Various Topics 2

海外、日本、10代から90代までの友人・知人との会話から見えてきたもの
※旧Various Topics(OCN)

ジェラルド・カーティス氏が日本に残したメッセージ

2011年11月14日 | 社会(歴史・都市計画含む)

メールを整理していました。

数年前まで東京新聞に毎月コラムを連載していた、アメリカ人政治学者のジェラルド・カーティス氏のコラムが出てきました。

このカーティス氏は、アメリカ人であることもあって、日米関係重視派で、時に「日本が米国に従属することが日本の利益」といった論調でコラムを書くことが多く、私にはあまり同調できない論客ではありました。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%A9%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%B9

しかし、CIAとまで噂されもされるこの彼(情報提供者リストに載っていた事実があるだけ)も、時に「日本に何が欠けているのか」「日本が失ったもの」ということをズバッと切り込んで書いてくださり、このシリーズ連載終盤のコラムでは何度か「日本は米国の言いなりになるだけでは駄目だ(=自信を持ちなさいというニュアンス)」とまで書いておられました。

彼はこのコラムの連載を終えて本国に変えられましたが、以下のコラムにあるように、「『道徳的で尊敬されると言う基準』を失わないで歩んでください」と言うメッセージも日本に残していってくれています。

東京新聞(200945)

時代を読む

『日本は変革のために自信を』by ジェラルド・カーティス

今年、日本経済の成長率はマイナスになり、デフレとなる可能性もある。自民党も民主党も、問題の克服のために何をすべきかについて説得力のある政策提言をしていないし、国民に希望と期待を与えられるような将来ビジョンを打ち出してもいない。そういう意味では、日本の赤字予算よりも、「指導力赤字」の方がよほど深刻である。

こうした悪いニュースばかりが流れる結果、日本の産業の強さや社会の強靭さは忘れられがちだ。トヨタやホンダの車が売れないのは、需要が足りないからであって、企業に構造的問題があるからではない。市場が回復すれば、再び車は売れるようになる。

しかし、抜本的な構造改革を迫られている米自動車大手GMの場合、必ずそうなるとは言えない。同じように、アメリカの金融機関の構造的問題は大変深刻だが、それと比べれば日本の銀行はまだ健全である。外国人投資家という「市場」は日本経済を過少評価していると思う。

私はまた、日本社会の最大の強みが忘れられているのではないかと思う。日本人の伝統的価値観からして、個人は自分の力だけで成功することはない。社会の中に生き、他人との関係に基づいて集団が構成されていく。その集団の中で、あるいはその集団のリーダーとして、どれほど上手にやれるかによって、個人の成功の可否が左右される。他人にどう思われているか、どう評価されているかを気にするのも、日本人の尊敬すべき価値観だと思う。

だが、これは日本独自の価値観ではない。それを証明しているのは、他ならぬ近代資本主義思想の父アダム・スミスである。スミスは2冊の著書を残した。一つは良く知られる『国富論』で、そのテーゼは、個人が抱く成功への欲望が「見えざる手」によって経済成長のエンジンとなるということである。

もう一つの著作『道徳的感情論』は非常に興味深い。この本でスミスが言わんとしたことは、「道徳的人間」が幸せになるためには、他者からの尊敬が必要だということである。言い換えれば、道徳的人間は社会とのかかわりに規定される。人間は孤立した「島」ではなく、人間同士の関係という「海」に中に生きているということだ。

米保険大手のAIGが多額の税金投入で破綻を免れたにもかかわらず、幹部に1億65百万ドル(約160億円)ものボーナスを支給していたことを知って、米国民は激怒した。ことはAIGだけの問題ではない。米国の多くの大企業幹部に支払われている報酬の額は、非道で許されるべきものではない。

道徳的価値が崩壊した資本主義体制の下では、大多数の犠牲の上に少数だけが豊かになる。オバマ大統領が政府支援を受ける企業の幹部のボーナスにシーリングを設けようとしているのは、今の米国では道徳に基づく自制心を期待できないから、法律で規制せざるを得ないという悲しい事実があるからである。

私は、日本の人々は自分たちの社会の強靭性にプライドを持って、それを守っていくべきだと思う。日本には深刻な問題も数多くあり、大胆な変革が必要であることに変わりはない。だが、そうだからこそ、社会の強さと道徳的な価値観野重要性を認識してはじめて、必要な変革への勇気が沸いてくるということを、忘れないでください。

さて、このコラムは日本の政財界には特に読んで欲しいです。

追記:

最近のオリンパスの事件に関し、「日本の経営、コーポレートガバナンスの問題」アメリカ人の友人に、「この問題は日本の会社だから起こったものではない」と反論していたところでした。そのときに彼に送った資料の一つを貼り付けますが、モラルの低下については、もう言葉もありません。オリンパスで内部告発者の裁判があったことも、最近知りました。こうした問題はオリンパスに限らないわけですが、「恥の文化」は残して欲しいものです。

Nikkei BP 2011.10.31

Dismissed CEO Turns Focus on Troubles at Olympus

Where Did This Established Company Stumble?

http://business.nikkeibp.co.jp/article/eng/20111031/223514/ 

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