玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*啓蟄の頃

2014年03月10日 | 玉川上水の四季

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 この時期になると「鶯色とはどんな色」という問いかけが頭に浮かぶ。自分の長年の思い違いが最近になって判明したことによる。鶯は漂鳥で玉川上水には11月上旬に姿を見せる。冬の間は「チャチャチャ」と地鳴きして薄暗い笹の中などで過ごす。啓蟄になり日差しが暖かくなると鶯が「ケキョケキョ」とさえずり始める。そして徐々にそのさえずりを美声に完成させていく。雄の鶯が「ホーホケキョ」とさえずると近くに雌がいて、そのうちに子育てのため雄は雌を伴って山へと戻る。警戒心が強く、声が聞こえても姿が見えないことが多い。

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 日本語大辞典の付録に色名辞典があった。その中の「緑系」の色に絞って、それぞれの色の写真をながめてみた。若葉色(レタスグリーン)、若草色(スプリンググリーン)、若草が色濃くなった草色(グラスグリーン)、黄緑色を表す伝統的色名である萌黄色などがある。鶯色は黒茶がかった緑色とあるが、たしかに茶系に見まちがえそうな色だ。青きな粉をふりかけた、あの「うぐいす餅」は草色である。またメジロの羽根の色も草色である。取り合わせのよいことのたとえに「梅に鶯」がある。これも誤解を生じさせる原因の一つだ。蜜を好むメジロと違い、昆虫を主に食べる鶯が積極的に梅の木にとまることはない。目撃することが多いのは「梅にメジロ」である。「梅に鶯」と混線して、草色のことを鶯色と思い込んでしまったのだ。

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 直井一枝さんは玉川上水オープンギャラリーを開設した鈴木忠司さんの実姉である。今回の啓蟄のギャラリー東側展示は「育てた野菜・直井一枝の絵日記」だ。つぎのような作者のコメントがあった。「私はこの春に85歳になりました。春になりこれから菜園の仕事は土づくりから種まきと忙しい毎日ですが、農作業のあとに机に向かうのが毎日の日課です。少しの時間でも絵筆を持つと農作業の疲れも忘れて充実した時間を過ごせます。描くことが元気の活力ですね」いろいろなサイズの色紙に描く水彩画の展示である。ギャラリー開設の翌年から続いているからこれで5回目になる。

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 今回は大根、とーがらし、大国ねぎ、ハヤトウリ、なばな、アスパラ、トーモロコシやアンネのばら、ビワ、ダイダイ、カボス、キューウイフルーツ、イチジク、干し柿、レモンなどを描いている。そのほかに「鹿児島産のさつまいも、デコポン」や「鹿児島からきた、おおつぶにんにく、高井戸でとれました」という絵手紙のような三枚があった。気になって鈴木さんに尋ねてみると「直井一枝の孫の嫁さんは鹿児島の出身だ」と打ち明けてくれた。彼女の孫は小学校で美術を教えているという。「実は私の孫も美術の仕事をしている」と鈴木さんはつけ加えた。以前にも紹介したが鈴木さんは武蔵美の出身である。自身もギャラリーで春夏秋冬の年に4回の自作の鉛筆画の展示を欠かさない。(写真は3月9日)

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