「プーチンはKGB出身だから・・」と彼が極悪非道のように言う人がいます。
しかし、父ブッシュ元大統領について、「ブッシュは元CIA長官だから・・・」という人はいません。
さて、KGB出身といえば、私が知っている限りではアンドロホフ書記長がそうでした。
1982年、このアンドロホフ書記長に、当時10歳か11歳だったアメリカの少女が手紙を書き、そしてそれに対し、アンドロホフは返事を書きました。
手紙の翻訳は、ウィキペディアから貼り付けさせてもらいます。
ウィキペディア
サマンサ・スミス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%9F%E3%82%B9
信愛なるアンドロポフ書記長殿、
私の名前はサマンサ・スミスで10歳です。新しく書記長にご就任おめでとうございます。私はロシアとアメリカが核戦争に突入してしまうのではないかと心配でなりません。あなたは戦争をしますか、しませんか?もししないのであれば、どのように戦争を阻止するつもりなのか教えていただけませんか?この質問には答えていただかなくてもいいのですが、でも、なぜあなたが世界征服をしたいのか、それか世界でなくとも我が国を征服したいのか知りたいです。神様は我々が平和に暮らせるようにこの世界を御造りになられました、戦うためではありません。
敬具
"サマンサ・スミス"
信愛なるサマンサへ、
私はあなたの手紙を受け取りました、それは、あなたの国や世界中の他の国から届いた多くの手紙と似た内容のものでした。
あなたの手紙から察すると、あなたはとても勇気があり正直な女の子だと思います。あなたの同胞マーク・トウェインが書かれた『トム・ソーヤーの冒険』に登場するトムの友人、レベッカを思い出させてくれました。この本は我が国でも多くの少年や少女に愛されています。
あなたの手紙では、我々の国の間で核戦争が起きてしまうのではないかと心配していますね。そして、我が国がそれを阻止する手立てをとっているかどうか尋ねています。
これらの質問は考える人間にとって最も重要なものの一つであり、私は真剣に、そして誠意をもって答えたい。
サマンサ、我々ソ連の人々はこの地球上に戦争が起こらないように努力しています。これはソ連人民の願いであり、我々の建国の父レーニンが教えてくれたことです。
ソ連の人々は戦争というものがどんなに悲惨なものかよく理解しています。42年前、世界征服を企んでいたドイツのナチス軍が我々の国を攻撃し、多くの市や町を破壊し、ソ連の何百万人という尊い命を奪いました。
この戦争は我々の勝利に終わりましたが、当時、我々はアメリカと共に連合国の一員として、ナチス侵略者から多くの人を解放すべく、アメリカと共に闘いました。これらの事実はあなたも歴史の授業で習っていることでしょう。そして今日も我々は平和に暮らし、地球上の国々-近隣諸国からアメリカのように偉大な大国とも-ビジネスをしたり協力関係を築きたいと考えています。
アメリカと我が国は核兵器を保有しています。核兵器とは瞬時に多くの人々を殺すことのできる恐ろしい兵器です。しかし、我々はこの兵器の使用を望みません。このため、ソ連は、世界中のどの国に対しても、核兵器の先制使用を絶対にしないと宣言しています。また、我々は核兵器の生産中止を提案し、さらに世界中の核兵器を破棄(非核化)する方向を考えています。
このことがあなたからの二つ目の質問「なぜ我々が世界、またはアメリカに対して戦争を起こそうとしているのか」に対して充分な回答になっていると思われます。我々もそのような状況を望んでいません。我々の国民も-労働者から農民、作家やお医者様も、大人も子供も、政府関係者も、誰も、その大小問わず戦争を望んでいないのです。
我々は平和を望んでいます。我々は現在、例えば麦の生産、建物の建設や開発、本の執筆や宇宙への飛行等他のことで忙しく働いています。我々は我々と世界中の人々のための平和を望んでいます。そして何よりも子供たちやあなた、サマンサのための平和を望んでいます。
あなたの両親の許可が頂ければ、あなたに是非我が国に来ていただきたく招待します。この夏が一番良いでしょう。そうすれば、我々の国を直に見て理解できるようになると思います。
我々の同胞とお会いになり、海辺にある国際子供キャンプ(アルテクキャンプ)を訪れてみてください。そして、ソ連の人々がいかに平和と友好関係を望んでいるか、ご自身で判断してください。
末筆ながら、手紙をくれたことに感謝を申し上げ、あなたの人生が素晴らしいものでありますようお祈り申し上げます。
"ユーリ・アンドロポフ"
1983年にサマンサは両親と共にアンドロホフの接待客としてモスクワ滞在し、その後も両国の親善に尽くしました。
しかし、彼女は1985年に飛行機の墜落事故で死亡しました。
(この事故を暗殺と疑う人もいたようですが、真相はわかりません。)
・・と、このようにロシアの美談を書いていると、「親ロシア、反米」と言われそうですね。
まあ、実際私は米国政府が「正義漢ぶって世界を思いのままにしている」という部分は嫌いです。
しかし、「ロシアは善、アメリカが悪」とも思いませんし、ついでに言うと、「KGB出身だから危険」「CIA出身だから危険」というのもどうか、と思っています。
KGBについてはあまり知らないので例をあげることができませんが、CIAだったら、たとえばジェームズ・アングルトンのような人物がいたかと思えば、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%B3
この彼を左遷したウィリアム・コルビーのような人もいました。
https://en.wikipedia.org/wiki/William_Colby
(英語しかありませんが、このコルビー氏、CIA在任中も情報公開などを行い(彼の後任が父ブッシュ)、CIA長官を退いたあとは、核廃絶や軍事費削減を提唱してきまいた。彼も、1996年にカヌーの事故(?)で亡くなっていますが・・・。)
結局は”人”により、その彼らも、(世界に対する)功罪があり、完全に「善」「悪」と分けることはできないのではないかと思います。
それにしても、やはり世界各国、「平和」のために動く人は暗殺されたり、事故死、不審死・・・ですね。