玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*彫刻家の平櫛田中

2008年11月18日 | 捨て猫の独り言

 平櫛田中(ひらくしでんちゅう)は岡山に生まれ幼くして大阪の人形師に弟子入りし木彫りの修行をした。その後上京して高村光雲の門下生になる。写実的な作風で日本近代を代表する彫刻家の一人である。木彫界の巨匠として文化勲章も受賞した。その授賞式で天皇から 「何に一番苦心されましたか」 と尋ねられ、「おまんまを食べることでした」 と答えたという。数々のあっけらかんとした語録を残している。

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 玉川上水の景観に魅かれて60歳を過ぎた頃に隠居所を建てるつもりで小平に土地を購入している。98歳の時に上野桜木町から小平市学園西町に転居して107歳でなくなるまで約10年間を過ごした。小平市はその私邸を保存し広く公開するため1984年に平櫛田中館を開館し、10年後には隣に展示館を新築した。遺族から作品寄贈を受けたことを機に2006年に平櫛田中彫刻美術館として新しくスタートした。入館料は300円だ。

 「六十、七十は鼻たれ小僧、男ざかりは百から百から、わしもこれからこれから」 と100歳のときに向こう20年間の製作に備えて巨大な彫刻用クスノキ原木を購入し世間を驚かせた。それは現在でも田中館の玄関先に据えられている。今年の10月17日から11月24日まで「仏像に魅せられた彫刻家たち~円空、木喰から平櫛田中、荻原守衛、高村光太郎、そして現代彫刻まで」が開かれている。武蔵野美術大学とのジョイント企画である。美術館学芸員にとっても初の本格的な展覧会なのでその意気込みが伝わってきた。

 田中館は我家からのんびり歩いて30分ほどの所にある。高い木に覆われた玉川上水沿いの途中には津田塾大学や一橋大学国際キャンパスなどがある。記念館は書院造りで方形の大きな屋根が特徴である。アトリエを覗くと良寛上人の石膏像などが置かれている。庭では四季折々の花々が訪れる人の目を楽しませてくれる。たとえば10月つわぶき、12月さざんか、1月つばき、梅、2月は福寿草などである。いつか皆さんをご案内したい場所である。

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