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社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

副業の通勤災害(片方フリーランス)

2023-01-09 21:58:00 | 労働法

先日副業の通勤災害がどこまでカバーするかというご質問があり、確認も兼ねて調べました。副業というと2020年9月から導入された複数事業労働者に該当するかどうかをまず検討する必要があります。複数事業労働者に該当するかどうかは以下で判断することになります。

①被災(けが、病気、死亡等)時点で、事業主が同一でない複数の事業場と労働契約関係にある労働者(雇用/雇用)
②1つの会社と労働契約関係にあり、他の就業について特別加入している方(雇用/特別加入)
③複数の就業について特別加入をしている方(特別加入/特別加入)

上記の場合は複数事業労働者に該当し、複数の事業場全ての事業場等の賃金額を合算した額を基礎として給付基礎日額が算定されます。

今回ご相談のケースはこちらには該当せず、片方が業務委託ということでした。業務委託でも特別加入をしているのであれば上記複数事業労働者に該当するのですが、一人親方として特別加入するには一定の事業又は作業に該当する必要があり、なかなか該当しないというのが実感です。とすると一方が雇用で片方業務委託の場合の通勤災害はどう判断されるかということになります。そもそもの通勤災害は以下の要件が必要です。

この場合の「通勤」とは、就業に関し、次に掲げる移動を、
(1)住居と就業の場所との間の往復
(2)就業場所から他の就業の場所への移動
(3)住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動
上記(1)から(3)のいずれかを合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとされていますが、移動の経路を逸脱、中断した場合は、逸脱又は中断の間及びその後の移動は「通勤」とはなりません。なお、日常生活上必要な最小限度のものは逸脱中断とはされず通勤となります。

複数事業労働者に該当しなければ上記(2)は通勤災害となりませんし、(3)は単身赴任先から家族のいる自宅に帰りその後会社に通勤というケースですので、業務委託のケースには当てはまらず、結局当てはまるとすると(1)のみということになります。

例えば、①自宅から雇用されている会社への移動、②雇用されている会社で就業後業務委託先に異動、③業務委託先で就業後自宅へ帰宅、というケースはどのようになるでしょうか。

①自宅から雇用されている会社への移動は通勤災害になります。ただし、複数事業労働者に該当しない場合の給付基礎日額は合算されないため、労災加入の雇用されている会社の賃金だけで計算されることになります。

②雇用先で就業後業務委託先への移動は自宅からの移動ではないので通勤災害には該当しないことになります。

③業務委託先から就業後自宅への移動も通勤災害にはなりません。通勤災害に該当するためには雇用されている会社又は特別加入した上での自宅への移動の必要があるためです。

分かっているつもりでも少し整理しないとすぐに正解が出にくいですね。

●通勤災害の定義
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/rousai_hoken/tuukin.html

●複数事業労働者のパンフ
https://www.mhlw.go.jp/content/000662505.pdf

あけましておめでとうございます。お天気が良くて穏やかなお正月でしたね。withコロナの時代、これまで以上に社会や人の意識が変化し、デジタル化も進み、社労士を取り巻く様々が変化していくような気がします。ワクワク感がありつつも気を引き締めていきたいと思います。今年もよろしくお願いします。