「台風に邪魔されながらの関西旅行記 #1-3」のつづきです。
「村上隆 もののけ 京都」展からのお次の作品は、これまた長大(3m×10m)な「金色の空の夏のお花畑」です。
マンガみたいといえばそうかもしれないけれど、あまりにも思い切り良すぎる「スーパーフラット」感と意匠の繰り返しは、宗達の「燕子花図」とか其一の「朝顔図屏風」に通じるものがあったりして…。
そして、どんな不機嫌な人をも笑顔にしてくれそうなパワーを持つ作品だと思いました。
次は、「梟猿図の猿」と「梟猿図の梟」です。
この2作品は、狩野山雪のそれぞれ「猿猴図」と「松に小禽・梟図」が元ネタのようです。
何ともユルいお猿さんとフクロウですが、もともと元ネタが京狩野のご本家という「格」が信じられないユルさなんですよねぇ。
山雪の2作品のうち「猿猴図」は、トーハクで観たのは確実なのですが(写真もある)、
もしかすると、私は2013年5月の「狩野山楽・山雪」展@京都国立博物館 で両作品とも観たかもしれません。(本宅なら出展目録や図録で確認できるのですが、いかんせん、別邸に帰省中)
で、おもしろいのが、山雪の2作品は水墨画(小鳥のお腹のみ着色)なのに対して、村上さんの2作品は色彩豊かで、「猿」は金地、「フクロウ」は銀地(実際はプラチナ箔)で、華やかに仕上げられていることです。
きっと村上さんは、曽我蕭白の水墨画「雲龍図」を朱で描いたのと同様に、「こりゃイイ」と面白がってこの作品をつくったんだろうな
ここまで記事を書いてきて気づいたことがあります。
それは、村上さんが敬意を持って「拝借」した元ネタを、私は2013年に何点もまとめて観たかもしれないということです。
狩野山雪の2作品については、前述のとおり断定できませんが、曽我蕭白「雲龍図」と岩佐又兵衛「洛中洛外図屏風《舟木本》」を生で拝見したのは確実です。
もっとも、「だからどうした」と言われればそれまでなのですが…
京都国立博物館 東山キューブの館内で最後に観た作品はこちら。
真っ金々の部屋に展示された外連味たっぷりの作品です。
中央部のこれは、
上から「暫」の鎌倉権五郎、「勧進帳」の武蔵坊弁慶、そして「外郎売」で、どれも歌舞伎の演目、それも「歌舞伎十八番」です。
ということは、、、、と思ったら、これは「十三代目市川團十郎白猿 襲名十八番」という作品で、
市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露興行を彩る特別な祝幕は、2022年11月の東京・歌舞伎座での襲名披露興行で大きな話題となりました。この祝幕は映画監督の三池崇史氏が、“十三代目市川團十郎”のドキュメンタリー映画を撮影する中で、「現代の絵師が描く現代の役者絵をつくってほしい」と村上に原画制作を依頼し実現したもので、2023年12月1日~24日には京都・南座でお披露目されました。
だそうな。
ここで展示されていたのは祝幕の原画で、原画でも102.8×480×5.8cmと大きなサイズ(5.8cmの厚みは何?)ですが、実際に使われた祝幕は、歌舞伎座の舞台に合わせた「7.1m×31.8m」という巨大なものだそうで、こちらのサイトで見ても凄い
この祝幕は、今はどこでどうしているんだろ?
團十郎白猿さんがもらっても扱いに困るだろうし、松竹がしっかりと保管しているものと思いたい
これにて「村上隆」展の観覧を終え、動線に従ってミュージアムショップを覗きました。
しかし、「#1-3」で
大きなオリジナル作品で心を揺さぶられ過ぎると、ミュージアムショップでポストカードや図録を買う気が削がれるという副作用があったりもします。
結局私は、オリジナルとの印象が違いすぎる気がして、この展覧会のポストカードも図録も買いませんでした。図録は、税込6,600円という価格もネックになったのですが…
と書いたように、素通りしました
でも、「村上隆」展はこれで終わりではなく、もう一つのお楽しみがありました
金色に輝く「お花の親子」とルイ・ヴィトンのトランクのインスタレーションです。
説明板に村上隆さんのコメントがありました。
この彫刻作品は、ルイ・ヴィトンと共に制作しました。2003年にスタートしたルイ・ヴィトンとのコラボレーションは、私の現代美術家としてのキャリアに、大きな足跡を残しました。そのモノグラム・マルチカラーのトランクの上に、にっこり笑うお花の親子の像が立っています。
アートとファッションの垣根をはずした、もしくは、アートに幼稚なオモチャ感覚のロジックを組み込んだ始祖は、共に自分であると自負しています。
日本の伝統的な美学からインスパイアされたスーパーフラットコンセプトの作品を、日本庭園の風景の中でお楽しみください。
村上 隆
ルイ・ヴィトンらしからぬ明るくカラフルな「モノグラム・マルチカラー」の存在は、ブランドものに疎い私でも知っていましたが、これが村上隆さんによるものとは知りませんでした
さらに、この作品は、館内に展示されていた立体作品同様にFRPとかレジンとかグラスファイバーで作ったものかな? と思ったら、ブロンズに金箔を貼ったものだとか
いったい、どれだけの重さがあるんだろ
NHK日曜美術館 で村上隆さんが辻惟雄さんに、設置が大変だったと話されていたけれど、このサイズのブロンズ像を、それも屋外に展示するのは、それは大変だったろうな…
以上を以て「村上隆」展の鑑賞を終えた私は、京都市京セラ美術館の正面入口に戻り、傘を回収して(忘れそうでした)、東山駅へと向かったのでありました。
これにて今回の関西旅行のメインタスクを完遂であります
次は、デジカメ用のSDカードを入手せねば
つづき:2024/09/10 台風に邪魔されながらの関西旅行記 #1-5