真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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米駐日大使、最高裁長官と密会、伊達判決に対処

2023年03月25日 | 国際・政治

 「砂川事件と田中最高裁長官 米解禁文書が明らかにした日本の司法」布川玲子・新原昭治(日本評論社)から、さらに注目すべき文書二つを抜萃しました。

 砂川事件に関わって、東京地裁の伊達裁判長が「日米安全保障条約に基づく駐留米軍の存在は,憲法前文と第9条の戦力保持禁止に違反し違憲である」との判決を下したことにあわてたアメリカのマッカーサー駐日大使が、当時の藤山外務大臣に、伊達判決に対する「跳躍上告」をアドバイスしつつ、国務省と頻繁に「夜間作業必要緊急電報」などで連絡を取り合い、対応に追われていたことは、すでに取り上げた文書で明らかだと思います。

 今回取り上げたのは、「跳躍上告」された際に判断を下す最高裁の長官にも、マッカーサー駐日大使が接触し、「内密の話し合い」をしていたことを示す文書と、戦後の日本のありかたを決定づけたともいえる、下記のようなアメリカに都合の良い判断を示している文書です。

”憲法は、このような問題は、立法政策上の問題であり、基本的人権が侵されない限り、断じて裁判所は審査する権限を持たないと規定しているからである。

 

東京地裁判決は、憲法9条は、日本の「戦力保持」を禁止しているという前提に立ち、その正当化として憲法前文を引用する。しかしながら、前文は、攻撃から自衛するための日本の戦力保持を禁止していないし、自衛手段を講ずる権利も否定していない。

米軍は、国連の抑止活動の補完を意図しているのであるから、米軍の展開は、日本国憲法の精神に反するものではなく、むしろ憲法に依って立つところの平和主義をと国際協調主義を支持することは明白である。”

 私は、統治行為論のような考え方で、国際関係をはじめとする国の政治を憲法の上に置き、自衛のための戦力保持は合憲であるという考え方で米軍の駐留や自衛隊の存在を合法化し、アメリカは、国連の抑止活動を補完しているという考え方で、アメリカの不当な影響力行使(権力支配)を認めるから、アメリカは野蛮な戦争をくり返してきたのだと思います。

 私は、”自衛のための戦力保持は合憲である” などというのは、アメリカの影響力行使(権力支配)を正当化するための議論で、ナンセンスだと思います。日本国憲法の精神に反するばかりでなく、法の支配を蔑ろにする議論だと思います。東京裁判で東条英機元首相が、”日本は自衛のために戦った。あの戦争は米国が仕掛けた戦争だ” というようなことを言ったことを忘れてはならないと思います。戦争は、当事国にとってはいつも自衛の戦争なのです

 
 また、マッカーサー駐日大使が、田中最高裁長官と「内密の話し合い」をしたり、国務省と「極秘」「」「部外秘」というような電報のやりとりをしていることでも、アメリカの法の支配を蔑ろにする姿勢が明らかだろうと思います。民主的ではないのです。

 日本という国の根幹に関わる重要な問題が、このようなかたちで、秘密裏に決定されてよいわけはないと思います。民主国家にあるまじきことだ、と私は思います。
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                第1部 砂川事件に関する米国政府解禁文書  

国務省・受信電報
「秘」
1959年4月24日午前2時35分受信
発信元:東京(大使館)
宛先:国務長官
電報番号:2200、4月24日午後4時
国務省宛2200:同文情報提供─太平洋軍司令部宛615、在日米軍司令部宛394
太平洋軍司令部は政治顧問へ
大使館関連電報2019

 最高裁は4月22日、最高検察庁による砂川事件の東京地裁判決上告趣意書の提出期限を6月15日に設定した。これに対し、被告側は答弁書を提出することになる。

 外務省当局者がわれわれに知らせてきたところによると、上訴についての大法廷での審理は、おそらく7月半ばに開始されるだろう。とはいえ、現段階では判決の時機を推測するのは無理がある。内密の話し合いで田中(耕太郎)最高裁長官は、大使に本件には優先権が与えられているが、日本の手続きでは審理が始まったあと判決に到達するまでには、少なくとも数カ月はかかると語った。
                                     マッカーサー 
 (英文の訳に関する説明は省略しました)
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国務省・受領航空書簡
「部外秘」
1959年6月8日受領
発信元:東京(大使館)
宛先:国務長官
航空書簡番号:G-647
同文情報提供─外交行嚢により太平洋軍司令部宛Gー86、
       外交行嚢により在日米軍司令部宛
大使館関連航空書簡:Gー631

 東京地方検察庁は、政府関係省庁が総力を挙げて作成した1万6000字に及ぶ砂川事件東京地裁判決に対する上告趣意書を6月2日最高裁に提出した。印刷されて発行された要約によれば、検事上告趣旨は、日本における米軍駐留の合憲性に対し、以下の基本的根拠に基づき強力な主張をしている。
 1、米軍は、日本との合意によってここに駐留しているのだから、米国の軍事力によって平和が確保されると考える義務が日本政府にはある。刑事特別法2条による刑罰は、軽犯罪法の刑罰とのみ比較
されるのではなく、〔刑法の〕住居侵入罪の規定との比較で考量されねばならない。ここに何故、刑特法による刑罰が、軽犯罪法によるものより重く、住居侵入罪による罰より軽いのかの理由がある。いずれにせよ、東京地裁が、刑特法に拠る刑罰の正当性につき判断したのは、その権限を越えている。というのは、憲法は、このような問題は、立法政策上の問題であり、基本的人権が侵されない限り、断じて裁判所は審査する権限を持たないと規定しているからである。

 2、東京地裁判決は、憲法9条は、日本の「戦力保持」を禁止しているという前提に立ち、その正当化として憲法前文を引用する。しかしながら、前文は、攻撃から自衛するための日本の戦力保持を禁止していないし、自衛手段を講ずる権利も否定していない。

 3、憲法9条は、日本の「戦力保持」を禁じているが、これは、日本の統制下にある戦力を言っている。したがって米国の軍隊は、断じて日本の統制下におかれるものではないので、米軍の展開は、日本にとっての「戦力」を意味しない。

 4、地裁判決は、日本における米軍は、日本の外で極東の平和維持のために発動されるかもしれないので、米軍の展開は、日本が関与していない争いに日本を巻き込む可能性を持ち、かくして憲法の精神に反すると述べる。しかしながら、米国が軍事的行動に出るのは、国連の指令による場合と国連憲章51条に規定されている個別的及び、集団的自衛権による場合のみであり、さらにこの規定は、この権利は国連加盟国に対する軍事的攻撃がなされた場合に行使できるとしている。さらに加えて、日米安全保障条約は、極東におけるいかなる軍事的攻撃も日本を脅かすことになるのは、明白である。このような攻撃を抑制するのは国連の義務であり、日本は、国連の加盟国としてこの点に関して国連と共働する義務を負っている。ここで米軍は、国連の抑止活動の補完を意図しているのであるから、米軍の展開は、日本国憲法の精神に反するものではなく、むしろ憲法に依って立つところの平和主義をと国際協調主義を支持することは明白である。

 5、地裁判決は、米軍の日本駐留の根拠でる日米安全保障条約が憲法に違反するとは、直接には宣告していない。しかしながら判決は全文において、裁判所の考えでは条約は違憲であるという意味を明らかに含んでいる。この立場から裁判所は、その管轄権を越えて、実質的に条約の合憲性につき判断を下しているが、これは憲法81条によって規定されている司法の違憲立法審査権を越えるものである。

 反響  新聞記事は、以下のものに限定される。『読売』コラムは、上告趣旨の骨子は「法的というよりも政治的」であり、憲法9条に対する政府の立場につっかい棒をする意図である、としている。
『東京タイムズ』社説は、憲法9条の解釈について国民は、改定安保条約調印前にこの問題のすべての疑念が晴らされることを望んでいると思われるから、最高裁は明確な判断を下すようにと求めている。

 コメント  検察の上告趣意書提出に伴い、裁判の審理は、「小法廷」から「大法廷」に移った。弁護側は、趣意書を精査のうえ、6月下旬に答弁書を提出すると思われる。大使館は、目下、上告趣意書正本の写しを入手しようと努めている。
                                             マッカーサー
                              JI ステグマイヤー:cj  政治顧問 HB クラーク 
                                        主席公使Wm レンハート    


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