きのう、盛岡駅でのこまちの「雪落とし」作業のため、2分ほど遅れて13:44頃に大宮駅に到着した私、自宅でちょいと一服したのち、東京国立博物館(東博)に行ってきました。
例年よりちょい地味な門松が飾られた東博に着いたのは15:12ですから、閉館まで2時間弱しかありません(そのまま新幹線で上野駅まで来ればもう1時間は余裕があったかも… でも、荷物が邪魔)
さっそく、見逃せない「新春特別公開(1月14日まで)」の作品を観るべく、本館(日本ギャラリー)の2階へと向かいました。
やはり、東博が誇る名品、長谷川等伯の松林図屏風前には多くの人が群がっていました。
でも、観客が多いといっても、すぐ近くからしげしげと細部を観られるのは、総合文化展(常設展)ならではですナ
今回は根っこに注目してみました。
迷いのない筆づかいで、ビヨンビヨンと描かれています
マイルス・デイビスの名盤「Kind of Blue」のライナーノーツで、ビル・エバンスはこんなことを書いています。
There is a Japanese visual art in which the artist is forced to be spontaneous. He must paint on a thin stretched parchment with a special brush and black water paint in such a way that an unnatural or interrupted stroke will destroy the line or break through the parchment. Erasures or changes are impossible. These artists must practice a particular discipline, that of allowing the idea to express itself in communication with their hands in such a direct way that deliberation cannot interfere.
The resulting pictures lack the complex composition and textures of ordinary painting, but it is said that those who see well find something captured that escapes explanation.
ジャズの即興性を、修正の効かない水墨画になぞらえているのですが、「松林図屏風」は、まさしく「熟考が入り込むことのできない直接的な方法で自らの手とコミュニケーションする」業(わざ)によって、(筆致は激しいけれど)静けさと霧の湿気を放っているようでした。
尾形光琳の「風神雷神図屏風」にも観客が群れていました。
お正月らしい鮮やかな作品ですなぁ。
お正月らしいといえば、こちらの「花車置物」(江戸時代・19世紀)も、華やかで結構でございました。
ところで、恒例の「干支絡みの展示」、今年も「巳・蛇・ヘビ」と題する特集展示が行われておりまして、こちらの記事で、
意表を突くような展示に出会えるのでしょうかねぇ…
なんて書いていたのですが、意表を突かれっぱなしでした
ほとんどが初めて観る作品で、まったくもって、東博、恐るべし…
こちらの作品(パリッシーの写し 蛇の皿)なんて、リアルすぎて、ちょっとご勘弁をって感じ。
説明によれば、
明治9年、英国からの寄贈品。19世紀中頃に仏国で流行したデザインで、16世紀半ばのB・パリッシー(仏)作の皿を写したものと考えられる。皿の中央に這う蛇、周縁のトカゲや昆虫といったモチーフはきわめて写実的で、明治の人たちにも強い印象を与えたことが想像される。
とありますが、現代人にも強い印象を与える作品です。
でも、これは、「あげる」と言われてもお断りします
つづいては、「東京国立博物館ニュース」の2012年12月-2013年1月号の表紙に採用されている勝川春章の「二代目嵐三五郎の巳の字巻物持男」。
こちらの作品にはかなり詳しい説明がつけられているのですが、読んでもよく判らない…
曽我物語の工藤祐経を演じる二代目嵐三五郎が開いた巻物には、「巳」の字が4文字書かれています。しかし、よく見ると「巳」4文字ではありません。あなたはこれを読めますか?
「己、已、巳」の3文字の書き分けを、第3画の書き始めで覚えるための「こ・きの声、おのれ・つちのと下につき、い・すでは半ば、し・みは皆つく」といった歌で記憶している方もいると思います。でもこれは3文字。
書かれいるのは、4文字。右から「已己巳己」(いこみき)と読み、互いに似ているものの喩えとされる熟語です。現代では、「おのれ」と「つちのと」は同じ「己」と書かれる文字ですが、江戸時代に感じを覚えるための「小野篁歌字尽」という本に、「すでにかみ、おのれはしもにつきにけり、みはみなはなれ、つちはみなつく」と歌が記されています。この絵と同じ順の4文字です。現代とは字形が異なり「おのれ」と「つちのと」とも書き分けられて、「已己巳己」は、本来4種類の文字だったのです。
現代人には、難しい「巳の字巻物」。蛇の年らしく、手も足も出なくても目出度いものです。
最後のフレーズがなんとも… でも、まぁ、正月だから、良しとしますか…
ということで、まだ「東博に初もうで」はまだつづきます。
つづき:2013/01/06 東博に初もうで2013(その2)