三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

障害児殺しと青い芝の会(2)

2024年06月23日 | 日記
横塚晃一『母よ!殺すな』によると、1970年、母親が横浜で障害のある子供を殺した事件では、障害者本人、家族、福祉関係者からも母親への同情の声があったそうです。

脳性マヒ当事者の会である青い芝の会で、「殺した親の気持ちがよくわかり、母親がかわいそうだ」「施設がないから仕方ない」「あの子は重度だったらしいから生きているよりも死んだほうがよかった」などの意見が出された。
「殺した親に同情しなくてもよいのか。あなた達の言うことは母親を罪に突き落とそうとするものだ」という言葉も障害者の一人から出た。

新聞に掲載されたある女性の投稿。
私の妹は障害がもっとも重く施設にいる。私が週一、二回面会に行き、妹が年に一、二回帰宅するのを何よりの楽しみにしている。もし私が先に死んだら面倒をみる者がいなくなる。私は死ぬにも死ねない。自分は罪に問われてもいい。妹が一分でも先に死んでくれるのを望む。

ある福祉関係者は「数年前西ドイツでおきたサリドマイド児殺しにつき某女子大生にアンケートを求めたところ、ほとんどが殺しても仕方がない、罪ではないというように答えた」と語っていた。
「犬や猫を殺しても罪にならない。だから今度の場合も果たして罪と言えるのかどうか」と言った人もいる。

青い芝の会会員が意見書を神奈川県庁へ持って行き、県会議員などに手渡して意見を述べたが、「あなた方に母親の苦しみがわかるか」「母親をこれ以上ムチ打つべきではない」「施設が足りないのは事実ではないか」などと非難された。

青い芝の会の主張が報道されると、反発も大きかった。
新聞社への投書に「可哀そうなお母さんを罰すべきではない。君達がやっていることはお母さんを罪に突き落とすことだ。母親に同情しなくてもよいのか」などの意見があった。

横塚晃一さんによると、「今回私が会った人の中で、殺された重症児をかわいそうだと言った人は一人もいなかった」とのことです。

思うのが、親が障害児を殺すのはやむを得ないのか、そして施設があれば問題は解決するのかということです。

横浜の事件は特殊な事例ではありません。
1967年、歯科医が重症の息子を殺した事件があった。
施設がないための悲劇といったマスコミキャンペーンとともに、身障児を持つ親の会や全国重症心身障害児を守る会を中心として減刑嘆願運動が展開され、裁判の結果は無罪だった。
重症児をもつ母親が無罪の判決を「ほんとうによかった。他人ごとではない」と言っている。

1972年、76歳の父親が37歳の脳性マヒの息子を殺した。
妻が胃病で入院し、父親が一人で息子の世話をしていた。
あまりに可哀想な老父さんです。警察署の方々にお願い致します。どうかこの老い先みじかい老人のお父さんを無罪にしてあげて下さい。私も老い先みじかい老女です。悪意でやったことではありませんから、どうか、そのへんを寛大にお許ししてあげて下さい。お願い致します。亡くなられた息子さんも父親に涙を流して感謝しておられるでしょう。お願い致します。 一老女。

親への同情論は殺した親の側に立つものであり、障害者の存在は抜け落ちている。
それらは全て殺した者(健全者)の論理であり、障害者を殺しても当然ということがまかり通るならば我々もいつ殺されるかもしれない。我々は殺される側であることを認識しなければならない。

横田弘『障害者殺しの思想』に、障害者とゴジラなど怪獣は共通すると述べられています。
あの映画の中に出てくる怪獣たちの姿、動作から来るイメージは、障害者、特に私たち脳性マヒ者に非常に似通っている。そして、その障害者に似通っている怪獣たちが行うことと言えば、平和な、人びとがおだやかな暮らしを楽しんでいる街を、ある日、突然、何処からともなく沸きだして破壊しつくして人びとの生命まで危うくさせるというパターンが常である。
しかも、そうした人びとの生活全体を危機に追い込んで行った怪獣たちは、必ず最後には、人びとの強い味方であり、正義の使者である○○マンによって亡ぼされ、この地上から消滅させられてしまうのだ。
怪獣が障害者の隠喩なら、桃太郎が退治した鬼は社会に迷惑をかける存在だということになります。

一般社会人が、重症児を自分とは別の生物とみるか、自分の仲間である人間とみるか(その中に自分をみつけるのか)の分かれ目である。

殺された重症児を自分とは別世界の者と考えている。
というのも、子供が殺された場合、その子供に同情が集まるのが常である。
それは殺された子供の中に自分を見る、つまり自分が殺されたら大変だからである。

これを障害者(児)に対する差別と簡単には片付けられない。
これが障害者に対する偏見と差別意識だということはピンとこないのは、この差別意識が現代社会において余りにも常識化しているからである。

親が障害児を殺す事件でのマスコミのとりあげ方の基本は、障害児を抱えた家庭が不幸であり、親だけが同情されるべき存在として表現される。
1978年、横浜市で脳性マヒの長男(12歳)の前途を悲観した母親が息子の首を絞めて殺し、2日後に飛び降り自殺した。

この事件を報道した新聞には、生まれつき体が不自由な重度障害児だとある。
生まれたときから右手足が不自由で、言葉がほとんど話せず、精神年齢は幼児と同程度だったという。用便の世話から食事まで生活ではすべて母親のかよの助けが必要だった。食事どき、肉類などは、かよがかみ砕いて口移しに食べさせていた。

しかし、神奈川新聞によると全く異なる。
自分で歩くことも、しゃべることもでき、音楽好きな明るい子供で、小学部の最年長で下級生の面倒もよくみていた。
下校時には「サヨナラ」と先生方と握手するなど、学校の人気者であった。

横田弘さんは批判します。
被害者である勤君が脳性マヒという身体的障害を持っていたこと、そしてそれが、現在の社会体制の中では「悪」であり「不幸」であり、その「不幸」は死ぬこと(殺されること)によってのみ救われるという位置づけをもった存在であったこと、そうした「悪」であり「不幸」な存在である脳性マヒ児を産み出した存在として、日常的に社会から疎外の対象とされたかぞという、言わば現在の社会そのものから必然的に生じた事件なのである。

横田弘さんの言葉は父親も聞きとれず、住んでいる県営住宅の人たちは「私の言葉が聞きとれるとは思われない」。
脳性マヒ者は程度の差があっても、言語障害を伴うのがほとんどなのである。そして、その言語障害の結果、精神機能に何らかの障害があると思われがちなのだ。
『障害者殺しの思想』は横田弘さんの話を筆記したものです。

横田弘さんは言い切ります。
はっきり言おう。
障害者児は生きてはいけないのである。
障害者児は殺さなければならないのである。
そして、その加害者は自殺しなければならないのである。

原一男『さようならCP』に横田弘さんが出演しています
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障害児殺しと青い芝の会(1)

2024年06月14日 | 日記
成田悠輔さんの発言が国会でも問題になりました。
どうしたら今のこの高齢化とさまざまな人生のリスクを軽減できるだろうかということを考えて、たどり着いた結論は集団自決みたいなことをするのがいいんじゃないか、特に集団切腹みたいなものをするのがいいんじゃないかということです。(略)ここで僕たちが議論すべき大義はいわば高齢化して永遠と生き続けてしまうこの世の中をどう変えて社会保障などという問題について議論しなくてもいいような世界を作り出すかということだと思います。そのためにはかつて三島由紀夫がしたとおり、ある年齢で自らの命を絶ち、高齢化し老害化することを事前に予防するというのはいい筋ではないかと。
横に座っている古川俊治さん(自民党国会議員)は成田悠輔さんの発言に笑っています。

(10分5秒のところから)
同じ趣旨の発言は他のところでもしています。

三島由紀夫は45歳で死んでいます。
1985年生まれの成田悠輔さんは10年以内に死ぬつもりなのでしょう。

成田悠輔さんは障害者について語っていませんが、主張していることは太田典礼や植松聖死刑囚と同じ社会的弱者の抹殺です。

日本安楽死協会を設立した太田典礼は、戦前から産児調節運動を行い、衆議院議員として旧優生保護法の施行(1948年)に寄与しました。
植物人間は、人格のある人間だとは思ってません。無用の者は社会から消えるべきなんだ。社会の幸福、文明の進歩のために努力している人と、発展に貢献できる能力を持った人だけが優先性を持っているのであって、重症障害者やコウコツの老人から〈われわれを大事にしろ〉などと言われては、たまったものではない。(『週刊朝日』1972年10月27日号)
太田典礼は85歳で死亡しますが、安楽死ではありません。

もっとも、太田典礼や植松聖死刑囚のような考えは私の中にもあります。
石井裕也『月』は津久井やまゆり園事件をモデルにした映画です。
主人公は小説が書けなくなり、障害者の施設で働きます。
息子は先天性の心臓病で、胃瘻をし、寝たきりのまま3歳で死亡しました。
40過ぎで妊娠した主人公は障害を持った子供が生まれるのでは、と悩みます。

犯罪白書によると、殺人事件のうち家族間によるものは2019年で54・3%と、半数以上を占め、30年前から15ポイントも増えています。

家族が加害者という殺人事件には、介護疲れによる殺人、親子心中が含まれます。
介護を理由とした家族間での殺人は厚生労働省の統計によると年間20~30件起きています。
親子心中事件は毎年少なくとも30件以上起こり、40人以上の児童が親子心中によって死亡しています。
そのうち母子心中が65.1%を占めています。
多くは母親がウツ病だったり、子供に障害があって苦にしたりといったことがあります。

障害者や認知症の人たちが殺されるのはやむを得ないと思う人(裁判官や検察官も)が多いから、被告は情状酌量され、刑期が短かくなったり執行猶予がついたりすることがあります。

1970年、横浜で2人の障害児を持つ母親が下の女の子(当時2歳)をエプロンの紐でしめ殺した事件がありました。
横塚晃一『母よ!殺すな』、横田弘『障害者殺しの思想』に、この事件について詳しく書かれています。

事件が発生するや、マスコミは「またもや起きた悲劇、福祉政策の貧困が生んだ悲劇、施設さえあれば救える」などと書き立てた。
地元町内会や障害児をもつ親の団体が減刑嘆願運動を始めた。

神奈川県心身障害者父母の会が横浜市長に提出した抗議文。
施設もなく、家庭に対する療育指導もない。生存権を社会から否定されている障害児を殺すのは、やむを得ざるなり行きである、といえます。日夜泣きさけぶことしかできない子と親を放置してきた福祉行政の絶対的貧困に私たちは強く抗議するとともに、重症児対策のすみやかな確立を求めるものであります。

母親に同情が集まって減刑嘆願書が出される動きに、脳性マヒ当事者の会である青い芝の会は抗議しました。
横塚晃一さんと横田弘さんも青い芝の会の会員です。

横田弘さんはこう言います。
障害者は「殺されたほうが幸せ」という論理が、やがて、障害者は「本来あってはならない存在」という論理に変わり、そして、社会全体が障害者とその家庭を抹殺していく方向に向かって行く。

起訴までに1年1か月の時間を費やし、横浜地裁で公判が開かれるや、1か月で結審した。
起訴まで日時を費やした理由が「全国の施設の状況を調べ」ることにあった。
弁護側が情状酌量を主張するために行うのではなく、検察が起訴するか否かということで調査したという。

横浜地裁の判決は懲役2年執行猶予3年だった。
刑法に「人を殺したる者は死刑又は無期若しくは3年以上の懲役に処す」とあるのに、この裁判では検察の求刑は懲役2年だった。

横塚晃一さんはこう批判しています。
おざなりな裁判であった。検察側の被告を追及する態度がまるでなく、我々の提出した意見書、障害者としての体験文などを参考資料として裁判の席上にのせることを弁護側が拒否したのに対し、抵抗することなく従い、求刑に当たっては、殺人の場合、刑法上最低懲役3年なのに、懲役2年を求刑したことからも明らかである。
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でも今日でなくてもいい

2024年06月08日 | 日記
大内啓『医療現場は地獄の戦場だった!』に、エリザベス・ボービア裁判について書かれていました。

エリザベス・ボービアは先天性の重度の脳性四肢麻痺のため、顔や右手の数本の指を動かせるだけだった。
しかし、意思能力があり、会話や食事もできた。
右手で電動式の車いすを操作し、たばこを吸った。
結婚、妊娠するが流産する。
生計が苦しくなって父親に援助を求めたが、断られて離婚。
https://spitzibara.hatenablog.com/entry/66483624

エリザベス・ボービアは食事に吐き気を覚えるようになり、餓死するまでの疼痛緩和と必要な処置を病院に要望した。
しかし、栄養補給のための鼻腔チューブを挿入された。

28歳の時、餓死するためにチューブの撤去を求めて提訴した。
カリフォルニア州ロサンゼルス地区上位裁判所は棄却だったが、1986年、カリフォルニア州立控訴審裁判所は「意思能力があれば、ボービアは残りの人生を尊厳とともに平穏に生きる権利をもっている」と述べ、病院に経管栄養チューブを抜くように命じた。
その後、エリザベス・ボービアは治療を引き続き受け、経管栄養を続行すると決心した。

彼女は、経管栄養の中止と死ぬことをのぞんでいたわけではなく、自分の意思が尊重されることを望んでいた。もっと言えば、強制的に生かされることではなく、自分の意思で生きるという選択をすることを望んでいたということだろう。いや、裁判中に、気持ちが変わったのかもしれない。
エリザベス・ボービアは2008年の時点で生存が確認されているそうです。

ボストンの病院の救急医である大内啓さんは気管内挿管について書いています。
気管内挿管をして人工呼吸器につなぐ際、一回の挿管で成功する率は全米で97%。
しかも、65歳以上の高齢者の3分の1は、挿管後10日以内に死亡する。
2020年のコロナ死者のピーク時、ニューヨークでは挿管後の死亡率が8割以上だった。

抜管でき、退院できても、元のQOL(生活の質)には、よほどの例外を除いて戻れない。
杖を用いて歩いていた人は、車椅子が必要になる。
自分の力で車椅子を利用していた人は、押してもらわなければならなくなる。
ベッドの上で起き上がれた人が、起き上がれなくなる。
自発呼吸できた人が、呼吸器が必要になる。

私の経験では、弱りゆく人に、「呼吸器に繋がれないと息ができず、寝たきりの状態が、今後一生続くのであれば、あなたは死んだほうがマシだと思いますか」
と質問すると、50パーセント強の人が「死んだほうがマシです」と答え、50パーセント弱の人が「いいえ、生きているほうがいいです」と答える。

車にひかれて、いきなり寝たきりになったり、指ひとつ動かせず、しゃべることもできなくなったりしたら、「死んだほうがマシだ」と思うに違いない。
しかし、難病であるとか、がんであるとか、10年ほどかかって徐々にそういう状態になっていくなら、例外を除くと「死んだほうがマシだ」とは思わない。
なぜなら、不自由、苦しいと思う状態に少しずつ慣れていくからだ。
本人だけでなく、家族ら周りの人も少しずつ慣れていく。

その時は死にたいと思っても、時間とともに思いはだんだん変わるようです。
佐野洋子『今日でなくていい』にこんな話があります。
97歳の友達の母親が、「洋子さん、私もう充分に生きたわ。いつお迎えが来てもいい。でも今日でなくてもいい」と云ったっけ。
いつ死ぬかわからぬが、今は生きている。生きているうちは、生きていくより外ない。生きるって何だ。そうだ、明日アライさんちに行って、でっかい蕗の根を分けてもらいに行くことだ。それで来年でっかい蕗が芽を出すか出さないか心配することだ。そして、ちょっとでかい蕗のトウが出て来たらよろこぶことだ。いつ死んでもいい。でも今日でなくてもいいと思って生きるのかなあ。この日本で。
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エリザベス・ボービアもいつ死んでもいいけど、今日でなくていいと思っているのではないでしょうか。
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ポール・オフェット『反ワクチン運動の真実』(6)

2024年06月03日 | 問題のある考え
ポール・オフェット『反ワクチン運動の真実』にはクリスチャン・サイエンスについても書かれています。

クリスチャン・サイエンスはメアリー・ベイカー・エディが1879年に設立した。
信仰療法を説き、一切の医療を否定している。

神は完璧だから完璧な世界を作った、痛みなどは実際は存在しない。
病気は身体の症状ではなく精神によって起こるから、信仰によって病気は消える。
天然痘のような病気はワクチンではなく、祈りによって予防することができる。
メアリー・ベイカー・エディは著書に「我々が天然痘になるのは、他の人が天然痘になるからだが、それは物質ではなく精神が病気を取り込み運ぶのだ」と書いている。

科学の特徴は再現性と反証可能性です。
再現性とは、理論で予想されたこと、実験で得られた結果を、他の人がいつでもどこでも再現できることです。
たとえば、STAP細胞は世界中の科学者は再現できませんでした。

ウィキペディアによると、反証可能性とは、自らが誤っていることを確認するテストを考案し、実行することができるということです。
それに対し、宗教や疑似科学などは「自らが誤る可能性を認めない」「誤っているかを確認するテストを考案できない」「検証不可能な説明で言い逃れする」のが特徴だそうです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%8D%E8%A8%BC%E5%8F%AF%E8%83%BD%E6%80%A7

では、祈りで病気が治るのでしょうか。
ポール・オフィット『代替医療の光と闇』に祈りによる病気治療について書かれています。

自分のために家族が祈ってくれることを知っている患者は、回復率がわずかに高い。
祈ってもらっていることを患者が知らなければどうだろう。
こっそり祈ってくれる人がいることが患者の回復に効果あるなら、神の介入が示唆される。
しかし、研究では祈りには効果がなく、神の癒やしが行われる可能性はない。
信仰で病気が治るとしたら、これまたプラセボ効果なわけです。

百日咳、ジフテリア、麻疹などのワクチンは効果と安全性が検証されています。
手かざしによって病気が治ると説く宗教や代替医療があります。
どのようにしたら検証できるでしょうか。

左巻健男『陰謀論とニセ科学』にエミリー・ローザの実験が紹介されています。
1996年、アメリカのコロラド州ボールダー市(人口10万人ちょっと)に住むエミリー・ローザ(9歳)は小学校のサイエンス・フェスティバルという自由研究で、セラピューティック・タッチ(手かざし療法)を検証した。

セラピューティック・タッチはニューヨーク大学看護学部の名誉教授ドロレス・クリーガーが体系化したヒーリングの一種。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%BF%E3%83%83%E3%83%81

セラピューティック・タッチを習得したヒーラーは、患者の身体から少し離れたところに手をかざすとエネルギーの場を感じ取ることができ、その乱れを整えることで治療ができると主張している。

エミリー・ローザの呼びかけで、エネルギーの場が実在するかを検証する実験にボールダー市で開業する21人のセラピューティック・タッチのヒーラーが集まった。
ドロレス・クリーガーにも参加を呼びかけたが、時間がないとして断られた。
https://asios.org/rosa

1996年にジェイムズ・ランディがセラピューティック・タッチの検証実験を企画し、74万2千ドルの賞金を懸けた時は、60以上の団体や個人に申し込んだが、返答があったのは1人だけで、その1人は実験をクリアできなかった。

エミリー・ローザの実験は次のような手順で行われた。(材料費は10ドル)
① エミリーがヒーラーと1対1で向かい合って座る。
② テーブルにはダンボールで作った衝立を用意した。衝立にはヒーラーの左右の腕を通せるように2つの穴が開いている。穴から向こう側が見えないように布が被せられている。
③ ヒーラーは穴に手を通し、手のひらを上に向ける。
④ エミリーはヒーラーの左右どちらかの手の少し離れたところに手をかざす。左右どちらにするかは毎回コイン投げをして決める。
⑤ ヒーラーは左右どちらにエミリーの手があるのか、エネルギーの場を感じ取って当てる。
⑥ 実験の一部始終はビデオで録画する。

テストは280回行われ、当てられたのは123回、正答率は44%だった。
偶然でも半分は当たるはずなのに、それを下回る結果に終わった。

手かざしで病気が治ると主張する教団はエミリー・ローザが考案した実験を公開でしたらどうでしょうか。
信者が増えると思います。

セラピューティック・タッチやレイキは宗教ではありませんが、再現性と反証可能性に問題があるようです。
ホメオパシーやカイロプラクティックといった代替医療は一種の宗教じゃないかと思います。
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ポール・オフェット『反ワクチン運動の真実』(5)

2024年05月20日 | 問題のある考え
ポール・オフェット『反ワクチン運動の真実』によると、反ワクチン運動の源流は19世紀の種痘反対運動です。

種痘反対勢力にイングランド政府は妥協し、1898年に良心的拒否法を通過させた。
種痘を受けさせたくない親は受けさせなくてよくなった。
イングランドの種痘の接種率は急落し、天然痘感染と死亡の中心となった。
19世紀、イングランドの親たちは、種痘は純粋でも安全でもなく、自然や神に反する行為だと論じた。だが親の怒りは医師よりは政府の役人に向かった。役人は自分たちに指図する権利もないし、子どもに何を接種すべきか指図する権利などないと考えたからだ。抗議運動の参加者にとって、法定予防接種は許容しがたい自由権の侵害だった。

現代のアメリカも、行政はワクチン接種で妥協し、親の宗教、思想を理由として子供にワクチンを受けさせなくてもよくなっています。

1960年代末から1970年代にかけて、アメリカ疾病管理予防センターは小学校の入学条件として麻疹ワクチン接種を要件とし、1981年までに全ての州で入学に予防接種を義務づけた。
ところがワクチンの強制に反発する親が訴訟を起こした。

1966年、ニューヨーク州議会で入学にポリオワクチンの接種を必要とするという法案が議会を通過したが、親の宗教がワクチンを禁じている場合は免除した。
これはクリスチャン・サイエンスの陳情活動の結果だった。

アメリカではすべての州がワクチンの予防接種を受けないという宗教的免除を認めている。
さらには、2010年までに21の州が予防接種の思想的免除を許している。

クリスチャン・サイエンスはメアリー・ベイカー・エディが1879年に設立した。
信仰療法を説き、一切の医療を否定している。
神は完璧だから完璧な世界を作った、痛みなどは実際は存在しない。
病気は身体の症状ではなく精神によって起こるから、信仰によって病気は消える。
天然痘のような病気はワクチンではなく、祈りによって予防することができる。

メアリー・ベイカー・エディは著書に「我々が天然痘になるのは、他の人が天然痘になるからだが、それは物質ではなく精神が病気を取り込み運ぶのだ」と書いている。

クリスチャン・サイエンスの信者による医療ネグレクトによって死ぬ子供たちがいる。
糖尿病の子供にインスリンをやめさせて死亡させる。
定期検診のレントゲン撮影をしない。
高熱を出した子供に治療師が「神様は病気をお作りにならなかったので、病気は幻なのよ」と言う。
過失致死などで訴えても、不起訴、もしくは無罪判決になる。

信者の子どもたちに麻疹やポリオの流行が起きている。
1972年、クリスチャン・サイエンスの高校でポリオの流行が起き、11人の子どもが身体麻痺となった。
1985年、クリスチャン・サイエンスのプリンシピア大学で3人の学生が麻疹で死亡した。

ブルース・クック『トランボ』は、脚本家であり、赤狩りで刑務所に入ったドルトン・トランボの伝記です。
ドルトン・トランボの母親はクリスチャン・サイエンスの信者だったので、ドルトン・トランボたち子供は予防接種を受けなかった。
俺が言いたいのは、こうした信者たちは罪悪感を抱くことなく行動しているということなんだ。恐れをまったく感じることなく正義を追求している。宗教としてのクリスチャン・サイエンスに対する見解じゃないといわれるかもしれないが、メソジスト派やバプテスト派だけでなくて、どんな宗派についても同じようなことがいえるのだから。ただ、ひとつだけいえるのは、彼らは恐れを知らない心を持っているってことだ。

ウォーターゲート事件に関わったH・R・ハルデマン、ジョン・アーリックマンはクリスチャン・サイエンスの信者であり、ジョン・ディーン、エジル・クローはクリスチャン・サイエンスの大学であるプリンシピア大学の卒業生だった。
クリスチャン・サイエンスは信者数を公表していませんが、かなりの人数ではないかと思います。

クリスチャン・サイエンス・モニターという新聞は、クリスチャン・サイエンスの創始者メリー・ベーカー・エディによって創刊されています。
櫻井よしこさんは「ジャーナリズムの仕事に関心を持ったのは、アメリカの「クリス
チャン・サイエンス・モニター」という新聞の東京支局で助手の職を得てからのことでした」と語っています。
https://www.business-plus.net/special/1404/638001.shtml

ワクチンを否定する団体は他にもあります。
シュタイナー教育のルドルフ・シュタイナーは「予防接種はカルマの発達と輪廻転生のサイクルを妨げる」と考えた。
シュタイナーは神秘思想家、オカルティストでもあるので、やっぱりそうかと思いました。
シュタイナー教育を実践している学校もワクチンに反対しているのでしょうか。

カイロプラクティックはダニエル・D・パルマーが1895年に始めた。
背骨のずれが病気の原因だと考えるカイロプラクティックは細菌説を根拠がないと主張し、ワクチンの危険を説く。

創始者の息子バートレット・ジョシュア・パーマーはこんなことを言っている。
カイロプロクターは全ての伝染病と言われてきたものは背骨に原因があることを発見した。もし100人の天然痘患者がいたら、一人の患者のどこにサプトラクション(背骨のずれ)があるのかを見出し、他の99人の状態も同じであることを証明しよう。背骨を調整し、身体の機能が正常になる。伝染病などない。感染もないのだ。

日本カイロプラクターズ協会のHPを見ると、世界には約10万人のカイロプラクターがいて、日本には608人だそうです。
https://jac-chiro.org/aboutchiro/
会員数12000名規模のカイロプラクティック団体も日本にあります。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000093169.html
背骨の矯正であらゆる病気が治るんだったら、病人はいなくなるはずですが。

新型コロナウイルス感染防止のためにマスクをすることになぜ反対するのかと不思議に思っていましたが、強制を嫌うだけでなく、宗教的信念があるのかもしれません。
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ポール・オフェット『反ワクチン運動の真実』(4)

2024年05月15日 | 問題のある考え
モーリス・ヒルマンはおたふくかぜ、麻疹、風疹、水疱瘡、B型肝炎。MMRワクチンなど多くのワクチンを作りました。
子供たちの命を救った研究者がいれば、ワクチンを否定する医師や研究者、弁護士たちもいます。

モーリス・ヒルマンの伝記『恐ろしい感染症からたくさんの命を救った現代ワクチンの父の物語』を書いたポール・オフェットは『反ワクチン運動の真実』で彼らを告発します。

新型コロナウイルス陰謀論を拡散し、ワクチン接種に反対した弁護士のロバート・ケネディ・ジュニアは以前から反ワクチンの活動家でした。
2005年にロバート・ケネディ・ジュニアは製薬会社と医師と公衆衛生当局が共謀してワクチンの危険性を隠していると非難した。
https://jphma.org/topics/topics_47_Kennedy_Report.html

さらに、麻疹ワクチンを開発したジョン・エンダース研究班の一人サム・カッツをワクチンで金儲けしたと非難した。
ジョン・エンダースはワクチンでの特許取得には反対していたので、麻疹ワクチンでも特許は取っていない。

トランプは自閉症のワクチン原因説を支持しています。
https://gendai.media/articles/-/57708?page=3
2024年の大統領選挙にワクチン反対派が2人も立候補するわけです。

「ワクチン・ルーレット」を見て、自分の子供がDTPワクチンによって障害を負ったと信じたバーバラ・ロー・フィッシャーたちは「納得できない親の集い」を立ち上げ、政治にも大きな影響力を持つようになった。
バーバラ・ロー・フィッシャーはあらゆるワクチンに反対する。

共著で出版した『闇の注射 なぜDTPワクチンのPがあなたの子どもの健康を脅かすかもしれないのか』でこう主張している。
アメリカの赤ちゃんたちが打たなくてはいけないワクチンが増えるにつれ、大きな子どもや若者が慢性の免疫病や神経障害になるという報告が増えてきている。喘息、慢性の中耳炎、自閉症、学習障害、注意欠陥障害、糖尿病、関節リウマチ、多発性硬化症、慢性疲労症候群、全身性エリテマトーデス、ガンなどもそうだ。

ワクチンで予防できる病気は実際にはそんなに深刻なものではないとも論じる。
私たちは病気がひどく恐ろしいと思い込んでしまっているのです。1950年代、誰もが麻疹とおたふく風邪にかかっていました。普通の何でもない出来事でした。
ワクチン開発以前は、アメリカでは麻疹で毎年10万人以上が入院し、500人が死亡していた。

インフルエンザについてブログに書いている。
インフルエンザを含む感染症を経験することは、人類の祖先が地球に登場して以来、人間の状態の一部でした。(略)
なぜワクチン学者は人間の免疫システムがその経験を乗り越えられない、益を受けないと考えるべきだと言い張るのでしょう。一度もインフルエンザにかからない方が良いというエビデンスはどこにあるのでしょう。
子供たちがインフルエンザの定期接種をする前は、毎年10万人が入院し、100人が死亡していた。

バーバラ・ロー・フィッシャーがワクチン接種で健康被害が起こると話すことで、子どもの病気の責任という重荷を親たちの肩の上に乗せた。

てんかんと知的障害の本当の原因を突き止めたサミュエル・ベルコビッチのコメント。
ほとんどの親はずっと罪の意識を感じていたので、もう感謝でいっぱいでした。親たちは医者や母子保健専門看護師のところへ行って、子どもを彼らに渡してワクチンを打ってもらっていました。自分たちのせいだと、近所の「ワクチンを打ったらダメよ」という女性の言うことを聞いていれば、子どもは健康だったのにと思っていたのです。そして、我々がそうじゃない、あなたのお子さんは妊娠中にナトリウムチャネルに異常が起きて、それを防ぐ手立てはなかった、こうなる運命だったのだというと、大きな大きな重荷を下ろしたように見えました。何十年も続いた罪悪感から解放されたのです。

反ワクチン活動家は自分たちは安全なワクチンを望んでいると主張する。
だが、反ワクチン運動家のいう安全は自閉症、学習障害、注意欠陥障害、多発性硬化症、糖尿病、脳卒中、心臓発作、血栓、麻痺などの副作用がないというものだ。

これらはワクチンが原因ではないので、彼らのいう安全なワクチンは実現不可能だ。
たとえば、自閉症スペクトラムだと、脳の神経細胞表面のタンパク質を分子と結びつけている遺伝子に異常がある。

ワクチン裁判で負けたのは原告側の研究者、医師や弁護士ではない。
医師は自閉症児の治療を続け、危険性のある療法を行い、サプリを売り続ける。
たとえば、自閉症はチメロサール入りのワクチンが原因だから、体内の水銀や鉛などの重金属を排出させるキレーション療法。

弁護士は訴訟をし続け、勝とうが負けようが報酬は受け取る。
ある法律事務所はワクチン法廷に216万1564ドル10セントの請求書を提出した。
1980年代の百日咳ワクチン恐怖のときには、数百万ドルが補償金や和解金として支払われた。その結果、反ワクチン組織は人身被害弁護士と結託して活動するようになった。弁護士の多くは顧問委員会の一員となってワクチンの危険性を訴え、どう補償金を勝ち取るかを説明する小冊子を作る手助けをしている。

裁判に負けたのは医師と弁護士によって誤った道へ導かれ、自閉症の子どもを育てる負担から解放されたいと思った親たちだ。
ワクチンについて親を脅えさせ、反ワクチン運動活動家と結んでいる人身被害弁護士に金づるを与え、多くの場合、直接自分の診療所で偽りの希望を売る医師の待ち構える腕の中に親を追い込むのだ。

小児科医ラフル・パリク。
強く感情を揺さぶるアピールをして、親たちに子どもに予防接種をすることについて迷い、躊躇させてしまう。論理的に考える人もそうでない人も、こうした感情的な手法は忘れない。一方、医療、科学専門家は正確な証拠と研究を引いて対抗するが、これは多くの親には響かない。感情的ではないメッセージは印象に残りにくいのだ。

國枝すみれ「日本でも陰謀論が再燃?」(毎日新聞2024年5月10日)によると、反ワクチンが陰謀論と結びつき、トランプ、親ロシア、さらには極右がそれらを取り入れて規模を拡大しているそうです。
陰謀論者と反ワクチン派は全く同じグループではないが、かなり重なっている。(略)
いま盛り上がっているのは世界保健機関のパンデミック条約だ。
4月13日に東京・東池袋で行われた反パンデミック条約デモには数千人が集まった。
主催者は「英霊の名誉を守り顕彰する会」の会長で、バリバリの右派。昨年は、反米親露の立場からウクライナに平和を求めるデモを、「米国の内政干渉が日本の伝統文化を壊す」という理由からLGBT法案反対デモを主催している。
https://mainichi.jp/articles/20240509/k00/00m/030/091000c

反ワクチン運動はワクチンだけの問題ではなく、陰謀論や極右とも関係しているとなると、何とも困った話になってしまいます。
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ポール・オフェット『反ワクチン運動の真実』(3)

2024年05月09日 | 問題のある考え
モーリス・ヒルマン(1919年~2005年)はおたふくかぜ、麻疹、風疹、水疱瘡、B型肝炎。MMRワクチンなど多くのワクチンを作りました。
子供たちの命を救った研究者がいれば、ワクチンを否定する医師や研究者、弁護士たちもいます。

モーリス・ヒルマンの伝記『恐ろしい感染症からたくさんの命を救った現代ワクチンの父の物語』を書いたポール・オフェットは『反ワクチン運動の真実』で彼らを実名で告発しています。

新型コロナウイルス陰謀論を拡散し、ワクチン接種に反対した弁護士のロバート・ケネディ・ジュニアは以前から反ワクチンの活動家でした。
2005年にロバート・ケネディ・ジュニアは製薬会社と医師と公衆衛生当局が共謀してワクチンの危険性を隠していると非難した。
https://jphma.org/topics/topics_47_Kennedy_Report.html

さらに、麻疹ワクチンを開発したジョン・エンダース研究班の一人サム・カッツをワクチンで金儲けしたと非難した。
ジョン・エンダースはワクチンでの特許取得には反対していたので、麻疹ワクチンでも特許は取っていない。

トランプは自閉症のワクチン原因説を支持しています。
https://gendai.media/articles/-/57708?page=3
2024年の大統領選挙にワクチン反対派が2人も立候補するわけです。

「ワクチン・ルーレット」を見て、自分の子供がDTPワクチンによって障害を負ったと信じたバーバラ・ロー・フィッシャーたちは「納得できない親の集い」(後に名称を「全米ワクチン情報センター」に変更)を立ち上げた。
百日咳ワクチンで自閉症になると最初に主張した一人であるバーバラ・ロー・フィッシャーはあらゆるワクチンに反対する。

共著で出版した『闇の注射 なぜDTPワクチンのPがあなたの子どもの健康を脅かすかもしれないのか』でこう主張している。
アメリカの赤ちゃんたちが打たなくてはいけないワクチンが増えるにつれ、大きな子どもや若者が慢性の免疫病や神経障害になるという報告が増えてきている。喘息、慢性の中耳炎、自閉症、学習障害、注意欠陥障害、糖尿病、関節リウマチ、多発性硬化症、慢性疲労症候群、全身性エリテマトーデス、ガンなどもそうだ。

ワクチンで予防できる病気は実際にはそんなに深刻なものではないとも論じる。
私たちは病気がひどく恐ろしいと思い込んでしまっているのです。1950年代、誰もが麻疹とおたふく風邪にかかっていました。普通の何でもない出来事でした。
ワクチン開発以前は、アメリカでは麻疹で毎年10万人以上が入院し、500人が死亡していた。

バーバラ・ロー・フィッシャーはブログに書いている。
インフルエンザを含む感染症を経験することは、人類の祖先が地球に登場して以来、人間の状態の一部でした。(略)
なぜワクチン学者は人間の免疫システムがその経験を乗り越えられない、益を受けないと考えるべきだと言い張るのでしょう。一度もインフルエンザにかからない方が良いというエビデンスはどこにあるのでしょう。
子供たちがインフルエンザの定期接種をする前は、毎年10万人が入院し、100人が死亡していた。

バーバラ・ロー・フィッシャーがワクチン接種で健康被害が起こると話すことで、子どもの病気の責任という重荷を親たちの肩の上に乗せた。
てんかんと知的障害の本当の原因を突き止めたサミュエル・ベルコビッチのコメント。
ほとんどの親はずっと罪の意識を感じていたので、もう感謝でいっぱいでした。親たちは医者や母子保健専門看護師のところへ行って、子どもを彼らに渡してワクチンを打ってもらっていました。自分たちのせいだと、近所の「ワクチンを打ったらダメよ」という女性の言うことを聞いていれば、子どもは健康だったのにと思っていたのです。そして、我々がそうじゃない、あなたのお子さんは妊娠中にナトリウムチャネルに異常が起きて、それを防ぐ手立てはなかった、こうなる運命だったのだというと、大きな大きな重荷を下ろしたように見えました。何十年も続いた罪悪感から解放されたのです。

反ワクチン活動家は自分たちは反ワクチンではない、安全なワクチンを望んでいると主張する。
だが、反ワクチン運動家のいう安全は自閉症、学習障害、注意欠陥障害、多発性硬化症、糖尿病、脳卒中、心臓発作、血栓、麻痺などの副作用がないというものだ。

これらはワクチンが原因ではないので、彼らのいう安全なワクチンは実現不可能だ。
たとえば、自閉症スペクトラムだと、脳の神経細胞表面のタンパク質を分子と結びつけている遺伝子に異常がある。

ワクチン裁判で負けたのは原告側の研究者、医師や弁護士ではない。
医師は自閉症児の治療を続け、危険性のある療法を行い、サプリを売り続ける。
たとえば、自閉症はチメロサール入りのワクチンが原因だから、体内の水銀や鉛などの重金属を排出させるキレーション療法。

弁護士は訴訟をし続け、勝とうが負けようが報酬は受け取る。
ある法律事務所は、ワクチン法廷に216万1564ドル10セントの請求書を提出した。
1980年代の百日咳ワクチン恐怖のときには、数百万ドルが補償金や和解金として支払われた。その結果、反ワクチン組織は人身被害弁護士と結託して活動するようになった。弁護士の多くは顧問委員会の一員となってワクチンの危険性を訴え、どう補償金を勝ち取るかを説明する小冊子を作る手助けをしている。

負けたのは医師と弁護士に誤った道へ導かれ、自閉症の子どもを育てる経済的な負担から解放されたいと思った親たちだ。
ワクチンについて親を脅えさせ、反ワクチン運動活動家と結んでいる人身被害弁護士に金づるを与え、多くの場合、直接自分の診療所で偽りの希望を売る医師の待ち構える腕の中に親を追い込むのだ。

小児科医のラフル・パリク
強く感情を揺さぶるアピールをして、親たちに子どもに予防接種をすることについて迷い、躊躇させてしまう。論理的に考える人もそうでない人も、こうした感情的な手法は忘れない。一方、医療、科学専門家は正確な証拠と研究を引いて対抗するが、これは多くの親には響かない。感情的ではないメッセージは印象に残りにくいのだ。

日本でも、ワクチンは効かないとか有害だなどいう主張を信じる人たちがいます。
人間は弱いものだと、あらためて教えられます。
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ポール・オフェット『反ワクチン運動の真実』(2)

2024年05月06日 | 問題のある考え
ワクチンによって子供の命が助かるようになったんから、親はワクチンを信用していいはずです。
ところが、ポール・オフェット『反ワクチン運動の真実』によると、子供にワクチンを打たないという選択をする親が増えており、防げるはずの感染症のアウトブレイクが起き始めています。

テレビの司会者、俳優、コメディアン、記者、議員、研究者、医師、弁護士たちが、ワクチンによって自閉症、糖尿病、多発性硬化症、注意欠陥障害、学習障害、知的障害、発達障害などになると脅し、それを信じた親がワクチンを拒む。
大卒か大学院卒の上層中産階級で、情報化社会で自分もインターネットを使えば専門家になれると思い、自分の健康については自分で決めると考える親たちだ。

1973年、イギリスで小児神経科医のジョン・ウィルソンはロンドン王立医学協会で、百日咳ワクチンは脳に損傷を与え、健康被害を引き起すと発表した。
その半年後、ジョン・ウィルソンはテレビに出演して、百日咳ワクチンが生涯にわたる健康被害を引き起こすと語った。

1972年にイギリスの子供の79%が百日咳ワクチンの予防接種を受けていたが、1977年には31%に減った。
ある調査では、47%の一般医が自分の患者に百日咳ワクチンを勧めないと答えた。
その結果、10万人以上の子供が百日咳にかかり、36人が死亡した。

日本でも1975年に厚生省が百日咳ワクチンの接種を一時停止したため、それ以前の3年間に400件の百日咳感染が起こり、10名が死亡したが、ワクチン中止後の3年間で百日咳の感染は1万3000件となり、113名が死亡した。

イギリス保健省は百日咳ワクチンのリスク調査をデイビッド・ミラーに依頼した。
調査チームは1976年から1979年にかけて調べ、DTPワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風の三種混合ワクチン)を3回接種した子どもの1万人に1人が永久的な脳損傷を起こしていると報告した。

1982年、アメリカで「DTP ワクチン・ルーレット」というテレビ番組が、百日咳のワクチンのために子供が自閉症、知的障害、てんかんなどになり、死亡する子供もいると主張した。

人身被害を専門にする弁護士たちは、ワクチンによって子どもが被害を受けたと信じている親に、正義の裁きと賠償を受けるように促した。
「ワクチン・ルーレット」が放映される1年前の1981年にワクチン製造会社を相手取った訴訟は3件だったが、1986年には255件となった。
原告が求める金額の総額は、1981年の2500万ドルから1985年には32億ドルに増えた。

製薬会社はワクチンの値段を上げ、そしてワクチン製造から撤退した。
1960年に7社がDTPワクチンを製造していたが、1986年には製造供給する会社がなくなった。
麻疹ワクチンを製造する会社も6社から1社に、ポリオワクチンは3社から1社になった。

1986年、アメリカで小児予防接種被害法が成立した。
ワクチン被害を訴える人が訴訟を経ることなく補償金を受け取ることができる、製薬会社を訴訟から守る、ワクチンの研究と製造を続けるよう助成することが目的だった。

1988年、DTPワクチンによって子供が知的障害になったとして損害賠償を請求した訴訟で、イギリスの法廷はジョン・ウィルソンの論文やデイビッド・ミラーの研究の誤りを指摘し、百日咳ワクチンが乳幼児に永続的な脳損傷を引き起こす可能性を否定した。

1989年にイギリス小児科学会とカナダ国立予防接種勧告委員会は、百日咳ワクチンが永続的障害を引き起こすという証拠はないという結論を出した。
1991年、アメリカ科学アカデミーの医学研究所が百日咳ワクチンと脳損傷の関係は証明されていないと結論を出した。

「ワクチン・ルーレット」が放映されてから現在までに、百日咳ワクチンで脳損傷も乳幼児突然死症候群も起こらないことがはっきりした。
つまり、百日咳ワクチンによって脳損傷を起こすという「ワクチン・ルーレット」の主張はでたらめだったわけです。

ところが、その後もワクチンによる健康被害が主張されています。
1998年、MMRワクチン(麻疹・風疹・おたふく風邪の混合ワクチン)を打つと自閉症などになるというアンドルー・ウェイクフィールドの論文が医学誌「ランセット」に掲載された。

アンドルー・ウェイクフィールドがMMRで自閉症になると仮設を提示した1年後の1999年、ワクチンに含まれるチメロサール(エチル水銀に由来する防腐剤)が原因で自閉症になると考える団体が現れた。

チメロサール入りワクチンを受けた子と受けなかった子の自閉症リスクを検証する大規模な疫学研究が行われ、結果はチメロサールでは自閉症にならないという結論だった。
ところが、自閉症児の親と弁護士が損害賠償の裁判を起こそうとした。

ワクチン健康被害補償制度(VICP)は数年にわたって5000件を超えるワクチンが子どもを自閉症にしたと主張する親たちの訴えを検討してきた。
5000人の子どもへの補償金のコストは45億ドルに達する。

総括的自閉症訴訟と命名された裁判では、2つの仮説が問題になった。
・MMRとワクチンの中のチメロサールの組み合わせが自閉症を引き起こすというもの。
・チメロサールだけが原因だというもの。

2009年、VICPの特別主事はMMRワクチン+チメロサールを含むワクチンが自閉症を起こすという主張を退けた。
2010年、特別主事はチメロサール自閉症原因説は科学的に認めがたいと裁定した。

アンドルー・ウェイクフィールドの論文に取り上げられた8人の子どものうち、5人の両親がMMRワクチンが自閉症を起こしたと製薬会社を訴えるところだった。
2010年、アンドルー・ウェイクフィールドは子どもたちを代表して薬害訴訟を計画する弁護士から44万ポンド(約80万ドル)をもらって論文を作成したこと、証拠の捏造や改竄などをしたため、イギリスでの医師免許を剥奪され、イギリスで医師としての診療活動は不可能になった。
しかし、アンドルー・ウェイクフィールドはその後も反ワクチンの人たちからは政府や製薬会社に立ち向かった英雄扱いされている。

HPV(ヒトパピローマウイルス)は子宮頸ガン、頭部、頸部、肛門、性器のガンの共通する唯一の原因であり、ワクチンはこうしたガンの85%を防ぐ。
反ワクチン運動家がHPVワクチンで、脳卒中、血栓、心臓発作、麻痺、痙攣発作、慢性疲労症候群を起こすと主張した。

2013年、厚労省は副作用を恐れ、HPVワクチンの定期接種勧奨を差し控えた。
しかし、HPVワクチンは認可後に百万人以上を対象にして調査が行われ、主張されているような病気は起こっていない。
毎年約1万人の女性が子宮頸ガンにかかり、約3000人が死亡している。

『反ワクチン運動の真実』の日本語版は2018年発行なので、新型コロナウイルスワクチンについては触れていませんが、反ワクチン信奉者の主張は同じものです。
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ポール・オフェット『反ワクチン運動の真実』(1)

2024年04月29日 | 問題のある考え
麻疹(はしか)の感染者が増えています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240312/k10014388191000.html
ヨーロッパでは百日咳が流行しているそうです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/41ade315148a70ca32da31dd76e859552ef68da6
ワクチンの接種率が低下しているからです。

代替医療の治療師は有害な治療法やサプリを勧める一方、ワクチンや抗がん剤といった効果が検証されている治療を否定し、それらを使う医師を非難さえします。

知人がフェイスブックでシェアしている記事に「日本のがん治療の総本山【国立がんセンター】が抗癌がん剤が効かないことを認めた」と書かれていました。
https://dailyrootsfinder.com/gan-center/

まさかと思って検索したら、産経新聞(2017年4月27日)の見出しは「抗がん剤、高齢患者への効果少なく 肺がん・大腸がん・乳がんの末期は治療の有無で生存率「同程度」」です。
記事を読むと、ガンの種類によっては「末期(ステージ4)の高齢患者」には「明確な効果を示さない可能性がある」のであって、抗ガン剤はあらゆるガンに「効かない」とは書かれていません。
https://www.sankei.com/article/20170427-D6AE3ZZEDZIKLKQ5VOLLDKCPBI/

また、「厚生労働省は毎年35万人癌でなくなっていると発表しているが、80%の28万人は癌ではなくて、抗癌剤の他の副作用によって亡くなっている」というのもウソ。
厚労省のHPには「化学療法を受けた患者さん784名のうち、18名、2.3%が抗がん剤による副作用により死亡したと考えられております」とあります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001vp67.html

このサイトに「遠隔浄化(ヒーリング)を通じて、本当の自分になる。自由になる。情熱的に生きる。思考が現実化する」とあります。
知人がこんなのを信じているのかと驚きました。

新型コロナウイルスのワクチンを打たないと言ってた知り合いがいます。
ワクチンを打てば5年以内に死ぬとか、不妊症になるといったデマを信じてたわけではないでしょうけど。

ポール・オフィット『反ワクチン運動の真実』によると、反ワクチン運動は1850年代に種痘とともに始まったそうです。
現代の反ワクチン運動のすべての特徴、スローガン、メッセージ、影響までも過去の運動にルーツを持っている。

1867年、法廷予防接種法がイングランド議会を通過した。
この法律が反ワクチン運動を発生させた。
1866年に反法廷予防接種連盟が設立された。

種痘で牛のようになる、白人の子どもが黒人になる、種痘が原因の死者は天然痘の死者より多い、種痘でジフテリアやポリオになるなど。
反種痘活動家は、種痘は反キリスト教的で、悪魔崇拝の一種で、子どもを反キリストに変えると説いた。
役人は自分たちに指図する権利もないし、子どもに何を接種すべきか指図する権利などないと考えた親の怒りは政府に向かった。

1810年から1820年の間に種痘のおかげで天然痘の死者は半減したにもかかわらず、1900年までにはイギリスでは200の反種痘連盟が作られた。
なぜ種痘に反対したのでしょうか。

ワクチンのおかげで多くの病気は完全に、あるいはほとんど消え去った。
予防接種が始まる前、ヒブ感染症で毎年2万人の子供が髄膜炎、血流感染、肺炎になり、1000人が死亡し、生き残った子供たちには深刻な脳障害が残った。

百日咳は1940年代にワクチンが使われる以前は、アメリカで毎年30万人が感染発症し、7000人が死亡していた。
近年はワクチンのおかげで死亡する子供は30人以下。

麻疹ワクチンが1963年に使われる以前は、アメリカの子供は毎年400万人が麻疹にかかり、500人が死亡していた。

ジフテリアで1万2000人が死亡。
2万人の赤ちゃんが風疹のために障害を持って生まれた。
ポリオで1万5000人が身体マヒになり、1000人が死亡していた。
B型肝炎ワクチンが認可されるまで、アメリカでは毎年20万人が感染し、そのほとんどが10代、20代だった。

「unicef news」vol.281(2024年春)に「子どもの命と未来を守るため ユニセフの予防接種活動」という記事があります。

天然痘は1950年代に2千万人が罹患し、400万人が死亡したが、1980年に絶滅が宣言された。
1990年に年間1250万人だった世界の5歳児未満の死亡数は、2021年には500万人に減少したことに、ワクチンの開発と普及が大きく貢献した。

ところが、新型コロナウイルスの世界的大流行により、多くの国と地域で子どもの定期予防接種が中断し、2019年から2021年にかけて、6700万人の子どもが予防接種を完全に、または部分的に受けられなかったと推定される。

ポリオは2019年から2021年までの3年間をその直前の3年間と比較すると、ポリオによって麻痺を生じた子供の数は8倍に増加。
10年以上感染者が出ていなかった国々で症例が相次いでいる。

はしかも過去2年間で発生件数が2倍以上に増えた。
2023年には30か国以上で流行した。
https://unicefnews.jp/feature/immunization2024/

それなのに、『反ワクチン運動の真実』によると、反ワクチン運動は今も活発です。

数年前、パキスタンで、ポリオの予防接種を受けた子どもたちが病気になったという偽の動画がソーシャルメディアで広がり、数百万人の子どもたちに予防接種をおこなう全国規模の長年の取り組みが頓挫したと、「unicef news」vol.281にありました。
反ワクチン運動は殺人や傷害と変わらないと思います。
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代替医療(3)

2024年04月20日 | 問題のある考え
 ⑧ 代替医療の3つの中心原理
・自然
代替医療の信奉者は、通常医療では許容できない副作用がある人工的な薬を出すが、代替医療は自然の薬を出すと説く。
代替療法の薬(レメディなど)は自然のもので作られているから副作用もなく安全だ思っている人がいる。

自然だからいいとは限らないし、自然ではないから悪いともいえない。
自然界にはヒ素、コブラの毒、放射性元素、地震、エボラ・ウイルスなど有害なものが存在する。
ワクチン、眼鏡、人工股関節などは人間が作ったものだが有用である。

ジョー・シュワルツ「物質の性質は分子構造によって決まります。由来ではありません。効果と安全性を評価する場合、物質が人工的に合成されたか、天然かは全く関係ありません」

私たちは人工の中で生きているのに、人工だからと否定するのはどういうものでしょう。

・伝統的
通常医療は常に変化するが、代替医療は何百年、何千年も変わらずにいるから信頼できると信じ込んでいる人がいる。

2世紀の古代ローマの医学者ガレノスは医学の集大成をし、その説はルネサンスまでヨーロッパとイスラムの医学で支配的になっています。
ガレノスの言葉です。
この治療薬を飲めば、誰でもたちどころに治ってしまう。これが効かず、どのみち亡くなる者以外は。それゆえにこの薬が効かないのは不治の病人だけであるのは明らかだ。
古代の治療師は物事に対してより明解で、より賢い見解を持っていたわけではないようです。

中世のヨーロッパでは20歳まで生きて成人できたのは約半数。
18世紀までの西洋医学の治療は主に瀉血で、モーツァルト、ジョージ・ワシントンのように瀉血で死んだ人のほうが治った人より多い。

伝統的な治療法だからといって、すべてがいいわけではない。
漢方も数千年の伝統があり、自然のものだから副作用がないと思われています。

・全体論的(ホーリスティック)
ホーリスティックとは、心身の健康を全体としてみていくという医療へのアプローチ。
近代医学は全体を細分化して部分しか見ないし、精神性を欠いて技術的だが、代替医療はスピリチュアルで深い意味を持つと考える人がいる。

しかし、通常医療の医者も、患者の生活習慣、年齢、家族の病歴、遺伝的要因などを頭に入れて、ホーリスティックな治療を行なっている。
医療に標準とか代替とか、補完とか統合とかホリスティックといった区別があるわけではない。
効く医療と効かない医療があるだけだ。

 ⑨ 代替医療からの科学に対する非難
・科学は代替医療を検証することができない
科学はさまざまな治療法が及ぼす影響の測定方法を開発してきた。
追試をして結果を再現することで、その治療法が安全で効果があることが証明される。

しかし、代替医療の場合、一度きりの臨床試験や、データを公開しないなどで、効果があるかを示すことができない。
だから、科学は代替医療の主張に懐疑的なのである。

・科学は代替医療がわかっていない
ある治療法のメカニズムがわからないからといって、効くかどうかわからないわけではない。

17世紀にレモンが壊血病の予防できると知られるようになったが、なぜかはわからなかった。
ビタミンC不足が壊血病の原因であることがわかったのは20世紀になってから。

・科学は代替医療に偏見を持っている
現代科学はガリレオたち反主流派によって築かれている。
科学は反主流派すべてを否定するわけではない。
だからといって、反主流派がすべて偉大な科学者とは限らない。

 ⑩ 代替医療による科学の利用
代替医療は科学を批判するのに、主張に信憑性を与えるため科学を利用する。
エネルギー、波動、共鳴、あるいは患者の電磁回路や体をデフラグするといった科学的と思わせるが意味のなさない言葉を使う。

科学的にみえる装置を使用する。
電磁放射から守ってくれる銅のブレスレット。
ヒーリング力があるクリスタル。
体から毒を排出するフットバス。
体から毒素を排出させる(デトックス)電気式の装置など。

 ⑪ 代替医療による金儲け
代替医療を支持する人には政府、製薬会社、医師は薬を売るために結託していると考える人がいます。
しかし、代替医療こそ高い治療費を要求し、健康食品や健康器具を売りつけて金儲けをしているのです。

代替医療や反ワクチンの本が定価2千円として、印税が10%なら、1万部売れると200万円、10万部なら2千万円です。
講演会の参加費千円で聴衆が千人来たら100万円。

大製薬会社も積極的に代替医療ビジネスに参入している。
代替医療は全世界で数兆円規模の市場に成長しているといわれる。
2018年度の世界のビタミンや栄養補助食品マーケットの売上は約1140億ドルで、アメリカが291億ドル、中国が231億ドル、日本が110億ドル。
https://boueki.standage.co.jp/supplement-overseas-market/
2007年、481万人のアメリカ人がホメオパシーを使用し、レメディーの売り上げは29億ドル。

サイモン・シン、エツァート・エルンスト『代替医療解剖』とポール・オフィット『代替医療の光と闇 魔法を信じるかい?』を読み、代替医療の手口はインチキ宗教や悪徳商法と似ているように思いました。
ムチ(脅し)で不安にさせ、とアメ(解決法)を与えて金をむしり取るのが基本です。

中には、治療が効くという信念を持つ人、人々を救う大発見をしたと信じる研究者、だまされて代替医療の広告塔になる科学者や著名人もいます。
これもインチキ宗教や悪徳商法と同じ。
しかし、悪意はなくても、人を惑わすという点では罪作りです。
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