夕刻になると鈴木さんはオープンギャラリーに姿を見せることが多い。そこで鉄棒ぶら下がり帰りの私は鈴木さんによく出会う。季節の狩人の鈴木さんは最新情報を少年のような情熱で私に話す。朝6時の散歩でカワウが漁をしているところに出くわした。大きな魚だったので悪戦苦闘していた。一橋大国際キャンパスで百羽ぐらいのイカルの群れに遭遇した。出歩く人には敵わないと思う。
ギャラリーの観察会は昼過ぎに終わるのが常だが、27日の春分のそれは「ぐみくぼ公園」で昼食をとることになっていた。観察会では毎回その名を知るなどの新しい発見がある。「シキミ」という木が花をつけていた。仏事に用いるため寺院に植栽されるという。「バイモ(貝母)」が花をつけていた。地下の鱗茎は二枚の厚い貝状の鱗片が相対しているという。(シキミ、バイモ、ツクシ)
公園の隣りは多摩変電所で鉄塔に「只見線」とある。福島の只見ダムで発電されて送られてきているのだ。柵の辺りにはオオイヌノフゲリの近くにツクシが顔を出している。多摩川の水を取り込んだのが玉川上水で、その小平監視所から枝分かれして埼玉に流されているのが野火止用水である。豊かな雑木林の野火止緑地の高い木の枝に小さいタカのツミが止まっていた。近くには小枝を寄せ集めた巣が見える。
鈴木さんが用水の水面に張り出した木の内側を覗き込んでいる。ゴイサギがいないか捜しているのだという。また5月の連休明けにはカワセミの巣に案内できるだろうと話したことがある。その場所はこの野火止あたりではないかと私は予想する。残念にも公園の枝垂れ桜はつぼみのままだった。しかしフキの佃煮などいただきながら黒糖焼酎でいい気分になる。その翌日、私は一人あの場所に出かけてゴイサギに出会うことができた。このことはいずれ鈴木さんに報告することになる。