OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

役員の社会保険の扱いについて

2024-06-09 23:42:37 | 社会保険

6月は特に下旬に株主総会が行われることが多く、役員の交代時期でもあるため、役員の社会保険の取扱いについてご相談が多くなります。特に最近は働く年齢が高くなってきたこともあり役員退任後もその企業に在籍してアドバイザーのような形で仕事をされるケースも多く、働き方によって社会保険の取り扱いを慎重に検討しています。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入要件は、「1週の所定労働時間」及び「1月の所定労働日数」が、同一の事業所に使用される通常の労働者の所定労働時間及び所定労働日数の「4分の3以上」である労働者とされています(さらに適用拡大が現在進行中ですがここでは省略します)。

まず上記「使用される」という点について、委任関係である役員について疑問が浮かびますが、通達で資格を継続または取得することとされています。役員に係る社会保険の扱いの根拠として示されているのは、「法人の代表者又は業務執行者の被保険者資格について(昭和24年7月28日保発74号厚生省保険局長通知)」です。)

法人の理事、監事、取締役、代表社員及び無限責任社員等法人の代表者又は業務執行者であつて、他面その法人の業務の一部を担任している者は、・・・今後これら法人の代表者又は業務執行者であつても、法人から、労務の対償として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者の資格を取得させるよう致されたい。なお、法人に非ざる社団又は組合の総裁、会長及び組合及び組合長等その団体の理事者の地位にある者、又は地方公共団体の業務執行者についても同様な取扱と致されたい。

また「4分の3以上」の要件についてはどのように考えるかということですが、まず役員に対しては「4分の3以上」の要件の適用はなく、2023年6月に現在示されている疑義照会に掲載内容を整理されていますが、以前の疑義照会では、非常勤の判断について①当該法人の事業所に定期的に出勤しているかどうか、②当該法人における職以外に多くの職を兼ねていないかどうか、③当該法人の役員会等に出席しているかどうか、④当該法人の役員への連絡調整または職員に対する指揮監督に従事しているかどうか、⑤当該法人において求めに応じて意見を述べる立場にとどまっていないかどうか、⑥当該法人等より支払いを受ける報酬が、社会通念上労務の内容に相応したものであって実費弁償程度の水準にとどまっていないかどうか、という6つの要素の中で「定期的に出勤」が示されていました。

ただし現在示されている疑義照会では、定期的な出勤だけで判断されるものでもないと、日本年金機構の疑義照会厚生年金保険適用で以下のように示されています。

定期的な出勤については「事業所に定期的に出勤している場合は、法人の経営に対する参画を内容とする経常的な労務の提供であり、かつ、その報酬が当該業務の対価として当該法人より経常的に支払いを受けるものである、との判断の要素にはなりますが、本来法人の代表者としての職務は事業所に出勤したうえでの労務の提供に限定されるものではないことから、定期的な出勤がないことだけをもって被保険者資格がないという判断にはならないと考えます。定期的な出勤は、経常的な労務の提供を判断する一つの要素であり、定期的な出勤がないことだけをもって、被保険者資格がないとするものではありません。」とされています。

また上記昭和24年の通知では「法人から、労務の対償として報酬を受けている者」が判断の基準とされていますが、疑義照会ではあまりにも低額な報酬を受けるような場合は「常用的使用関係」と判断できる働き方(多くの職を兼ねていないかどうか、業務の内容等)であるかなどを調査し判断することとし、また実費弁償のみが支払われる場合の実費弁償は報酬ではないため「法人の経営に対する参画を内容とする労務の対価」には該当しないと考えます、とあります。

最終的に「疑義照会回答の判断の材料例は、一例であり、優先順位づけはなく、複数の判断材料により、あくまでも実態に基づき総合的に判断してください。なお、疑義が生じた場合は、実態を聞き取ったうえで、具体的事例に基づき照会してください。(ご照会の事例においては)「常用的使用関係」と判断できる働き方であれば、被保険者資格を認めて差し支えありません。」とあります。やはり一つ一つの案件を慎重にこれまで示された疑義照会や通知にある基準により判断していく必要があります。

疑義照会回答(厚生年金保険適用)
https://www.nenkin.go.jp/service/seidozenpan/gigishokai.files/kounen_tekiyou.pdf

ここのところ理事会、総会や取締役会で決算などを見る機会が多いのですが、財務状況を見ることができるようになってきたと感じます。数字は得意ではないと思ってきたのですが、数字が語り掛けてくるものがあるとわかってきたのはやはり自分で事務所を経営しているからなのかなと思います。まだまだ色々と分かってくることがあるのかなと感じるとワクワクします。若いときは未熟についてプラスのイメージはなかったのですが、年齢を重ねると未熟な部分がありまだ成長していくことができるのかなと感じて嬉しくなるものですね。