新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

東博に初もうで2013(その2)

2013-01-06 18:17:26 | 美術館・博物館・アート

「東博に初もうで2013(その1)」のつづきも東京国立博物館(東博)本館(日本ギャラリー)2階からお送りします。


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この日の本館2階は、松林図屏風(英文名だと“Pine Trees”と味も素っ気もない)や風神雷神図屏風(こちらは“Wind God and Thunder God”とそのまんま)だけでなく、絵画を堪能できました。
まずは、全作品を観るのはフェルメールの現存作品制覇よりも遙かに難しいと思われる「佐竹本三十六歌仙絵巻断簡」(お暇なら、こちらの記事もご参照方)から住吉明神


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正直申し上げて、背景を知らなければ「どうしてこの作品が重要文化財?」と思いそうな作品でした。
次は、歌川広重肉筆画3連発


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右から順に「東都御殿山・真乳山図」(ペア)、「御馬献上行列図」、「富嶽図」です。
このうち「御馬献上行列図」は、毎年八朔(旧暦の8月1日)に天皇の御前に披露(駒牽:こまひき)する馬を献上するための行列を描いたもののようです。


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かの名作「東海道五十三次」は、広重が御馬献上の一行として京に上ったときに描かれたとか、一行に加わるには広重の身分(同心)が低いとか、実際に旅行したにしては事実と異なる絵があるとか、諸説紛々でありますが、そんな話を思い出しながらこの絵を観るのもまた一興です。


お次は英一蝶「富士山図」


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あまり一蝶っぽくない作品ですな。


130106_2_06 書画の最後は、一休さんこと一休宗純の「杜甫騎驢図賛」。

なんと書いてあるのかと、ネットをさ迷いつつ調べた結果、以下のような七言絶句と判明しました。


日短乾坤一腐儒
残生七十吟鬚雪
不騎官馬只騎驢
漠々蜀江風色癯


「腐儒」とは「役立たずの学者」「癯(ク)」「やせる」という意味のようで、しっかりと読み下せなくても、もの悲しさが漂います


そういえばこちらの記事に登場した李白とこちらの杜甫について、高校の漢文の先生曰く、


(詩の中で)李白はしょっちゅう酒を飲んでるし、杜甫は泣いている


とのこと。随分昔のことを思い出しました。


   


本館2階で観た作品の最後は、特集陳列「巳・蛇・ヘビ」からこちら。


130106_2_07 「飛天十二支八花鏡」(随~唐時代・7世紀)です。

説明板には、


これは12の干支の動物を、中央の四角い枠の中に表した鏡で、蛇は下の右端にいる。


ということで、確かにの間にヘビがいます。

でも、ヘビ絡みでこの作品を展示するのはちょいとズルいかも…。何せ、どの干支でも使えますから…。


「その3」は、リニューアルした東洋館からお伝えします。


つづき:2013/01/08 東博に初もうで2013(その3)

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東博に初もうで2013(その1)

2013-01-06 12:57:24 | 美術館・博物館・アート

きのう、盛岡駅でのこまち「雪落とし」作業のため、2分ほど遅れて13:44頃大宮駅に到着した私、自宅でちょいと一服したのち、東京国立博物館(東博)に行ってきました。

 

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例年よりちょい地味門松が飾られた東博に着いたのは15:12ですから、閉館まで2時間弱しかありません(そのまま新幹線上野駅まで来ればもう1時間は余裕があったかも… でも、荷物邪魔

 

さっそく、見逃せない「新春特別公開(1月14日まで)」の作品を観るべく、本館(日本ギャラリー)の2階へと向かいました。

 

やはり、東博が誇る名品長谷川等伯松林図屏風前には多くの人が群がっていました。

 

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でも、観客が多いといっても、すぐ近くからしげしげと細部を観られるのは、総合文化展(常設展)ならではですナ

 

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今回は根っこに注目してみました。

迷いのない筆づかいで、ビヨンビヨンと描かれています

 

マイルス・デイビスの名盤「Kind of Blue」のライナーノーツで、ビル・エバンスはこんなことを書いています。

There is a Japanese visual art in which the artist is forced to be spontaneous. He must paint on a thin stretched parchment with a special brush and black water paint in such a way that an unnatural or interrupted stroke will destroy the line or break through the parchment. Erasures or changes are impossible. These artists must practice a particular discipline, that of allowing the idea to express itself in communication with their hands in such a direct way that deliberation cannot interfere.
The resulting pictures lack the complex composition and textures of ordinary painting, but it is said that those who see well find something captured that escapes explanation.

 

ジャズの即興性を、修正の効かない水墨画になぞらえているのですが、「松林図屏風」は、まさしく「熟考が入り込むことのできない直接的な方法で自らの手とコミュニケーションする」業(わざ)によって、(筆致は激しいけれど)静けさと霧の湿気を放っているようでした。

 

Kind of Blue Kind of Blue
価格:¥ 721(税込)
発売日:1997-03-27

 

   

 

尾形光琳「風神雷神図屏風」にも観客が群れていました。

 

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お正月らしい鮮やかな作品ですなぁ。

 

130106_1_05 お正月らしいといえば、こちらの「花車置物」(江戸時代・19世紀)も、華やかで結構でございました。

 

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ところで、恒例の「干支絡みの展示」、今年も「巳・蛇・ヘビ」と題する特集展示が行われておりまして、こちらの記事で、



意表を突くような展示に出会えるのでしょうかねぇ…

 

なんて書いていたのですが、意表を突かれっぱなしでした

ほとんどが初めて観る作品で、まったくもって、東博、恐るべし…

 

こちらの作品(パリッシーの写し 蛇の皿)なんて、リアルすぎて、ちょっとご勘弁をって感じ。

 

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説明によれば、

明治9年、英国からの寄贈品。19世紀中頃に仏国で流行したデザインで、16世紀半ばのB・パリッシー(仏)作の皿を写したものと考えられる。皿の中央に這う蛇、周縁のトカゲや昆虫といったモチーフはきわめて写実的で、明治の人たちにも強い印象を与えたことが想像される。

 

とありますが、現代人にも強い印象を与える作品です。
でも、これは、「あげると言われてもお断りします

 

勝川春章「二代目嵐三五郎の巳の字巻物持男」つづいては、「東京国立博物館ニュース」2012年12月-2013年1月号の表紙に採用されている勝川春章「二代目嵐三五郎の巳の字巻物持男」

こちらの作品にはかなり詳しい説明がつけられているのですが、読んでもよく判らない…

 

曽我物語の工藤祐経を演じる二代目嵐三五郎が開いた巻物には、「巳」の字が4文字書かれています。しかし、よく見ると「巳」4文字ではありません。あなたはこれを読めますか?
「己、已、巳」の3文字の書き分けを、第3画の書き始めで覚えるための「こ・きの声、おのれ・つちのと下につき、い・すでは半ば、し・みは皆つく」といった歌で記憶している方もいると思います。でもこれは3文字。
書かれいるのは、4文字。右から「已己巳己」(いこみき)と読み、互いに似ているものの喩えとされる熟語です。現代では、「おのれ」と「つちのと」は同じ「己」と書かれる文字ですが、江戸時代に感じを覚えるための「小野篁歌字尽」という本に、「すでにかみ、おのれはしもにつきにけり、みはみなはなれ、つちはみなつく」と歌が記されています。この絵と同じ順の4文字です。現代とは字形が異なり「おのれ」と「つちのと」とも書き分けられて「已己巳己」は、本来4種類の文字だったのです。
現代人には、難しい「巳の字巻物」。蛇の年らしく、手も足も出なくても目出度いものです。

 

最後のフレーズがなんとも… でも、まぁ、正月だから、良しとしますか…

 

ということで、まだ「東博に初もうで」はまだつづきます。

 

つづき:2013/01/06 東博に初もうで2013(その2)

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