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社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

就業手当の廃止

2024-06-02 23:59:19 | 労働法

改正雇用保険法が成立して、令和6年10月1日施行の教育訓練給付金の給付率の引き上げや、令和7年4月1日施行の就業促進手当の見直し、令和10年10月1日施行の週所定労働時間10時間以上への適用拡大等について通達が出ています。特にやはり注目度が高いのは適用拡大だと思うのですが、おそらくほとんど興味を持たれていない「就業手当」がひっそり廃止になることについて感慨深いものがあるので触れてみたいと思います(ほとんどの方は関心がないものと思います。すみません)

就業手当は、平成15年に創設されたもので、完全失業率が平成14年から15年にかけては過去最高の5.5%(令和5年は2.6%)となった時期です。就業手当は就業促進手当の一つとして再就職手当と常用就職支度金に統合されたものです。目的としては多様な就業形態による早期就業を促進するために創設されたということなのですが、要件としては基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上」ということで再就職手当と同じです。異なるのは、就業手当の「職業に就くか又は事業を開始する」に対して、再就職手当は「1年を超えて引き続き雇用されること」という点です。つまり、失業期間中にちょこっとアルバイトをしたということであれば就業手当を支給するという給付なのですが、支給額が基本手当日額の30%であり額的には非常に少なく設定されています。令和5年8月1日からの1年間の基本手当の上限額は最高で8,490円ですが、就業手当の上限額は1,887円です。ちなみに再就職手当の上限額は6,290円です。就業手当の目的は基本手当を受け切ってから就職するのではなく、ちょこちょこ働きながら早めに就職を決めようということなのかと思いますが、今でもやや理解できない感じがします。

就業手当を受給すると基本手当を受給したものとみなされるため、失業期間中にアルバイトをした場合、認定の際に「就業手当」を受給するのではなく、失業した日を後ろ送りにして受給期間内に基本手当を受給したほうが受給額が多くなるということで、失業期間中アルバイトをした場合就業手当として認定されたくないというご相談が結構ありました。私も心配になりハローワークに問い合わせたのですが、結局ハローワークでは個別の事情に配慮された判断がされており、就業手当を受給するケースは少ないようでした。それでも今回、改正にあたり審議会で出た資料を見て若干驚いたのですが、令和4年度の受給者数は再就職手当の359,734人に対して、就業手当は3,486人ということでした。やはり給付の効果としては分かりにくく、廃止は自然なことであったように思います。

改正雇用保険法通達(令和6.5.17基発0517第1号、職発0517第4号)
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T240521L0030.pdf

金曜日夕方までぎりぎり仕事をしてから1泊で京都に行ってきました。人混みを避けて動くことにして初めて川床ランチを経験してきたのですが、これはとても気持ちが良かったです。ただ午後つい街中に出てしまい、オーバーツーリズムを目の当たりにしました。バスが大混雑で停留所によっては乗れない人も出てきたりでテレビで見ていた通り地元の方は移動が大変だろうと実感しました。ほぼ1日の京都でしたが、さすがに食事もとても美味しくて、かなり満喫できました。