年明けから何社かからご質問があったのが社会保険料の算定基礎となる「報酬」と「賞与」についてです。厚生年金保険法では「報酬」と「賞与」は以下のように定義されています(健康保険法でもほぼ同様です)。
厚生年金保険法第3条
③報酬 賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受ける全てのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び3月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。
④賞与 賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受ける全てのもののうち、3月を超える期間ごとに受けるものをいう。
基本的に社会保険では慶弔見舞金などの恩恵的なものか出張旅費などの実費弁償的なものを除いて、報酬、賞与に該当するケースがほとんどのように感じます。その中で年明けにかなり指摘を受けたのが「年末年始手当」です。
疑義照会には報酬・賞与としない例として「大入り袋」を取り上げていますが、その理由として大入袋のもつ本来の性質①発生が不定期であること、②中身が高額でなく、縁起物なので極めて恩恵的要素が強いことからすると生計にあてられる実質的収入とは言い難く、報酬及び賞与としないとしています。
また同じ疑義照会の回答で「労働の対償」とは、昭和 32.2.21保文発第 1515号からすると被保険者が事業所で労務に服し、その対価として事業主より受ける報酬や利益などをいい、①過去の労働と将来の労働とを含めた労働の対価 、②事業所に在籍することにより事業主(事業所)より受ける実質的収入と考えられます、としており、年末年始手当はやはり①の労働の対価に該当するため、賞与として保険料の算定基礎とすることが適切だと考えます。
それでは、「永年勤続表彰」はどうかということなのですが、時々年金事務所の調査の際に賞与だと指摘を受けることがあるようです。その場合は、明確に「賞与に該当しない」と以下の社会保険審査会の裁決(平成18年9月29日)が出ていることを伝えると良いようです。
その要旨としては、「本件表彰金は、①一定の勤続年数に達した場合に労務の内容等に関わりなく一律支払われ、②一定の勤続年数に達しない場合には、労働の実態があったとしても一律に支払われず、③心身のリフレッシュを目的とした休暇付与に伴う資金援助であり、④支払われる金額も社会通念上のいわゆるお祝い金の範囲を超えるものとはいえず、⑥誠実に勤務した労働者に対して創立記念日に恩恵的に支払われるものであり、⑥文言上も賃金や賞与ではなく表彰金と規定されている。 そうすると、本件表彰金は、労働者の労働の提供の対償として支給されるものでもなければ、労働者の通常の生計に充てられるものでもない。したがって、本件表彰金は、賞与に該当しない。」とあります。
