その老婦人は90才前半で欠損歯はあるものの自前の歯で内服薬もない。車椅子はおろか杖、老眼鏡すら使われない。年なりの物忘れはあるが軽微で出費に対しては敏感だった。数年で離婚され子供はいない。従って「独りだから老人ホームに入って安心したい」がお念仏代わりだった。
公営で多くの老人が入居を望む管理人常駐のアパートに居ながらディサービスに通い、日に何度も「ここの費用はいくら?」と気にされていた。働き通しに働き(食事付き限定でアパートは寝るだけ)着古しを纏いながらかなりの蓄えの用意もあった。
本人の強い希望に従い調査がなされ、有料老人ホームしか該当せず、かなりの一時金を払い入居された。調査の結果以前にも倍する貯蓄もあった様子。そこは同伴者(コスト算定)なしの外出は許されないが、送迎つきのディには再参加されている。後見人の采配で一切の費用の心配はいらず、「年金が入るから何とかなるそうだ」と安心しきった穏やかな笑顔を見せ、少なくともコムスンの餌食にならずに済んでホッ・・。(楠の古木)