日々の感じた事をつづる
永人のひとごころ
後藤ファミリーのエンジン
9回
後藤ファミリーのエンジン
もちろん、ケンカだって毎日当たり前のようにあった。
偶然チンピラ同士が出会って、目と目が合っただけで、ガンつけた、どうだこうだとかあるんだわ、我々の世界じゃ。
「なに、こら!」とか言うと、それですぐケンカが始まるんだ。
そんな生活を半年も続けてりゃ、そのうちパクられるわな。だけどそんな大した恐喝やケンカじゃないから、すぐに出られるんだ。
一緒に逮捕された同級生たちは、親が警察に貰い下げにきて「帰して下さい」って言うから。
でも俺のところには誰も来ない。兄弟も、誰も。しょうがないんで俺だけが少年鑑別所に送られるわけだ。
それでもさすがに鑑別所から出るときには次男が迎えに来てくれた。兄弟の中で行方不明じゃなかったのは次男だけだったから。
真面目一本の本当のド堅気で、チンピラの世界なんかに、足を踏み入れたこともない男だ。
それが呼び出されて、親の代わりにちゃんと始末付けてくれた。少年院に送るほどの大それたことじゃないから、鑑別所止まりでパイになった(釈放された)ことが2回ほどあって、だから次男には今も感謝してるんだよ。
その頃、長男はといえば、仕事なんかしないで
さっき言ったみたいに少年院に入ったりしてたけど。本当のヤクザというわけじゃなかった.ブラブラしてる不良少年だ。
三男も一時はお妾さんの世話で東京の製紙会社に勤めていたが辞めてブラブラしてた。その製紙会社には俺も一緒に世話になったことがあってね。16か17の頃だ。行く場所がないもんだから、来いって言われてさ。でも数カ月で辞めて富士宮に帰って・・・・という俺もそんなことの繰り返しだったな。
ただ三男とは歳も近かったから、将来の夢とか語り合ったこともあったんだよ。その後長男と三男は、俺が稼業に入ってから、みんなこっちへヤクザの世界へ引っ張るわけだけどさ。
兄弟なんて、遠くにいれば必要ないんだよ。近くにいればこそ、兄弟という絆を意識するし、力にもなり、泣いてくれることもあるんだ。
進む方向が一緒で歯車がちゃんとかみ合ってるとすごく大事な存在になるけれど、そうじゃなかったら全然要らない。
その兄弟の歯車を束ねて動かす原動力に俺はなったんだろうな。
一番下の弟だった俺が後藤ファミリーのエンジンになったんだよ。 続く
« いたずら小僧... | 第2章・富士... » |
コメント |
コメントはありません。 |
コメントを投稿する |