ニセの霊媒が有害なのは、仕事上の決断、家族の問題などを霊媒に相談して決めることで、霊媒に自分の人生をゆだねてしまうことと、『サイキック・マフィア』にあります。
『サイキック・マフィア』は、1960年代に霊媒として大金を稼いでいたM・ラマー・キーンの告白録です。
キーンは心霊主義の教会で行われている交霊会に参加して、講習会に参加するようになる。
「心霊主義」とは、死後の生や霊魂などの実在を信じ、霊媒を通して死者の霊のメッセージを受け取ったり、交信できるとする思想です。
キーンは最初のころ、霊媒たちが心霊的なメッセージを受けとることができ、基本的に善意で行動していて、心霊主義への信仰を強めることを望んでいると本気で思い、自分たちも霊媒として開業することに決める。
物理的な現象をでっちあげるつもりはなかったが、人々は、霊の姿や直接談話現象、心霊写真といった奇跡を求めていると気づき、次第にイカサマに手を染める。
キーンは心霊主義教会をひきつぎ、世界心霊主義者協会の理事にもなります。
教会を設立して、自分を「師」と名乗る法律的な権利を得るのは簡単で、弁護士に教会の定款を作ってもらい、8名の理事を集めて、州務長官が承認すれば、自分にどんな権限や肩書きを与えていい。
他の者を心霊主義の聖職者に叙任し、宗教学校を経営して自分に学位を与えることもできるそうです。
アメリカには各地に心霊キャンプがあり、インディアナ州チェスターフィールドには、毎年、夏になると数千、数万もの人が愛する故人と話をするためにやって来て、毎年の収益は百万ドルになる。
人々は亡くなった愛する人と交信するためなら、いくらでも金を出す。
キャンプ・チェスターフィールドに数十万ドルを遺贈した人、50万ドル以上を残した人もいる。
キーンの主催する集団交霊会の参加費は3ドルから10ドル。
毎日25回の交霊会を開き、1日あたり千ドルを稼いだ。
キーンの教会(信者300人)でも、一晩の礼拝で1万から2万ドルを集めたことがある。
1960年の10ドルは、2016年だと82.33ドルだそうですから、1~2万ドルは現在の10万ドルということでしょうか。
https://westegg.com/inflation/
キーンは交霊会のトリックを暴露しています。
交霊室は真っ暗なので、霊媒が何をしているか列席者にはわからない。
そして、キャビネット(仕切り部屋)が交霊室にあり、秘密の出入り口や隠し場所として使われる。
・参加者の個人情報(家族の名前、社会保障番号など)を伝える
交霊会の列席者の情報を集めるための手段。
霊媒は交霊会に来た人たちのファイルを作っていて、それを霊媒師たちが共有する。
この情報交換によって、未知の人が来ても、彼らや亡くなった人についての情報を言い当てることができる。
カードの符丁は、名前の横の×はその人が死んでいること、○は生きていること、ハート・マークは参加者が愛していた人。
「父は目の手術をしたが、失明した」「父方の祖母はウィルバーという名前」などが書かれている。
ある霊媒は個人名のカードを数万枚も持っており、今度来たときに物品引寄で返す私物をクリップで留めていた。
教会の礼拝前に、マジックミラーや盗聴器を使って誰が来ているかを確かめ、霊からのメッセージを用意する。
あるいは、交霊会の時にハンドバッグや財布を盗み、社会保障番号や銀行通帳などのデータを得る。
・物品引寄現象(アポーツ)
何もないところから物品を取り出したり、参加者が紛失したものを取り出す。
交霊会のときに、こっそり私物を手に入れ、しばらく経ってから、本人がなくしたと思っていたその私物を物品引寄で取り出す。
たとえば、指輪を探してほしいと頼まれた霊媒は、指輪は自宅の冷蔵庫の角氷の中に氷漬けになっていると告げた。
・トランペットを使って霊の声を伝える
小さな赤い電球しかついていない暗闇のなかで、蛍光塗料をつけたトランペット(楽器ではなくメガホンのことらしい)が室内を飛びまわり、いくつもの声を発した。
その声は腹話術によるものだった。
トランペットが宙に浮かぶのは、トランペットは組み立て式で、120cmまで伸ばすことができるから。
・エクトプラズムの身体からの放出
エクトプラズムはシフォン(薄く柔らかい織物)を使う。
闇の中で見えないように黒いソックスとパンツをはき、シフォンでできた霊の衣裳を身につける。
そして、キャビネットから姿を現す。
霊の衣裳は霊媒のパンツや身体の穴に隠す。
・空中浮揚
黒装束で見えない霊媒と共犯者が椅子を持ち上げる。
つまりは、霊のしわざではなく、手品にすぎないわけです。
『霊・因縁・たたり』に、本覚寺の教師が名前を書いたお札をコップの水に浸すと、水は黒くなり、教師が「水の黒さは先祖の因縁の深さのあらわれ。先祖供養をもっとしなければならない」と言ったとあります。
墨で書いた紙を浸せば水が黒くなるのは当たり前で、キーンに比べると、ずいぶんちゃちな手口を使っているものです。
霊媒が死んだ配偶者や恋人の肉体を呼び出せると信じる人たちは、交霊室での死者とのセックスを求めた。
要望に応えてセックスする霊媒もいたし、霊媒のほうから交霊セックスを仕掛けることもあった。
人をだますという仕事をしている霊媒は常に大きな重圧にさらされていながら、秘密を家族にも言えず、親しい友人関係を築くことはできないために孤独である。
耐えきれなくなったキーンは教会の評議員に、霊媒能力はすべてインチキだと告白し、イカサマをやめるよう訴えた。
ところが、ほとんどのメンバーが信じなかった。
霊媒が愛する人々からの言葉を伝えてくれると信じ、そう信じることで心の安らぎを得ている交霊会の列席者は、霊媒があからさまなイカサマをしても、それを見ようとしないし、見たくない。
「認知的不協和理論」が説明するように、心霊主義者はインチキを認めず、正当化する意見だけ耳をかたむけるわけです。
https://psychoterm.jp/basic/society/06.html
キーンはこのように言っています。
まったく正気の人間が、幻想やペテンに夢中になるがあまり、真実が白日のもとにさらされたあともなお、それにしがみつこうとするのはなぜか。(略)
いくら論理をつくしたところで、嘘とわかっていながら信じる気持ちを打ち砕くことはできない。
キーンはFBIや州法務長官のところを訪れ、イカサマについて告白しました。
しかし、警察は一人の霊媒も取り調べようとしなかったし、内国歳入庁が霊媒の帳簿を調査した形跡もないそうです。
それはともかく、いつもおもうのですが、死者の霊魂が霊媒を通して語りかけるのだったら、未解決殺人事件の被害者が、誰それが犯人だと伝えてくれそうなものです。
かの大川隆法師のイエス・キリストの霊降ろしの動画が消される前に見れたのラッキーでした。
「アイム ジ~~ザズ クラァ~イストッ!」と登場されたときは度肝を抜かれました。ネット上でもイエスはアラム語をしゃべるはずだとかありましたが、どのみちアラム語なんて誰も知らないんだからなんとでもなるけどなあ、と。
それで思い出したのは、いろんなクラシックの亡くなった大音楽家が降りてきて作曲することができるという霊媒女性。ローズマリー・ブラウンさんっていうんですね。
ブログ主さんはピアノがお弾けになるんではなかったでしょうか?
ショパンが来たりてピアノを弾くとこうなるそうです。いかがですか?
https://www.youtube.com/watch?v=V6SvT07h4o4
でも生き霊を降ろすこの人はホンモノではないかと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=cX1ONIjJta0
結局、何をなりわいにするかは個人の自由なのではないかとも思います。
どういう批判だったか、よく覚えていないのですが、占い師にまかせることで自分で決断することができなくなるとか、ごく当たり前のことに特別な意味づけをするか、そういうことだったと思います。
ある先生は、何を気にかけるかによって人生がまったく違ってくると話されてました。
金銭や健康の直接的な害はなくても、占い師や霊媒の言うことに親近感を持っていたら、キーンのような詐欺師に丸め込まれやすくなるわけで、用心すべきではないかと思います。
で、イタコさんの口寄せも視覚障害者が差別され、社会でポジションを得られない時代にほそぼそとされるならおおいに結構だと思います。けれど、TVに出たり、本を出版したり、観光ホテルとコラボし出したりすると、度を越したビジネスと受け取られても仕方ないかなと思います。
でも需要があるから供給があるで、ウソでもいいから信じたい。。。というのが人間のせつなさだとも思います。
私は、「散る櫻 残る櫻も 散る櫻」で、この世に残された我々もいづれあの世に旅立つのだから、この世で会えなくても少しの辛抱です、とお説教するかなあ。。。