる2地点の撤去と新設)
鈴木さんは「キタキチョウは年に4回は世代交代があり、10月に羽化した成虫が冬を越す。庭に萩を植え、近くにアベリアと菊を植えて春に菜の花を咲かせれば、一年を通してキタキチョウが庭で世代交代をしながら舞う姿を楽しめる」と勧める。なんと庭にはそのすべてが揃っている。現在アベリアが咲いている。毎年春には冬野菜の菜の花がかおる。冬の菊の代わりるものとしてツワブキの花がある。
身近なこの庭がキタキチョウの棲息に適していることをこれまで意識していなかった。卵は萩の若葉や新芽に一個ずつ丁寧に産み付けられる。大きさは1ミリほどで乳白色だという。庭でキタキチョウの卵を見つけることができたら私も少しは進歩したことになる。調べてみると南西諸島に分布するキチョウ(ミナミキチョウ)と本州のキタキチョウの2種に分かれるが外見による識別は困難とあった。