三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

オウム真理教事件死刑囚の死刑執行(5)

2019年01月17日 | 死刑

中川智正さんと何度も面会したアンソニー・トゥー氏は『サリン事件死刑囚 中川智正との対話』に、中川智正さんのことをこのように評しています。

中川氏は死刑囚であるが、接触した人は皆「いい人」だと言う。私も同感で、運の尽きは麻原に会ったことである。もし彼が麻原に会っていなかったら、良いお医者さんになっていただろう。そう思うと残念である。

私もそう思います。

中川智正さんの俳句。

先知れぬ身なれど冬服買わんとす
証人として出廷することになった。スーツを買うよう現金を差し入れて下さった方があった。
「無駄だね」と友に笑えど医書残り
今もなお医学書を手元に置いている。


中川智正さんだけではなく、林泰男さん、端本悟さんたちも、本人を知っている人の話だと、すごくいい人だそうです。
死刑囚に限らず、犯罪を犯した人のほとんどはごく普通の人だと思います。
だからといって、いい人だから処刑すべきではないということではありません。
犯罪を犯すに至ったのか、その背景を考えるべきだと思います。

オウム真理教の場合は神秘体験が大きいです。
多くの犯罪者は、貧困、虐待、障害、アルコールや薬物などの要因があります。
恐怖も背景の一つです。

2018年12月12日、大阪府警は、傷害や恐喝未遂などの疑いで半グレ集団「アビスグループ」のメンバーの10~30代の男女49人を逮捕・送検したと発表しました。
ナンバー2は「リーダーの指示にそむけば集団リンチに遭う。やるしかなかった」と供述しているそうです。
https://www.asahi.com/articles/ASLDD535NLDDPTIL018.html
オウム真理教でも、地獄に落ちるという恐怖がありました。

また、教育も大きな要因です。
戦争において捕虜や民間人を拷問したり虐殺した兵士たちは、それはしてはいけないと教えられていたかどうか。
また、上官の命令には従わざるを得ませんでした。
麻原彰晃が最終解脱者であり、超能力を持っていると信じ込んでいる信者にとって、麻原彰晃の指示は絶対だったでしょう。

カエサルの言葉に「どんな悪い結果に終わったことでも、それがはじめられたそもそもの動機は、善意によるものであった」というものがあります。
麻原彰晃たちは救済のつもりだったのです。

また、夏目漱石『こゝろ』には「悪い人間という一種の人間が世の中にあると君は思っているのですか。そんな鋳型に入れたような悪人は世の中にある筈がありませんよ。平生はみんな善人なんです。少なくともみんな普通の人間なんです。それが、いざという間際に急に悪人に変わるんだから恐ろしいのです」とあります。
どんなにいい人であっても、さまざまな条件が組み合わされば何をするかわからない。
それが人間だと思います。

人間は、天使でも、獣でもない。そして、不幸なことには、天使のまねをしようとおもうと、獣になってしまう。 パスカル『パンセ』

コメント
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