今年の新緑の季節は都心の街並みをひたすら歩いた。隔週土曜に3回連続で出かけ、2回目は内堀通りで3回目は外堀通りだった。内堀通りの皇居ランニングは皇居の外周を反時計回りに約5キロ走る。半蔵門を起点に私たちはランナーと同じコースをほぼ2時間かけて歩いた。国立劇場、最高裁、そして桜田通りに面した警視庁を右手に見ながら祝田橋を渡る。
日露戦争の戦勝を祝した凱旋道路のために明治39年に造られたのが祝田橋だ。日比谷濠を分断して、その西側は凱旋濠と呼ばれるようになった。皇居前の大芝生広場に点在しているクロマツは約2000本あり、例年1月から3月に剪定が行われる。落された松葉が冬枯れの芝生に緑の模様を作り出す風景は冬の風物詩になっているという。
寄り道をして読売新聞社(2013)と大手町ビルの間に行く。箱根駅伝の歴代の優勝校を記した碑があった。竹橋のパレスサイドビル(1966)には毎日新聞社がある。江戸城の竹橋門は撤去され石垣の一部が残る。ランニングコースは北の丸お堀端をショートカットする形で竹橋から代官町通りを走る。ここは千鳥ヶ淵によって行き止まりになっていたが明治33年に千鳥ヶ淵を埋め立てて濠を二分し内堀通りにつながった。
代官町通りの途中から車道を横切り右手の高い土手に登る。舗装されていないこの道は「千鳥淵さんぽみち」と呼ぶ。ここから右下に主都高速環状線が千鳥ヶ淵濠で地下へもぐり込んでいるのが見える。今回歩かなかった桜の名所は「千鳥ヶ淵緑道」と呼ぶ。明治になって内堀が埋め立てられた場所が2か所である。すなわち江戸城には祝田門や千鳥ヶ淵門はなかった。帰りは半蔵門から新宿通りを新宿まで歩いた。新宿御苑北側に舗装されていない「内藤新宿分水散歩道」がある。浅くて狭い小川に沿って初めて歩いた。