真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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戦陣訓 全文

2017年04月07日 | 国際・政治

 下記の「戦陣訓」は、「解説 戦陣訓」と題され、昭和十六年三月に、東京日日新聞社および大坂毎日新聞社によって発行された本から解説部分を除き、抜粋したものです。当然かも知れませんが、当時の陸軍大臣、東條英機の言葉が「陸訓第一号」として掲載されています。そして、井上哲次郎東大名誉教授や今村均中将、西原勝少佐、岡村寧次中将、荻洲立兵中将、谷壽夫中将、田中隆吉少将、桑木崇明中将、馬淵逸雄大佐、藤田進中将、作家の菊池寛、末松茂治中将が、項目を分担して解説に当たっています。

 すべての漢字には、読みがなが付けられ、それぞれの項目で、難しい用語の意味が説明されていますが、読みがなの一部はカタカナでかっこ書きにし、難しい用語の意味の説明は、一部のみ抜粋しました。また、「陸海軍軍人に賜りたる勅諭」(軍人勅諭)の「五ヶ条」も、「序」の部分で、簡単な説明がされていましたので、合わせて抜粋しました。

 この「戦陣訓」が、戦時中どれほどの悲劇を生んだのかを学ぶにあたっては、まず、「戦陣訓」そのものをしっかり理解しておく必要があると思いました。

 今なお、森友学園の諸問題が毎日のようにメディアに取り上げられていますが、塚本幼稚園では、園児たちに「教育勅語」を集団で暗誦させるという、常識では考えられない教育がなされていたといいます。まさに「洗脳」教育ではないか、と私は思うのですが、見逃してはならないのは、それを後押ししていたと思われる、安倍自民党政権を中心とする政治勢力の存在です。

 ふり返れば、そうした教育が平然と行われる背景は、着々と準備されてきたのではないかと思います。
 例えば、1948年に占領軍 (GHQ)によって廃止された「紀元節」が、 1966年には「建国記念の日」と、名前を変えて復活しています。また、 日本国憲法にあわせ、1947年に制定された現皇室典範では条文のない元号が、1979年に「元号法」として法制化されました。さらに、戦時中重要な意味を持った「日章旗」(日の丸)や「君が代」を、何ら変更することなく、そのまま戦後日本の「国旗」、「国歌」と定める「国旗及び国歌に関する法律」が、1999年に成立しました。そして、最近、ある閣僚からは「教育勅語」の内容を肯定する発言があり、政府も、「憲法や教育基本法に反しない形で教材として使用することは否定しない」と述べるに至っています。
 安倍自民党政権の「日本国憲法改正草案」では、天皇は元首とされ、国旗は日章旗、国歌は君が代、そして、元号の規定も新設される内容になっているようです。2013年に政府主催で行われた「主権回復の日」の式典では、最後に「天皇陛下 万歳!」という「万歳三唱」が行われています。だから、「主権在民」を否定し、皇国史観に基づいた日本を復活させようとしているように思われるのです。「戦争法」といわれる「安全保障関連法」や「特定秘密保護法」などの成立と考え合わせると、日本の前途多難は避けられないように思います。

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陸訓第一号

  本書を戦陣道徳昂揚ノ資ニ供スベシ
                      昭和十六年一月八日 

                            陸軍大臣  東條英機


戦陣訓

 夫れ戦陣は 大命に基づき、皇軍の神髄を発揮し、攻むれば必ず取り、戦えば必ず勝ち、遍く皇動を宣布し、敵をして仰いで御稜威(ミイツ)の尊厳を感銘せしむる處なり。されば戦陣に臨む者は、深く皇国の使命を体し、堅く皇軍の道義を持し、皇国の威徳を四海に宣揚せんことを期せざるべからず。

 惟ふに軍人精神の根本義は、畏くも軍人に賜りたる勅諭に炳乎(ヘイコ)として明らかなり。而して戦闘並びに訓練等に関して準拠すべき要綱は、又典令の綱領に教示せられたり。然るに戦陣の環境たる、兎(ト)もすれば眼前の事象に捉はれて大本を逸し、時に其の行動軍人の本分に戻るが如きことなしとせず。深く慎まざるべんや。乃ち既往の経験に鑑み、戦陣に於て勅諭を仰ぎて之が服行の完璧を期せむが為、具体的行動の憑拠(ヒョウキョ)を示し、以て皇軍道義の昂揚を図らんとす。是戦陣訓の本旨とする所なり。

※軍人に賜りたる勅諭
 明治十五年一月四日、明治天皇が陸海軍人に対し、天地の公道、人倫の常経として服膺(フクヨウ)すべき忠節、礼儀、武勇、信義、質素の五ヶ条を賜り、これを貫く一誠を以てすべき旨御諭しになったところの軍人精神の信条である。その五ヶ条は
一、軍人は忠節を尽くすを本分とすべし
一、軍人は礼儀を正しくすべし
一、軍人は武勇を尚(タット)ぶべし
一、軍人は信義を重んずべし
一、軍人は質素を旨とすへし。

【御稜威】天皇陛下の御威光 【四海】世界 【炳乎として】はっきりとして 【憑拠】よりどころ(服膺)心にとどめて忘れないこと

                  本訓 其の一
 第一 皇国
 大日本は皇国なり。万世一系の天皇上に在(オワ)しまし、肇国(チョウコク)の皇謨(コウボ)を紹継して無窮に君臨し給う。皇恩万民に遍く、聖徳八紘に光被す。臣民亦忠孝勇武祖孫相承け、皇国の道義を宣揚して天業を翼賛し奉り、君民一体以て克(ヨ)く国運の隆昌を致せり。
 戦陣の将兵、宜しく我が国体の本義を体得し、牢固不抜の信念を堅持し、誓って皇国守護の大任を
完遂せんことを期すべし。

【肇国】皇祖が我が国をおはじめになったこと 【皇謨】天皇の大きな御はかりごと
【聖徳八紘に光被す】天皇の御めぐみが地の隅々にまで広く大きく及ぶ

 第二 皇軍
 軍は天皇統帥の下、神武の精神を体現し、以て皇国の威徳を顕揚し皇運の扶翼に任ず。
 常に大御心を奉じ、正にして武、武にして仁、克く世界の大和を現ずるもの是神武の精神なり。武は厳なるべし仁は遍きを要す。苟(イヤシク)も皇軍に抗する敵あらば、烈々たる武威を振ひ断乎之を撃砕すべし。假令(タトヒ)峻厳の威克く敵を屈服せしむとも、服するは撃たず従ふは慈しむの徳に欠くるあらば、未だ以て全(マッタ)しとは言ひ難し。武は驕らず仁は飾らず、自ら溢るるを以て尊しとなす。皇軍の本領は恩威並び行はれ、遍く御稜威を仰がしむるに在り。
【威並び行はれ】なさけと威光が共々に行はれ


 第三 軍紀
 皇軍軍紀の神髄は、畏(カシコク)くも大元帥陛下に対し奉る絶対随順の崇高なる精神に存す。
 上下斉(ヒト)しく統帥の尊厳なる所以を感銘し、上は大権の承行を謹厳にし、下は謹んで服従の至誠を致すべし。尽忠の赤誠相結び、脈絡一貫、全軍一令の下に寸毫紊るるなきは、是戦捷必須の要件にして、又実に治安確保の要道たり。特に戦陣は、服従の精神実践の極地を発揮すき處とす。死生困苦の間に處し、命令一下欣然として死地に投じ、黙々として獻身服行の実を挙ぐるもの、実に我が軍人精神の精華なり。

【大権の承行】天皇陛下の御命令を承け奉ってこれを行ふこと  【脈絡一貫】つながりがあってすじみちが一つに通っていること   【獻身服行】一身をささげ心から身につけて実行すること

 第四 団結
 軍は、畏くも大元帥陛下を頭首と仰ぎ奉る。渥き聖慮を体し、忠誠の至情に和し、挙軍一心一体の実を致さざるべからず。
 軍隊は統率の本義に則り、隊長を核心とし、強固にして而も和気藹々たる団結を固成すべし、上下各々其の分を厳守し、常に隊長の意図に従ひ誠心を他の腹中に置き生死利害を超越して、全体の為己を没するの覚悟なかるべからず。

【聖慮】天皇陛下のお心持

 第五 協同
 諸兵心を一にし、己の任務に邁進すると共に、全軍戦捷の為欣然として没我協力の精神を発揮すべし。 各隊は互いに其の任務を重んじ、名誉を尊び、相信じ、相援け、自ら進んで苦難に就き、戮力協心相携へて目的達成の為力闘せざるべからず。

【戮力協心】力をあはせ気持ちをひとつにすること  【没我協力】 我が身のためということを離れて多勢と力をあはせること。

 第六 攻撃精神
 凡そ戦闘は勇猛果敢、常に攻撃精神を以て一貫すべし。
 攻撃に方(アタ)ては果断積極機先を制し、剛毅不屈、敵を粉砕せずんば已(ヤ)まざるべし。防御又克く攻勢の鋭気をを包蔵し、必ず主動の地位を確保せよ。陣地は死すとも敵に委すること勿(ナカ)れ。追撃は断々乎として飽く迄も徹底的なるべし。                    
 勇往邁進百事懼(オソ)れず、沈着大胆難局に処し、堅忍不抜困苦に克ち、有ゆる障碍を突破して一意勝利の獲得に邁進すべし。

 第七 必勝の信念
 信は力なり。自ら信じ毅然として戦ふ者常に克く勝者たり。
 必勝の信念は千磨必死の訓練に生ず。須(スベカラ)く寸暇を惜しみ肝胆を砕き、必ず敵に勝つの実力を涵養すべし。
 勝敗は皇国の隆替に関す。光輝ある軍の歴史に鑑み、百戦百勝の伝統に対する己の責務を銘肝し、勝たずば断じて已むべからず。

【千磨必死】幾度も危ない目にあふことによって心が鍛へられ何時でも死んでよい覚悟が出来ること

                  本訓 其の二
 第一 敬神
 神霊上(カミ)に在りて照覧し給ふ。
 心を正し身を修め篤く敬神の誠を捧げ常に忠孝を心に念じ、仰いで神明の加護に恥ぢざるべし。

【照覧】神仏が御覧になること

 第二 孝道
 忠孝一本は我が国道義の精粋にして、忠誠の士は又必ず純情の孝子なり。
 戦陣深く父母の志を体して、克く尽忠の大義に徹し以て祖先の遺風を顕彰せんことを期すべし。

【忠孝一本】忠義と孝行とは一つであるということ

 第三 敬礼挙措
 敬礼は至純なる服従心の発露にして、又上下一致の表現なり。戦陣の間特に厳正なる敬礼を行はざるべからず。礼節の精神内に充溢し、挙措(キョソ)謹厳にして端正なるは強き武人たる証左なり。

【挙措謹厳】動作が慎しみ深くて重々しいこと

 第四 戦友道
 戦友の道義は、大義の下死生相結び、互いに信頼の至情に致し、常に切磋琢磨し、緩急相救ひ、非違相戒めて、倶(トモ)に軍人の本分を完うするに在り。

【非違相戒め】間違ったことをしないように互ひに戒め合ふ

 第五 率先躬行(キュウコウ)
 幹部は熱誠以て百行の範たるべし。上正しからざれば下必ず紊(ミダ)る。戦陣は実行を尚ぶ。躬(ミ)を以て衆に先んじ毅然として行ふべし。

 第六 責任
 任務は神聖なり。責任は極めて重し。一業一務忽(ユルガ)せにせず心魂を傾注して一切の手段を尽くし、之が達成に遺憾なきを期すべし。
 責任を重んずる者、是真に戦場に於ける最大の勇者なり。

 第七 死生観
 死生を貫くものは崇高なる献身奉公の精神なり。
 生死を超越し一意任務の完遂に邁進すべし。身心一切の力を尽くし、従容として悠久の大義に生くることを悦びとすべし。

 第八 名を惜しむ
  恥を知る者は強し。常に郷党家門の面目を思ひ、愈愈(イヨイヨ)奮励して其の期待に答ふべし。
 生きて虜囚の辱を受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ。

【郷党家門】郷里の仲間や一家一門の者  【虜囚の辱】捕虜となるはづかしめ   

 第九 質実剛健
 質実以て陣中の起居を律し、剛健なる士風を作興し、旺盛なる志気を振起すべし。
 陣中の生活は簡素ならざるべからず。不自由は常なるを思ひ、毎事節約に努むべし。奢侈は勇猛の精神を蝕むものなり。

 第十 清廉潔白
 清廉潔白は、武人気節の由って立つ所なり。己に克つこと能わずして物欲に捉はるる者、争(イカ)でか皇国に身命を捧ぐるを得ん。
 身を持するに冷厳なれ。事に處するに公正なれ。行ひて俯仰天地に愧(ハ)ぢざるべし。

【俯仰天地に愧ぢず】心中やましい事がなく公明正大なこと

                  本訓 其の三
 第一 戦陣の戒め
一、一瞬の油断、不測の大事を生ず。常に備え厳に警(イマシ)めざるべからず。
 敵及住民を軽侮するを止めよ。小成に安んじて労を厭うこと勿れ。不注意も亦禍の因と知るべし。
二、軍機を守るに細心なれ。諜者は常に身辺に在り。
三、哨務は重大なり。一軍の安危を担ひ、一隊の軍紀を代表す。宜しく身を以て其の重きを任じ、厳粛に之を服行すべし。
 哨兵の身分は又深く之を尊重せざるべからず。
四、思想戦は、現代戦の重要なる一面なり。皇国に対する不動の信念を以て、敵の宣伝欺瞞を破摧(ハサイ)するのみならず、進んで皇道の宣布に勉むべし。
五、流言飛語は信念の弱きに生ず。惑うこと勿れ、動ずること勿れ。皇軍の実力を確信し、篤く上官を信頼すべし。
六、敵産、敵資の保護に留意するを要す。
 徴発、押収、物資の燼滅等は總べて規定に従ひ、必ず指揮官の命に依るべし。
七、皇軍の本義に鑑み、仁恕の心能く無辜の住民を愛護すべし。
八、戦陣苟も酒色に心奪はれ、又は欲情に駆られて本心を失ひ、皇軍の威信を損じ、奉公の身を過るが如きことあるべからず。深く戒慎し、断じて武人の清節を汚さざらんことを期すべし。
九、怒りを抑へ不満を制すべし。「怒りは敵と思へ」と古人も教へたり。一瞬の激情悔いを後日に残すこと多し。
 軍法の峻厳なるは特に軍人の栄誉を保持し、皇軍の威信を完うせんが為なり。常に出征当時の決意と感激とを想起し、遙かに思を父母妻子の真情に馳せ、仮初めにも身を罪科に曝すこと勿れ。

【軽侮】相手を軽んじて馬鹿にすること 【哨務】哨兵のつとめえ 【敵産、敵資】敵の財産と物資
【燼滅】焼きすてること

 第二 戦陣の嗜(タシナ)み
一、尚武の伝統に培ひ、武徳の涵養、技能の錬磨に勉むべし「毎事退屈する勿れ」とは古き武将の言葉にも見えたり。
二、後顧の憂を絶ちて只管奉公の道に励み、常に身辺を整へて死後を清くするの嗜みを肝要とす。
 屍を戦野に曝すは固より、軍人の覚悟なり。縦(タト)ひ遺骨の還らざることあるも、敢えて意とせざる様予て家人に含め置くべし。
三、戦陣病魔に斃るるは遺憾の極みなり。特に衛生を重んじ、己の不節制に因り奉公に支障を来すが如きことあるべからず。
四、刀を魂とし馬を宝と為せる古武士の嗜みを心とし、戦陣の間常に兵器資材を尊重し、馬匹(バヒツ)を愛護せよ。
五、陣中の徳義は戦力の因なり。常に他隊の便益を思ひ、宿舎、物資の独占の如きは慎むべし。
「立つ鳥跡を濁さず」と言へり。雄雄しく床しき皇軍の名を、異郷辺土にも永く伝へられたきものなり。
六、総じて武勲を誇らず功を人に謙は武人の高風とする所なり。
 他の栄達を妬まず己の認められざるを恨まず、省みて我が誠の足らざるを思ふべし。
七、諸事正直を旨とし誇張虚言を恥じとせよ。
八、常に大国民たるの襟度を持し、正を踏み義を貫きて皇国の威風を世界に宣揚すべし。
国際の儀礼亦軽んずべからず。
九、万死に一生を得て帰還の大命に浴することあぱらば、具に思ひを護国の英霊に致し、言行を慎みて国民の範となり、愈々奉公の覚悟を固くすべし。

【後顧の憂】自分のゐない後が心配になる  【異郷辺土】他国や片田舎  【襟度】度量、心のひろいこと

                   結び
 以上述ぶる所は、悉く勅諭に発し、又之に帰するものなり。されば之を戦陣道義の実践に資し、以て聖諭服行の完璧を期せざるばからず。
 戦陣の将兵、須く此の趣旨を体し、愈々奉公の至誠を擢んで、克く軍人の本分を完うして、皇恩の渥きに答へ奉るべし。

【聖諭服行の完璧】天皇陛下のお諭(サトシ)をしっかり身につけてあます所なく実行すること
【皇恩の渥き】天皇陛下の御恩の深いこと

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