2004(平成16)年の改正前までは、5年ごとの財政再計算で都度給付設計が行われ、保険料が段階的に引き上げられ、将来が見通せなかったため年金に対しての不安感が募りがちでした。そこで平成16年にマクロ経済スライドが導入され、給付水準の調整期間が設けられ、おおむね100年間で財政の均衡を図る方式になり、積立金を活用して、財政均衡期間の終了時に給付費1年分程度の積立金を保有する仕組みになりました。財源の範囲内で給付水準を自動調整する方法がとられることになったわけです。
ただマクロ経済スライドは物価と賃金が上昇したときに、年金額の伸びを抑制するという仕組みであるため、これまで2015(平成27)年度、2019(令和元)年度、2020(令和2)年度の3回しか発動されていません。また、2016(平成28)年に「キャリーオーバー制」という累積された未調整分について、マクロ経済スライドの発動したときに解消するという仕組みが導入されています。今回政府は2023(令和5)年の年金支給額の改定で「マクロ経済スライド」を3年ぶりに発動する検討に入ったということで、キャリーオーバー分の0.3%の解消も見込まれるため、給付額は抑制され物価上昇率に追いつかないのではと予測されています。
日経新聞によると、「2022年度の厚生年金のモデルケース(夫婦2人の場合)は月あたりの支給額が21万9593円だった。今回は足元の物価や賃金の伸びを踏まえて支給水準が3年ぶりに増える見通しだ。専門家は改定のベースになる22年の物価上昇率を2.5%と試算する。公的年金は少子高齢化にあわせて年金額を徐々に減らす仕組みだ。21年度から2年連続で発動を見送り、0.3%分がツケとしてたまっている。23年度の改定では21~23年度分が一気に差し引かれる可能性が高い。」としており、どうなるか注目されます。
今週から来週にかけて法改正セミナーが3本あるため、週末はレジュメ作りに集中して何とか作り上げることができました。この春は法改正事項が少なくて、テーマごとに少し丁寧に説明をする予定でいますが、ちょっと目玉がない感じではあります。人事・労務担当者の方にとってはそういう年があっても良いのかもしれません。
とはいっても人的資本関係のものを読んでいると、これからの人事は今までのデスクワーク中心ではなく戦略型人事になっていく必要があると予測され、社労士としてもワクワクするものがります。今年も色々と新たな考え方や意識を拾って発信していきたいと思います。