真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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「教育勅語」を補強・補完した詔勅・省令・訓令等

2020年11月12日 | 国際・政治

 下記資料1は、戦後の衆議院における「教育勅語等排除に関する決議」で、資料2は、参議院における「教育勅語等の失効確認に関する決議」です。多少その言葉に違いがありますが、いずれも「教育勅語」のみならず、「陸海軍軍人ニ賜ハリタル勅諭」((軍人勅諭)や「戊申詔書」、「青少年学徒ニ賜ハリタル勅語」その他の諸詔勅の排除や失効を決議しています。
 それは、「続・現代史資料 教育 御真影と教育勅語 Ⅰ」(みすず書房)で、佐藤秀教授が述べているように、
理念面における天皇制の公教育支配を保障してきたものは、1890年公布の教育勅語のみでなく、それを「補強」もしくは「補完」する役割を果たした上述の諸詔勅類を含む一つの「体系」であったとみなければならない。
 というとらえ方をしているからだと思います。
 したがって、ここでは、衆参両院の決議とともに、「奉体」のシステムに関わる文部省令や地方の訓令、そして、関連の諸詔勅を抜粋しました。戦前の日本の教育は、こうした現人神・天皇から下りてくる「・・・セヨ」というような勅語や詔勅、また、それらに基づいた省令(儀式規程)や訓令(祝賀式要領)などで、がんじがらめに縛られていたのではないかと思います。だから、当時の日本人は定められた枠の中で考え、行動することしかできなかったのではないでしょうか。それは、言い換えれば、思想の自由や信教の自由、学問の自由その他の精神的な自由権が、ほとんどなかったということだと思います。

(一部漢数字を算用数字に変えたり、空行を挿入したり、段落を変更したりしています。漢字の後のカタカナは私の解釈でつけた読み仮名です。したがって、適切でないものがあるかも知れません。)

1 衆議院「教育勅語等排除に関する決議」
2 参議院「教育勅語等の失効確認に関する決議」
3 小学校祝日大祭日儀式規程(文部省令第4号
4 小学校における新年・紀元節・天長節祝賀式要領〔愛知県〕
5 戊申詔書
6 国民精神作興ニ関スル詔書
7 青少年学徒ニ賜フ勅語 

 資料4以下は「続・現代史資料 教育 御真影と教育勅語 Ⅰ」(みすず書房)から抜粋しました。
資料1--------------------------------------

教育勅語等排除に関する決議
 民主平和國家として世界史的建設途上にあるわが國の現実は、その精神内容において未だ決定的な民主化を確認するを得ないのは遺憾である。これが徹底に最も緊要なことは教育基本法に則り、教育の革新と振興とをはかることにある。しかるに既に過去の文書となつている教育勅語並びに陸海軍軍人に賜りたる勅諭その他の教育に関する諸詔勅が、今日もなお國民道徳の指導原理としての性格を持続しているかの如く誤解されるのは、從來の行政上の措置が不十分であつたがためである。
 思うに、これらの詔勅の根本理念が主権在君並びに神話的國体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ國際信義に対して疑点を残すもととなる。よつて憲法第九十八條の本旨に從い、ここに衆議院は院議を以て、これらの詔勅を排除し、その指導原理的性格を認めないことを宣言する。政府は直ちにこれらの詔勅の謄本を回収し、排除の措置を完了すべきである。
 右決議する 
 衆議院会議録 https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=100205254X06719480619
各派共同提案「教育勅語等排除に関する決議案」提出・松本淳造)
資料2ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
第2回国会
                                  昭和23年6月19日 
                                    参議院本会議 
教育勅語等の失効確認に関する決議
 われらは、さきに日本国憲法の人類普遍の原理に則り、教育基本法を制定して、わが国家及びわが民族を中心とする教育の誤りを徹底的に払拭し、真理と平和とを希求する人間を育成する民主主義的教育理念をおごそかに宣明した。その結果として、教育勅語は、軍人に賜はりたる勅諭、戊申詔書、青少年学徒に賜はりたる勅語その他の諸詔勅とともに、既に廃止せられその効力を失つている。
 しかし教育勅語等が、あるいは従来の如き効力を今日なお保有するかの疑いを懐く者あるをおもんばかり、われらはとくに、それらが既に効力を失つている事実を明確にするとともに、政府をして教育勅語その他の諸詔勅の謄本をもれなく回収せしめる。
 われらはここに、教育の真の権威の確立と国民道徳の振興のために、全国民が一致して教育基本法の明示する新教育理念の普及徹底に努力をいたすべきことを期する。
 右決議する。

 参議院ライブラリー「教育勅語等の失効確認に関する決議」
 https://www.sangiin.go.jp/japanese/san60/s60_shiryou/ketsugi/002-51.html 

資料3ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
                小学校祝日大祭日儀式規程
文部省令第四号

 明治二十三年十月勅令第二百十五号小学校令第十五条ニ基キ小学校ニ於ケル祝日大祭日ノ儀式ニ関スル規程ヲ設クルコト左ノ如シ 
                      明治二十四年六月十七日文部大臣 伯爵大木喬任

               小学校祝日大祭日儀式規程

第一条 紀元節、天長節、元始祭、神嘗祭及新嘗祭ノ日ニ於テハ学校長、教員及生徒一同式場ニ参集シテ左ノ儀式ヲ行フヘシ

一 学校長教員及生徒
 天皇陛下及皇后陛下ノ御影ニ対シ奉リ最敬礼ヲ行ヒ且両陛下ノ万歳ヲ奉祝ス
但未タ御影ヲ拝戴セサル学校ニ於テハ本文前段ノ式ヲ省ク

二 学校長若クハ教員、教育ニ関スル勅語ヲ奉読ス

三 学校長若クハ教員、恭シク教育ニ関スル勅語ニ基キ聖意ノ在ル所ヲ誨告シ又ハ歴代天皇ノ盛徳 鴻業ヲ叙シ若クハ祝日大祭日ノ由来ヲ叙スル等其祝日大祭日ニ相応スル演説ヲ為シ忠君愛国ノ志気ヲ涵養センコトヲ務ム

四 学校長、教員及生徒、其祝日大祭日ニ相応スル唱歌ヲ合唱ス

第二条 孝明天皇祭、春季皇霊祭、神武天皇祭及秋季皇霊祭ノ日ニ於テハ学校長、教員及生徒一同式場ニ参集シテ第一条第三款及第四款ノ儀式ヲ行フヘシ

第三条 一月一日ニ於テハ学校長、教員及生徒一同式場ニ参集シテ第一条第一款及第四款ノ儀式ヲ行フヘシ

第四条 第一条ニ掲クル祝日大祭日ニ於テハ便宜ニ従ヒ学校長及教員、生徒ヲ率ヰテ体操場ニ臨ミ若クハ野外ニ出テ遊戯体操ヲ行フ等生徒ノ心情ヲシテ快活ナラシメンコトヲ務ムヘシ

第五条 市町村長其他学事ニ関係アル市町村吏員ハ成ルヘク祝日大祭日ノ儀式ニ列スヘシ

第六条 式場ノ都合ヲ計リ生徒ノ父母親戚及其他市町村住民ヲシテ祝日大祭日ノ儀式ヲ参観スルコトヲ得セシムヘシ

第七条 祝日大祭日ニ於テ生徒ニ茶菓又ハ教育上ニ裨益アル絵画等ヲ与フルハ妨ナシ

第八条 祝日大祭日ノ儀式ニ関スル次第等ハ府県知事之ヲ規定スヘシ

「官報」(2388号) 1891年06月17日(https://ja.wikisource.org/wiki/)

資料4------------------------------------------
     小学校における新年・紀元節・天長節祝賀式要領〔愛知県〕
        明治21年10月31日 愛知県訓令乙第49号

 小学校ニ於テ新年紀元節天長節ノ祝日ニハ左ノ要領ニ依リ祝賀式ヲ挙行セシムヘシ
       祝賀式要領
一 新年ニハ君が代の曲ヲ奏シテ
   聖上皇后両陛下ノ聖寿万歳ヲ奉祝シ次テ新正ヲ賀スヘシ
一 紀元節ニハ紀元節ノ歌ヲ唱へ
   神武天皇ノ我日本帝国万世一系ノ皇基ヲ定メ給ヒシ偉徳ヲ頌
   シ奉リ次ニ君か代ノ曲ヲ奏シ 今上天皇皇后両陛下ノ聖寿万歳ヲ奉祝スヘシ
一 天長節ニハ天長節ノ歌ヲ唱ヘ
   今上天皇中興ノ盛徳ヲ頌シテ聖寿万歳ヲ奉祝シ併セテ皇后陛下ノ聖寿万歳を奉祝スヘシ
一 式場ハ浄潔ニシテ祝賀式ヲ行フヘキ装置アルヲ要ス
一 職員生徒ノ服装ハ厳正ニシテ式場ノ出入進止静粛ナルヘシ 

資料5-----------------------------------------
                  戊申詔書
 戊申詔書〔上下一心忠実勤倹自彊(ジキョウ)タルヘキノ件詔書〕明治41年10月13日『官報』第7592号(明治41年10月14日発行)

〇 詔書
朕惟フニ方今人文日ニ就(ナ)リ月ニ将(スス)ミ東西相倚(ヨ)リ彼此(ヒシ)相済(ナ)シ以テ其ノ福利ヲ共ニス朕ハ爰ニ益々國交ヲ修メ友義ヲ惇(アツク)シ列國ト與(トモ)ニ永ク其ノ慶ニ頼ラムコトヲ期ス顧ミルニ日進ノ大勢ニ伴ヒ文明ノ惠澤ヲ共ニセムトスル固ヨリ内國運ノ發展ニ須(マ)ツ戦後日尚浅ク庶政益々更張(コウチョウ)ヲ要ス宜ク上下心ヲ一ニシ忠實業ニ服シ勤儉産ヲ治メ惟レ信惟レ義醇厚(ジュンコウ)俗ヲ成シ華ヲ去り實ニ就キ荒怠(コウタイ)相誡メ自彊(ジキョウ)息マサルヘシ
抑々(ソモソモ)我力神紳(シンシン)聖ナル祖宗ノ遣訓ト我力光輝アル國史ノ成跡トハ炳(ヘイ)トシテ日星ノ如シ寔(マコト)ニ克ク恪守(カクシュ)シ淬礦(サイコウ)ノ誠ヲ諭サハ國運發展ノ本近ク斯ニ在リ朕ハ方今ノ世局ニ處シ我力忠良ナル臣民ノ協翼ニ倚藉(イシャ)シテ維新ノ皇猷(コウユウ)ヲ恢弘(カイコウ)シ祖宗ノ威徳ヲ對揚(タイヨウ)セムコトヲ庶幾(コウネガ)フ爾臣民其レ克ク朕力旨ヲ體セヨ
      御名御璽
      明治41年10月13日
                            内閣総理大臣 侯爵桂太郎  

資料6ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
              国民精神作興ニ関スル詔書 
       大正12年11月10日『官報』号外(大正12年11月10日発行)

朕惟フニ國家興隆ノ本ハ國民精神ノ剛健ニ在リ之ヲ涵養シ之ヲ振作シテ以テ國本ヲ固クセサルヘカラス是ヲ以テ先帝意ヲ敎育ニ留メサセラレ國體ニ基キ淵源(エンゲン)ニ遡リ皇祖皇宗ノ遺訓ヲ掲ケテ其ノ大綱ヲ昭示(ショウジ)シタマヒ後又臣民ニ詔(ミコトノリ)シテ忠實勤儉ヲ勸(スス)メ信義ノ訓(オシエ)ヲ申(カサ)ネテ荒怠(コウタイ)ノ誡(イマシメ)ヲ垂(タ)レタマヘリ是レ皆道德ヲ尊重シテ國民精神ヲ涵養振作スル所以ノ洪謨(コウボ)ニ非サルナシ爾來趨向(スウコウ)一定シテ效果大ニ著(アラワ)レ以テ國家ノ興隆ヲ致セリ朕卽位以來夙夜(シュクヤ)兢兢(キョウキョウ)トシテ常ニ紹述ヲ思ヒシニ俄(ニワカ)ニ災變(サイヘン)ニ遭ヒテ憂悚(ユウショウ)交々(コモゴモ)至レリ 輓近(バンキン)學術益々開ケ人智日ニ進ム然レトモ浮華放縱(フカホウショウ)ノ習(ナライ)漸ク萠(キザ)シ輕佻詭激(ケイチョウキゲキ)ノ風モ亦生ス今ニ及ヒテ時弊ヲ革メスムハ或ハ前緖ヲ失墜セムコトヲ恐ル況ヤ今次ノ災禍甚夕大ニシテ文化ノ紹復(ショウフク)國カノ振興ハ皆國民ノ精神ニ待ツヲヤ是レ實ニ上下協戮(キョウリク)振作更張ノ時ナリ振作更張ノ道ハ他ナシ先帝ノ聖訓ニ恪遵(カクジュン)シテ其ノ實效ヲ擧クルニ在ルノミ宜ク敎育ノ淵源ヲ崇(タット)ヒテ智德ノ竝進ヲ努メ綱紀ヲ粛正シ風俗ヲ匡勵(キョウレイ)シ浮華放縱ヲ斥ケテ質實剛健ニ趨キ輕佻詭激キョウキョウキゲキ)ヲ矯(タ)メテ醇厚中正ニ歸シ人倫ヲ明ニシテ親和ヲ致シ公德ヲ守リテ秩序ヲ保チ責任ヲ重シ節制ヲ尚ヒ忠孝義勇ノ美ヲ揚ケ博愛共存ノ誼(ギ)ヲ篤(アツ)クシ入リテハ恭儉勤敏(キョウケンキンビン)業ニ服シ產ヲ治メ出テテハ一已(イッコ)ノ利害ニ偏セスシテカヲ公益世務ニ竭(ツク)シ以テ國家ノ興隆ト民族ノ安榮社會ノ福祉トヲ圖ルヘシ朕ハ臣民ノ協翼ニ賴リテ彌々(イヨイヨ)國本ヲ固クシ以テ大業ヲ恢弘セムコトヲ冀(コヒネガ)フ爾臣民其レ之ヲ勉メヨ

資料7ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
                青少年学徒ニ賜ハリタル勅語
        昭和14年5月22日『官報』号外(昭和14年5月22日発行)

國本ニ培ヒ國力ヲ養ヒ以テ國家隆昌ノ氣運ヲ永世ニ維持セムトスル任タル極メテ重ク道タル甚ダ遠シ而シテ其ノ任實ニ繋(カカ)リテ汝等靑少年學徒ノ雙肩ニ在リ汝等其レ氣節ヲ尚(タット)ビ廉恥(レンチ)ヲ重ンジ古今ノ史實ニ稽(カンガ)ヘ中外ノ事勢ニ鑒ミ其ノ思索ヲ精ニシ其ノ識見ヲ長ジ執ル所中ヲ失ハズ嚮(ムカ)フ所正ヲ謬ラズ各其ノ本分ヲ恪守シ文ヲ修メ武ヲ練リ質實剛健ノ氣風ヲ振勵(シンレイ)シ以テ負荷ノ大任ヲ全クセムコトヲ期セヨ


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