真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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「日本イラク医療支援ネットワーク」の訴えとアメリカのメキシコ制裁

2023年03月12日 | 国際・政治

 「イラク戦争を検証するための20の論点」イラク戦争の検証をもとめるネットワーク編(合同出版)の文章は、現地に入ったJIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)の関係者の切実な訴えであり、しっかり受け止めるべきだと思います。

 イラク戦争をはじめたアメリカは、フセイン政権による大量破壊兵器使用の危険性を煽りたて、世界の国々に、参加するよう強く訴えたにもかかわらず、北大西洋条約機構(NATO)を構成するフランスやドイツさえ抵抗し、アメリカの姿勢を支持しなかったことは忘れてはならない大事なことだと思います。なぜなら、当時の小泉元首相が、いち早く支持を表明していたからです。

 私は、当時、酒井啓子教授がしばしばテレビに登場し、フセインを倒せば、宗派や民族集団の勢力バランスが崩れ、イラクは混乱すると主張されていたことを覚えています。その通りになったのです。民主化などされなかったのです。 
 だから、アメリカは覇権や利益の維持・拡大のために、イラクで戦争を始める必要性に迫られていて、イラク戦争強行の理由にした大量破壊兵器があるかないかは、ほんとうはあまり関係なかったのではないかと思います。
 当時、イラク国内に大量破壊兵器があるという確実な証拠はありませんでした。イギリスのブレア英政権が、イラク戦争強行の根拠にした機密情報に関しては、イギリス政府の調査委員会(バトラー委員長)が、後に、”情報には深刻な欠陥があった”と指摘しているのです。関係者が見れば、一見して不備が分かるような文書だったと聞いています。
 しかも、フセイン大統領は、前年から国際原子力機関の査察を受け入れており、査察中だったのです。結果をまたずに、戦争を始める理由などなかったのです。

 下記を読めば、イラクにおけるアメリカの犯罪性がわかるように思いますが、そのイラク戦争に、日本も加担していたことを、私たち日本人は忘れてはならないと思います。
 イラク戦争が始まる前、アメリカによるイラク爆撃を断念させようと、世界中の人々が反戦行動が繰り広げていました。にもかかわらず、日本は「イラク特別支援特措法(イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法)」を成立させて、「復興」を口実に自衛隊の海外派兵を行ないました。
 そして、ひそかに「戦地」において米兵や武器を空輸し、当時認められていなかった「集団的自衛権」を行使すようなことまでしていたといわれているのです。

 

 イラク戦争とは直接関係はありませんが、先日(2023年3月8)、朝日新聞は、アメリカの覇権や利益に関わると思われる重要な記事を掲載しました。下記です。

米通商代表部(USTR)は6日、メキシコ政府が、遺伝子組み換え技術を使ったトウモロコシの輸入を制限していることについて、「非科学的」だとする声明を発表した。トウモロコシはメキシコの主食トルティーヤの原材料。農産物の輸出大国・米国はメキシコに協議を要求しており、改善されなければ貿易上の制裁に動く可能性もある。USTRのダイ代表は声明で「メキシコのバイオ技術政策への深刻な懸念と、科学的根拠に基づく手段の重要性をくり返し伝えてきた」と主張。協議の行方によっては、米・メキシコの・カナダ協定(USMCA)に基づく国家間の紛争解決プロセス入りもにおわせた。
 メキシコの制限措置は、トウモロコシの巨大産地の米農家の反発を買っており、米政府は「1年以上にわたって懸念を表明してきた」(米政府高官)。ロイター通信は6日、「両国間の最終的な協議がまとまらなければ、米国が報復関税を発動する可能性を伝えた。
 メキシコ政府は2020年、遺伝子組み換えトウモロコシの輸入や販売を24年までに禁じる政令を発出。ただ、米側の圧力もあって、今年2月には家畜の飼料用等については輸入を認めることにした。それでもロペスオブラドール大統領は2月の記者会見で、「健康に有害な食品は許可されるべきではない」と述べ、食用の原則輸入禁止にこだわっている。
 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、メキシコ経済省は6日、一連の措置について「国内で栽培されるトウモロコシの生物多様性を確保し、トルティーヤがメキシコ原産のトウモロコシ品種を使ってつくられるようにするのが目的だ」と説明。今後の協議で米側の理解を得たい姿勢をにじませた。(ワシントン=榊󠄀原謙サンパウロ=軽部理人)

  メキシコの主食「トルティーヤ」を、”メキシコ原産のトウモロコシ品種を使ってつくられるようにする”というメキシコ政府の政策が、アメリカによって、制裁の対象にされようとしていることは見逃すことができません。アメリカが、メキシコに、”アメリカ産の遺伝子組み換えトウモロコシを使え”というような圧力をかけることが許されてはならないと思うのです。
 だから、アメリカから圧力をかけられているメキシコ大統領の苦言(https://twitter.com/i/status/1631903909714485248)は、傾聴に値すると思います。 

 世界情勢は変化し、アジア、アフリカ、中東、中南米で、少しずつアメリカ離れが進んでいると思います。中国の仲介によって、イランとサウジアラビアが外交関係正常化で合意し、アルゼンチンやイランが、BRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)として知られる新興5カ国グループへの加盟を表明していることなどと、メキシコ大統領の苦言を考え合わせると、アメリカの覇権と利益が危うく、アメリカが攻撃的になっていることは否定できないと思います。だから、ウクライナ戦争とノルドストリームの爆破で、ロシアをヨーロッパ諸国から切り離したように、台湾有事によって、中国を孤立させ、弱体化させようとするアメリカの悪あがきが心配されるのです。

 日本が、アメリカのプロパガンダに踊らされて、中国やロシアを敵視し、防衛費を大増額するなどということは愚かなことだと思います。日本は、何でもアメリカの言う通りにする属国のごとき状態を脱し、日本国憲法を掲げて平和外交に徹するべきだと思います。
 かつて、世界の頂点に立つ大国アメリカに逆らい滅亡の淵に立った日本が、今度は、アメリカに隷従し、アメリカの意図する対中戦争に加担するような愚かなことは、決してやってはならないことだと思うのです。
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              第1章 イラク戦争を検証するための20の論点

           検証07 戦争とはいえ、イラク市民を殺すことは許されるのか?

 いいえ、戦争だから何が起きてもしかたないのではありません。ジュネーブ条約などの国際人道法は、戦時に守るべきルールを定めています。そして、これらに違反する戦争犯罪は追及される必要があります。
 アメリカも批准しているジュネーブ条約の第4条約では、民間人の殺害、障害、虐待が禁止されています。また、軍事施設以外の不動産の破壊を原則として禁止し(第4条約53条)、病院の破壊はいかなるばあいでも禁じられています(第4条約18条)。食料や医療物資の供給確保も、占領軍の義務です(第4条約55条)。しかし、米軍はこれらの条約に違反しつづけてきました。
 西部ラマディは、2005年から06年にかけて日常的に米軍の攻撃をうけ、多数の住民が殺されました。狙撃兵が陣取り「狩り場通り」と恐れられた道だけでも、女性や子どもをふくむ1000人以上が、ただ歩いていただけで撃ち殺されたのです。さらに、「狙撃の邪魔」という理由から米軍は2つの学校と200の民家を区画ごと破壊、電気・水・食料・ガソリンスタンドなどのライフラインを断たれ、病院も破壊されたリ占拠されたりしたので、ラマディ住民40万人の生活は困難をきわめました。
 ほかにも、西部のハディーサでは、05年11月、米軍車両ヘの攻撃があった近くに住んでいたというだけで、1歳から13歳の子どもをふくむ家族24人が、米海兵隊に虐殺されるという事件がありました。中部のマハムディヤでは06年3月、14歳の少女が5人の米兵にレイプされたうえ殺害され、5歳の妹と両親も殺されました。このような殺戮や破壊が、各地で相次いだのです。
 04年4月末に発覚したアグブレイブ刑務所での虐待事件など、米軍による捕虜虐待も重大なジュネーブ条約違反です。同刑務所での人権侵害を告発するアリ・サハル・アッバス氏は、自身の経験として、つぎのように証言しています。「私たちは殴られ、小便をかけられ、電気ショックに苦しめられ、何時間もヘッドフォンで大音量の音楽を聞かされました。何日も裸にされ、水や食料もあたえられませんでした」。
 多くの場合、米軍は明確な証拠も裁判もなく、人びとを長期間拘束しました。情報を得るためという、ただそれだけのために、無実の人を拘束もしていました。武装勢力関係者などを捜索するために、その家族の女性を連行した、という疑惑もあります。これは06年1月、アメリカの人権団体「アメリカ自由人権協会」が米軍の内部文書を情報開示請求し、発覚しました。また、現地人権団体「イラク人権モニタリングネット」は、「人質として米兵たちに拘束されたイラク人女性が、出頭した夫の前でレイプされ、解放されたのち、自殺した」などの事例を報告しています。
 アメリカ上院軍事委員会は、08年12月、「イラクなどでの米兵たちによる虐待は、ブッシュ政権が拷問を容認したことに起因する」とした報告書を公表していますが、イラクでの戦争犯罪は日本にとってもひとごとではありません。
 ジュネーブ条約・第1追加議定書は、これを批准した国々に、いわゆる戦争犯罪人をその国籍を問わず自国裁判所に公訴するよう義務づけているからです(普遍的管轄権)。実際、スイスでは11年2月に同国を訪問予定であったブッシュ氏が告訴される可能性があったため、急遽、予定をキャンセルするということがありました。つまり、ブッシュ氏が来日した際に、逮捕・訴追することも理論上、ありうるのです。少なくとも、日本がいかにイラク戦争での国際人道法違反を追及するかという問題は、もっと議論されるべきでしょう。  


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