小人数の家での天ぷらは面倒この上なしで、余程のことがない限り食卓には上らない。ただし蕗の薹の芽生える今頃と、秋口のみょうがの花がつき始める頃だけは例外である。我が家の主婦も天ぷら鍋との格闘を厭わない。
前庭に芽生える蕗の薹は、未だ固いように思われ摘み時を思案していたのだけれど、裏に回ってみたところ、こちらはもう咲き始めていた。慌てて摘み取り早速天ぷらにした。蕗の薹、エンリギ、人参、南瓜と大皿一杯になり、ほんの少し手伝った娘は「美味い、有難い、幸せ」とかなんとか言いながら平らげた。
蕗の薹は次々と芽吹き大きくなるので、あと2~3回は天ぷらで食卓を賑わしてくれよう。大きな天ぷら鍋、材料の下ごしらえ、台所周りの油汚れ、後始末の面倒さを考えると天ぷらはどうしても大人数向きの料理といえる。これで当分娘は大きな顔をして我が家の敷居を跨ぐことになるだろう。そして猫殿も密かにそれを期待していよう。残念ながら、離乳食中の孫にはまだまだ早い。