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Polydor

2018-04-27 19:32:55 | 音楽
2017年6月7日に投稿した記事のプレイリストを20⇒30曲へ増補。新たな文章⇒プレイリスト⇒元の文章の順となっております。

元の文は「ポリドールって日本の会社かと思ってた」との書き出しなのだが、ウカツであった。近年CDが売れない中でも、わが国のレコード会社にとって得意分野となっているむかしのイタリアのプログレやブラジル音楽にも、あの目立つロゴがしばしばあるではないか。いまポリドールはユニバーサル傘下の一部門に過ぎず、海外の再発盤やダウンロード販売ではロゴを消してしまうことが多いようだが、そのあたり日本人は律儀である。

イタリア、ブラジルだけでなく、フランス、オランダ、ポルトガル、香港など日本を含めポリドールは世界各国に現地法人を設立しており。それぞれの国で人気アーティストを抱え、赤いロゴと共に親しまれていたのだ。ポピュラー音楽の発達は、帝国主義や奴隷貿易の副産物でもあることを思い起こさせる。ヘッダー画像をすべて各国のシングル盤で構成しようと考え、漁っていると、沢田研二がフランス語で歌いフランス進出を図った盤を発見(↑右下、1974年とみられる)。渡辺プロの努力というより、レコード会社のコネクションが寄与したのかも分らない—





iTunes Playlist "The Polydor Story" 147 minutes
1) João Donato / Índio Perdido (1963 - A Bossa Muito Moderna de Donato e Seu Trio)



2) The Jimi Hendrix Experience / Hey Joe (1966 - Are You Experienced?)



3) Cream / White Room (1968 - Wheels of Fire)



4) Os Mutantes / O relógio (1968 - Os Mutantes)



5) Blind Faith / Presence of the Lord (1969 - Blind Faith)



6) Bee Gees / How Can You Mend a Broken Heart? (1971 - Trafalgar)



7) Focus / House of the King (1972 - Focus 3)



8) Slade / Mama Weer All Crazee Now (1972 - Slayed)



9) Latte e Miele / Il calvario (1972 - Passio secundum Mattheum)



10) Erasmo Carlos / Sábado morto (1972 - Sonhos e Memórias)



11) Return to Forever / 500 Miles High (1973 - Light as a Feather)



12) Buckingham Nicks / Frozen Love (1973 - Buckingham Nicks)



13) James Brown / The Payback (1973 - The Payback)



14) Vangelis / Le singe bleu (1973 - L'apocalypse des animaux)



15) マジカル・パワー・マコ / 朝の窓をあける、太陽が光る、今日の希望だ小鳥がなく (1974 - マジカル・パワー)



16) Dick Annegarn / Bruxelles (1974 - Dick Annegarn)



17) Chick Corea / Lenore (1976 - The Leprechaun)



18) Moxy / Moon Rider (1975 - Moxy)



19) The Who / Slip Kid (1975 - The Who by Numbers)



20) 森田童子 / さよならぼくのともだち (1975 - GOOD BYE)



21) 森田童子 / G線上にひとり (1977 - A BOY)



22) ABBA / The Name of the Game (1978 - The Album)



23) Don Ray / Got to Have Loving (1978 - The Garden of Love)



24) Rainbow / Rainbow Eyes (1978 - Long Live Rock 'n' Roll)



25) 沢田研二 / ダーリング (1978 - ROYAL STRAIGHT FLUSH)



26) 野口五郎 / 青春の一冊 (1979 - Single)



27) The Comsat Angels / Independence Day (1980 - Waiting for a Miracle)



28) The Jam / That's Entertainment (1980 - Sound Affects)



29) Siouxsie and the Banshees / Dazzle (1984 - Hyaena)



30) Level 42 / Something About You (1985 - World Machine)



ポリドールって日本の会社かと思ってた。
別にそのロゴをそのままジャケにしたマジカルパワーマコのせいではないが、あのロゴは目立つでしょう。赤と黒の。目立ち方がどことなく野卑で、東アジアの企業っぽい。

ウィキを引くと、ドイツ・グラモフォンが1924年に英国に設立した現地法人で、やがてグラモフォンがクラシック専門になるとポリドールはポピュラー音楽を扱う形となり、英国の音楽産業が活況を呈する一翼を担ったが、統合再編のすえ今はユニバーサル・グループ傘下に。




そういえばグラモフォンのレコードってポリドールから出てたわ。思い出した。こういうとき、ヤフオクには昔のレコードが多数出品されており、潤沢な紹介写真で確認できるので便利(↑)




ジミ・ヘンドリクスもウィキのディスコグラフィによると直接ポリドールからリリースされたのは最初のシングルHey Joeのみだが、多くの作品のディストリビュートをポリドールが担った。ザ・フーの自主レーベルや、近年ではエミネムの自主レーベルも英国でのディストリビュートをポリドールに委ねる。ローリング・ストーンズが設立したローリング・ストーンズ・レコードもそうらしいが、日本ではワーナーパイオニア⇒東芝EMI⇒CBSソニー⇒東芝EMIと転変。

私が自分でレコードを買い始めた1970~80年代、レコード会社のプレゼンスは非常に大きく、ストーンズのように何度も会社が変り、旧作を入手しにくい時期が生じたりすると、アーティストのイメージ自体も損なわれた。レコード会社、放送局、プロモーター、マネージャーなどの業界人が仕組みを熟知し、アーティストを箔付けて売り出してやる代り、ひどい搾取をするような傾向が一般的だった。

ポリドールの目立つロゴは、そうしたことの象徴のように思える。リンゼイ・バッキンガムとスティーヴィー・ニックスのデュオが出したアルバムは、2人のヌードのモノクロ写真にポリドールのロゴが映え、まだフリートウッド・マックに加入する前だが、スターになることを約束されたかのよう。日本の森田童子も、ちょっとアウトサイダー・アートのような風味の異端的なフォーク歌手だが、大きなレコード会社からデビューできたことで、自信をもっておのれの創作を切りひらいたことが2作目・3作目の充実に表れている。




いま、音楽産業をめぐる様相は一変。CDが売れなくなったのは、一曲単位でダウンロード販売されるようになったためとされたが、その後各種プラットフォームによる定額聞き放題サービスが普及し、ダウンロード販売さえ低調に。

音楽だけでなく、時間の奪い合い、とくに成長可能性のある子ども・若者・女性がさまざまなメディアやプラットフォームに囲い込まれ、依存させられる。音楽を吟味して選ぶ時間などない。いまの若者は忙しい。いずれ「スマホとSNSを介した人間のデフレ」としてまとめてみたい—
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