ある日の夕刻にギャラリーの前で鈴木さんが携帯用の椅子に一人で腰かけていた。近くのクヌギの高木にツミがカップルで止まっているのを見かけて先ほどから監視を続けているところだという。ツミは食物連鎖の頂点に君臨する猛禽類だ。そのツミがあの木に巣を作るのではないか。しかし近くにはカラスが巣作りを始めていて、縄張り争いの騒動が起きるかもしれないという。
それから後の10日の日曜日の清明(4/4~19)の観察会に参加した。先に集まった面々がまだ裸の高い木の枝を見上げている。視線の先にあるのは一羽のツミだった。参加者は鈴木さんに教えられなければ誰も気付くことはない。若葉が巣を覆う以前から追跡していなければツミの子育て観察は不可能だろう。巣の場所を捜しあてることから観察は始まる。果たしてツミはあの木に巣をつくるのだろうか。
公園のフジ棚に案内された。何事が起こるのか私には見当もつかない。成虫越冬したウラギンシジミはフジが花を咲かせる前の蕾に卵を産み付ける。その幼虫は花を食べて育つという。フジの蕾が動物の尻尾のように頭を持ち上げているのを私は初めてをマジマジと見た。そのフジ棚でたまたまウラギンシジミが一羽飛んで、鈴木さんは参加者のためにその幸運を祝福した。
小川水衛所から下流にはシャガ、フデリンドウ、チゴユリ、ニリンソウ、イチリンソウなどの野草が群生する場所があり、玉川上水の両岸にはヤマブキが咲き乱れている。留鳥の中で子育てが一番早いエナガの雛が誕生したという。雛が誕生すると親鳥は必ず二羽で行動する。この日は2か所のエナガの巣を教えてもらった。餌を運ぶ親鳥は巣に帰るとすぐには巣に入らない。かならず一羽が警戒に当たり、安全を確かめて一羽が入る。その様子を首が痛くなるのを忘れて「あっ、いま入った」と声を上げる。(フデリンドウ、イチリンソウ、チゴユリ)