三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

渡辺一枝『消されゆくチベット』(2)

2022年04月06日 | 

チベットの中国化が進んでいることが渡辺一枝『消されゆくチベット』を読むとわかります。

2006年、チベット自治区の人口277万人のうち、中国人(漢人)は6%。
チベットには大勢の中国人が移住しており、チベット人よりも中国人が多い場所もある。

中国人が経済を握っており、会社や商店の経営者や社員のほとんどが中国人。
パルコルの土産物屋も多くは主人が中国人である。
辺鄙な町にも中国人の店がある。
中国人とチベット人が同じ仕事をしても、賃金に差がある。

渡辺一枝さんがチベット北部のチャンタンを旅していた時、あちこちで道路建設をしていた。
チベット内の道路なのに、中国人が働いている。
四川省から来た出稼ぎの中国人は「収入はいいが、故郷に仕事があれば、ここで働きたくない」と語った。

鉄鉱石、金、雲母など鉱物資源が中国人によって採掘され、中国に運ばれる。
チベット人の主食であるツァンパの材料の裸麦より小麦を作るようになり、大根(プゥラブ)は中国大根(ギャラブ)になった。
中国人がスイカを好むので、スイカ畑が急増した。

化学肥料や農薬の使用が義務づけられ、しかもその代金を農民が支払わなければならない。
放牧では効率が悪いと、牧民の定住化が進められ、畜舎で配合飼料で育てるようになった。

ものは豊富になり、道路は舗装されて便利になったが、その一方で自然が破壊されている。
しかし、抗議をすれば、不穏分子と見なされる。

経済だけでなく、教育も中国化されています。
チベットでの教育は中国語で行われている。
渡辺一枝『消されゆくチベット』(2013年)によると、小学校は1年ではチベット語と中国語で授業が行われ、学年が上がるにつれて中国語の授業が増えていき、中学校以上の上級学校は中国語だけとなる。
小学校の一部にはチベット語の授業はせず、中国語だけの学校もある。
中国語だけで教育を受けた者のほうが就職などで有利な条件を得る。

2018年から授業は中国語で行われており、チベット語の授業は禁じられた。
チベット文字を教えないので、チベット文字の読み書きができない若いチベット人が増えた。
道標や店の看板などに書かれているチベット文字すら読めない。
チベット語経典を読めない僧侶もいる。

テレビでは中国語の番組ばかりで、字幕も漢字。
チベット語の番組はほとんどない。
中年のチベット人でも会話に中国語の単語が混じる。

中国語しか話せなくても困ることはないが、中国語を話せないと不便になる。
買い物をする時に、中国語ならどの店でも通じるが、チベット語は通じない店がある。
役所に提出する書類は中国語で書かないといけない。

言葉は。民族、文化のかなめですから大切です。
その大切な言葉を政府はチベット人から奪っています。
渡辺一枝さんはこう書きます。

言葉は、心だ。民族の言葉は、その民族の心だ。ある民族が、他の民族の言葉を奪うような歴史を繰り返すことを、私たちは許したくない。

もっとも、日本もアイヌ、沖縄、朝鮮や台湾で同じことをしています。

パンチェン・ラマ10世が「チベットは中国から得た恩恵よりも、中国によって失ったもののほうが大きい」と言ったそうです。
チベット人ガイドが渡辺一枝さんに「いつか君は、僕が「結婚はしないよ」と言ったとき、なぜ?って聞いたね。チベットがチベット人の手に戻るまでには、道は遠いかもしれない。その日までは一人でいるほうが、自分の思いに正直に生きられる。だから、僕は結婚はしない」と言います。

渡辺一枝の本を読んだ中国の公安が渡辺一枝さんの知人を取り調べないかと心配になります。
現在のチベットは新疆ウイグル自治区のような状態なのでしょうか。

コメント
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