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キム・ミンギ 「峰」

 
 
 
 韓国ドラマ「カイスト」(SBS1999年)の49話で、一番感動的なシーンで流れていた歌と語り。誰なのかわかりませんでしたが、7年経ってやっとキム・ミンギの「峰」だと言う事がわかりました。
 低くて穏やかな声。この作品「峰」は、峰を人生に例えて”人生はそれでも続くのだ”と、”目指す高い峰は上っても上っても果てしなく高い所にあり、高い峰を目指しながら、今歩いているこの道をしっかりと見ながら歩き続けるだけだ”と。
 
 キム・ミンギは1951年生まれ。1971年のデビューアルバム『キム・ミンギ』はすぐに発売禁止されました。 1987年(1993年?)に復刻版で再発されました。「朝露」「秋の手紙」「峰」 「小さな池」 「金冠のキリスト」 「忘れてしまった言葉」 「常緑樹」 「旗印村」「工場の明り」などがあります。
 キムミンギは権力を批判するために曲を書いたわけではなく、陽のあたらないところや、そのままに見える現実を詩に書き、曲にしただけだそうです。しかし、1970,80年代の変革の大きなうねりの中、大衆の求める歌、大衆を慰める歌として、キム・ミンギ個人の作品を越えて大衆の歌になったのだと思います。
 歌の持つ力はとてつもなく大きく、時の政府はそれを一番良く知っています。そして怖れています。大衆を動かす力のある歌を発売禁止や放送禁止にしても、心に灯った歌を消す事はできないのです。
 
   「峰」
 人々はこぞって指をさす ひときわ高く聳え立つ峰だけを
 僕が登った小さな峰の話をしよう
 峰
 今はこんもりとした丘にすぎないが あのとき僕は
 もっと大きな山があるとは思わなかった
 僕にはその丘がすべてだった
 独りだった
 自分の知っている一番高い峰を目指して登っていた
 高く登り過ぎたかな 離れすぎたかもしれない
 あと少しだ
 すべてを忘れて峰まで登ってみよう
 峰に立ち叫びながら 手を振ってみよう
 つらくても我慢しよう
 もうすぐ一番高い峰で ゆっくり休めるから
 
♪しかし僕が登ったのは ただの丘にすぎなかった
 道は果てしなく より高いほかの峰に続いている
 切り株の上に座って 僕は眺めていた
 低い方へと流れて 海になる川を
 海 小さな船が煙を噴き出しながら行き♪
 
 ほら
 峰の先に登っても後ろを向いて叫んだり 手をふる必要もなく
 僕は風になびく裾野を ここでもはっきりと知る事ができる
 またそれでもわけもなく淋しがりながら 座り込んで
 汗を拭かなくても 通り過ぎる風がさましてくれるだろう
 もしも痛みのようなものがかすかに襲ってくるときは
 その時は海を思って 海 
 峰というのは ただ移る峠の重なりであるだけだと
 
♪友よ聞いてくれ 僕たちが登る峰は
 他でもない ここかもしれない
 僕たちが汗を流しながら歩いている
 森の中の狭いこの道
 高い所には峰なんてないかもしれない
 そうだよ 友よ
 僕たちが登る峰は ここかもしれない
 僕たちが登る峰は ウ~ウ~
 
 
 
 
 
 
 
 
 SBS「カイスト」49話ラストより
 
 
 韓国ドラマから実に多くの事を学びました。この画像はドラマ「カイスト」(SBS1999年)のなかでも、1番のハイライトシーンで胸を打つシーンでした。
 小さい頃から素直で優しく賢いので、誰にでも好かれるミンジェ(イ・ミヌ)。高校、大学(カイスト)共に成績優秀。将来はロボットの科学者として順風満帆なはずが、先輩のために、大学院の試験を受けられず、留年してしまいます。
 カイストは留年生には特に厳しく、免除されていた学費も払わされ、食費手当ても出ない。寮もくじびきではずれ、出ていかなくてはならない。さらに、研究グループからもはずされ、人生で始めての挫折を味わいます。
 友人、先輩、後輩の同情がミンジェを苦しめ、休学すると言い、荷造りを始めます。 家に帰ろうとするミンジェに天才教授(アンジョンフン)が山登りを勧めます。誰よりもミンジェを心配している親友のジョンテ(キム・ジョンヒョン)も同行し、二人だけで山に登りお互いの本当の気持ちを語り合うのです。
 
  ミンジェ ”何で来たんだ”
 
 ジョンテ ”お前を殴りたくて来た。俺はやるだけやった。お前より先に研究グループをやめ休学すれば、お前は考えなおすと思ったのに。最低なヤツ。ビクともしない。俺は1年前に学校から逃げ出したとき、この場所に来たんだ。”
 
 ミンジェ ”そうか”
 
 ジョンテ ”死ぬほど淋しかった。そのせいでお前のことを思った。ミンジェがいれば二人で飲んでいたいな。そう思ったよ。俺にとってお前はベース・キャンプみたいだ。どこに行ってもおまえのいるところを目指せば、俺は戻れる。わかるか。だからしっかりしてくれ、お前は彷徨うな。俺のためにだ。”
 
 ミンジェ ”俺の問題がやっとわかった。俺はいつのころからか、人に見せるための自分を作ってしまった。適当に真面目で、賢そうに見せる、優等生の自分だ。”
 
 ジョンテ ”それは生まれつきだよ。”
 
 ミンジェ ”俺もそう思っていた。自分の人生で脱線はありえないと思っていた。だから、、、、 お前たちを見くびっていた。子供じみて思えた。お前は頭が良くても、生き方が自分勝手だ。ジウォン(イ・ウンジュ)やギョンジン(カン・ソンヨン)や他のヤツらもそうだ。みんな俺より何かが劣ってる。だから頂上に一番先に上るのはきっと俺だと。
 でも俺より10倍勇気があって、あきらめないヤツがいるんだ。俺はさ、自分がどう見えるかそればかり気にしてたけどそいつは逆だ。人のためなら自分はどう見えてもかまわない。俺は恥ずかしくなったよ。
 行こう。この道だよな”
 
 ジョンテ ”ミンジェ、彷徨うな。俺を見くびってもいい。もう少しベースキャンプになっていてくれ。”
 
 歩いていくミンジェのバックに「峰」が流れる。5’20”位から、キムミンギの歌が流れます。
 
 
 
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