三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

コロナ陰謀論(5)陰謀論をなぜ信じるのか

2021年07月12日 | 陰謀論

陰謀論をなぜ信じるのでしょうか。

國枝すみれ「フェイクを信じ、正しい情報に耳を塞ぐ 陰謀論者の思考とは」(2021年5月18日)
ケント大の陰謀論研究によると、陰謀論者は3つの心理的な動機を満たそうとしている。
① 知識への欲求
パンデミックやテロ事件のようなことが起きると、起きた理由を知ろうとする。
② 安心したい欲求
自分が事態を制御できていないことについて、その説明を求める。
③ 優越感への欲求
「私は、他の人が持っていない情報を持ち、真実を知っている」と考えることで気持ちよくいられる。
https://mainichi.jp/articles/20210516/k00/00m/040/228000c

① 知識への欲求
人はある出来事が起こると、その原因を知って理解したいと思う。
ただし、自分にわかる単純な説明を求める。
同一の現象について複数の説明がある場合、もっとも単純な説明を選ぶ。

陰謀論の世界は、悪の勢力が善の勢力を支配しようという善と悪との対立なので、因果関係が単純明快でわかりやすい。
悪の勢力とされるのは、共産主義者やユダヤ人など、日ごろから反感や不信感を覚える人・組織・国家が多い。

内田樹「反知性主義者たちの肖像」(『日本の反知性主義』)は、エドゥアール・ドリュモン『ユダヤ的フランス』を紹介しています。

フランス革命とユダヤ人を結びつけた陰謀史観の物語である『ユダヤ的フランス』は19世紀のフランス最大のベストセラーになる。

物事の原因は多くの要素が絡み合っており、単純には説明できないから、フランス革命がなぜ起きたかを一言で答えることは不可能。
なのに、人はあいまいな説明を嫌い、一言で答えを求めた。
それがユダヤ人の陰謀という答えである。

フランス革命からの100年間でもっとも大きな利益を享受したのはユダヤ人である。それゆえ、フランス革命を計画実行したのはユダヤ人であると推論して過たない。

多くの読者が熱狂的なファンレターを送った。
「一読して胸のつかえが消えました」
「頭の中のもやもやが一挙に晴れました」
「これまでわからなかったすべてのことが腑に落ちました」
「永年の疑問が一挙に氷解しました」

あるいは、ジョセフ・マッカーシーの共産主義者陰謀論。

マッカーシーはある日、共産主義者たちがひそかに政府を支配し、政策を起案しているという「真実」を発見した。そのことが、共産主義者が政策決定に深く関与しているという事実が明らかにされない、メディアも報道しない理由だ。


日本であれば在日陰謀論でしょうか。
吉井理記「DHC またも「ヘイト声明」…なぜ差別者は「被害者」を装うのか」(2021年5月19日)
健康食品などの販売会社DHCの吉田嘉明会長がこんな声明を出した。

<NHKや朝日新聞や国会議員や弁護士や裁判官や官僚や、はたまた経団連の所属会員等日本の中枢を担っている人たちの大半が今やコリアン系で占められているのは、日本国にとって危険>

https://mainichi.jp/articles/20210519/k00/00m/040/095000c

② 安心したい欲求
人は不安を抱えていると安心を求める。

真鍋厚「コロナは陰謀」と信じる人々を生む深刻な病巣」(2020年8月12日)
陰謀論がはびこる背景には、身近な人間関係の消失によって生じる社会的孤立の問題がある。

「自分は社会から排除されている」
「自分は社会でふさわしいポジションを与えられていない」
このように感じている者ほど陰謀論にのめり込みやすい。

多様な社会関係から切り離され、安らげる場所がない者ほど、見知らぬ他者が提供する「刺激的な物語」や、現在の境遇を逆転させる「別様の現実」に傾倒しやすくなる。これは自尊心を守るためのいわば「適応の一形態」でもあるのだ。

https://toyokeizai.net/articles/-/368770


満されない思いを持つ人は承認欲求を強い。
物事がうまくいかない時、人のせいにできる陰謀論は便利です。

③ 優越感への欲求
優越感についてはすでに書いているので省略。

もう一つ、病的な妄想の場合もあると思います。
「陰謀論、家族引き裂く…SNSで傾倒 言動激化」(読売新聞2021年3月13日)
陰謀論を信じ込んだ家族や友人とどのように接したらいいのか。
「相手の話をバカにしない」
「科学的根拠を示しても逆効果になる」
「相手の心の奥にある不安や心配に耳を傾け、共感する姿勢を示す」
「否定したり事実を提示して説得したりするより、その人が信じる背景を理解する」
https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20210313-OYO1T50000/

陰謀論を信じて仕事を辞める、離婚するなど、人間関係の崩壊、社会生活の破綻が生じたなら妄想性障害かもしれません。

碓井真史「妄想を持つ人との付き合い方:困っている人々を助けるために」
https://news.yahoo.co.jp/byline/usuimafumi/20170711-00073171/

妄想性障害は、夫や妻が浮気をしている、近所の人が嫌がらせをしているなどの妄想を確信し、その妄想が長く持続する病気です。
「宇宙人にテレパシーで操られている」「悪霊の声がする」といった訴えなら、すぐに妄想だとわかりますが、妄想性障害の場合は幻覚、幻聴がなく、言っていることはあり得ることなので、当初は本当のことだと思います。
しかし、だんだんとつじつまが合わなくなり、おかしいと気づきます。

妄想性障害から陰謀論を信じる人もいるように思います。

コメント
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